第43話 秘密

「沙織!!!」




「たくちゃん…?」




沙織は顔は腫れ、鼻から血が出ていて、髪の毛もグシャグシャだった。




服も引き裂かれ下着が見えている。




いかにも強姦された、そういう状態だった。




「来ちゃダメ!!!」




「誰にされた!?言えよ!」




巧の顔は怒りで満ち溢れていた…




沙織の肩を掴みながら、何も言わない沙織に迫った。












“カシャカシャカシャ…”










暗い部屋でフラッシュの眩しさに巧はボー然とした。




「お前…」




フラッシュの方向を見ると兄がカメラを持ってニヤリと不気味に笑っていた。




「いい写真だな…ハハハッ!これ絶対高く売れる!人気俳優が強姦!しかも婚約者を裏切って!あははははははは!!!」




もう精神が異常と思われるような笑い方だった。




「てめぇ、返せよ!!」




巧が兄に殴りかかろうとした時――




「やめて!!!お兄ちゃん!!!!!」




「…沙織の兄?」




「あぁ、そうだよ。正真正銘の血のつながった兄弟だよ。」




沙織の兄と聞いて、上げていた腕をゆっくりと下ろした。




「兄弟ってこんなことしていいと思ってんのかよ!?」




「思ってるよ!俺はコイツのせいで人生全部台無しなんだよ!!!お前に何がわかるんだよ!芸能界で金も女も手にいれて!」




兄が沙織の前に座って顔を近づける。




「兄弟だからこそ、コイツにしかストレスぶつけられないから、こういうことしてるんだよッ」




兄はカメラをもって沙織の部屋を出て行こうとする。




「待て!!!」




巧が追いかけようとすると沙織が巧の腕を掴んできた。




「沙織?」




「行かないで!どこにも行かないで!」




沙織がガタガタと震えているのが、掴んでいる腕に伝わってきた。




「沙織…大丈夫だ。大丈夫だから。」




巧が着ていたシャツを沙織にかけてあげる。




(あの写真も沙織の今までの写真の画像も取り返さないと…)








だけど今の沙織をおいてあの男を追いかけられない――








「たくちゃん、お願い…」




「…何?」




「私とお兄ちゃんが…そういう関係だって誰にも言わないで…今までずっと、ずっとずっと我慢してきたの!!周りの目が怖くて…我慢してきたの!お兄ちゃんと関係、たくちゃんにでさえ知られたくなくて…お願い、お願いッ…」




「……わかった、わかったから。」




巧は沙織の背中を朝まで擦り続けた――

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