第40話 1通のメール

美優と巧の二人の姿を沙織は羨ましそうに見ていた。



小さい頃はずっと私といたのに――




私のほうが巧のことを知っていて




巧の仕事も手伝えるのに…




花火が消えるとともに自分の黒い感情が芽生えてくる…




「沙織?」




「たくちゃん…」




「そろそろ帰るぞ。このバケツにその花火いれて。」




「うん…」




“ピロリン…”




「ごめんちょっと待って。」




沙織はポケットから携帯を取り出した。




“ドサッ…”




「おい、携帯砂浜に上に落としたら壊れるぞ…」




巧が沙織の携帯を拾った際、沙織が開いていた画面が見えた――




「これ…」




「返して!!!!!!」




沙織の大きな声にみんなびっくりした。




「おい!沙織!」




沙織は暗闇の中駆け出してしまった。




「え!?何?どうしたの?」




愛、ヒロ、美優はあまりの突然のことで、二人が走っていく姿をみているだけだった。




(どうしたの巧?)




「沙織!おい!!」




巧が沙織に追いつき、腕をひっぱり自分のほうへ体を向かせる。




「痛ッ…痛いよ!」




巧は沙織の両肩を腕で掴みなおした。




「誰にされた!?沙織!言え!」




「…言わない……言えない…」




「俺が誰だか聞いてやる!」




「やめて!!」




「…どうして…いつから何だ?そんなに俺が頼りないか?兄弟みたいに育ってきたじゃねぇか。」





「……なら。」




「え?」









「兄弟なら…ずっとそばにいてほしかった!一番いてほしいときに巧はいなかった!!」








「沙織!!!」




沙織はまた走り出して行ってしまった。




「兄さん!」




ヒロ、美優、愛が走ってやってきた。




「兄さんどうしたの急に?あれ沙織ちゃんは?」




「…別に。」




「何?喧嘩?」




「…」




巧はそれ以上話さなかった。





みんな二人のことについて話さなかったけど、何かが二人の中で起きていることだけはわかった…




ロッジに戻ると沙織はもう寝ていた。




起こしたら悪いと思い、話しかけずに寝たら、翌朝にはもう沙織の姿はなかった。




仕事だから一足早く行くとメモが残っていた。




巧も仕事だからと一足早く私たちより帰っていった。







まさかこの時の沙織のことが




このあと大事になるなんて誰も思っていなかった――





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