楽しい交尾5

浅貴るお

合戦

「ききき!」

「ききぃ!」

「がっきあぁ!」

 猿たちは、興奮をもて余すためか、皆一様に目が血走っていた。

 皆、発情期を迎え、興奮しているのだ。

 これは、そんな状況の中の、50匹ほどの群れたちが一匹の雌を巡った戦いの話である。


 この群れのボス猿の八吉が、雌猿の和枝を見つけた。

「和枝見ていてくれ。俺が勝ち抜き、お前をものにしてやる!」

「それは、オレだ!」

 若い雄猿、賢一が名乗りを挙げた。

 すると、次々と名乗りを挙げる群れの猿たちが出て来た。

 アイツが立候補するなら俺もと言う感じで。

 そうして、50匹の雄猿のバトルが始まった。

 50匹が誰彼構わず殴り合う。壮絶だった。

 1分もしないうちに半分ほどが脱落した。

 3分で1/5になる。

 そうなると皆疲れて来たため、動きがにぶり、暴力に威力がなくなって来た。

 そんな時、べちゃっと嫌な音がした。

 糞を誰かが踏んだのだ。

 糞を踏んだ猿は滑り、頭を打って気絶した。

 それからがカオスだった。

 1匹が脱糞したかと思うと、それを投げ始めたのだ。

 それを皆が真似した。

 残った9匹による雪合戦ならぬ、糞合戦が始まった。

「うきききききぃ!」

 あまりの悲惨な光景に、雌猿の和枝はそっとその場を去った。

 それに気付かない雄猿たちは、不毛な糞合戦に忙しむのだった。


終わり

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