始まりの物語

歴史書より

 あるところに、人間の女に恋をした神様がおりました。その神は屍祀謳神シシウタイノカミと言い、神々が住まう神園においてはいないモノのように忌避され、生きとし生けるもの全てに嫌悪を向けられる対象でもありました。


 ある日のことです。屍祀謳神がいつものように神園で己の業務をこなしていると、兄弟である童子守神ドウジモリノカミに人間の世界へ突き落されてしまいました。神の暮らす世界である神園から遥か彼方の人間の世界へ突き落されてしまった屍祀謳神は、緑あふれる山の中へと真っ逆さまに転げ落ちてしまったのです。


 いくら人智を超えた存在であるとしても、病にその身を食い荒らされることもあれば、血を流して負傷することもあるのです。もちろん、それは屍祀謳神も例外ではなくて。固い地面にたたきつけられた神は、骨があらぬ方向にねじ曲がり、紅葉の絨毯のように血を広げ、3日3晩意識を失っていました。


 それからしばらくして意識を取り戻した屍祀謳神は、痛む身体を引きずってどうにかこうにか歩き始めました。まずは傷ついた身体を癒そうと、清らかな水源を目指して歩を進めました。


 何度日が昇り沈み、そしてまた昇ったでしょう。ふらふらと覚束ない足取りで歩いていた神にも、限界というものはあるもので。飲まず食わず、流れ出る血はそのまま。そんな状態で無理やり体を動かし続けた神は、ついに倒れ伏してしまいました。深い山の奥から少し村へ近づいたころ、賑わいが遠くから聞こえる森の中で。


 ふと神が気が付くと、見たことも無い天井が己の視界を埋めていました。森で倒れていたはずなのにと疑問に思う暇もなく、天井に見知らぬ女の顔が映り込みました。


「もし、お加減はいかがですか? 傷は痛みますか?」


 女は覗き込みながら神にそう尋ねてきました。


「いや」


 神はそもそも人間よりも体が強いのです。人間においては致命傷となる傷も、神にかかればかすり傷に等しい。屍祀謳神は不安げに問う女にハッキリと声を返しました。


「あぁ良かった。森の中で倒れている所を見つけて。村の方に運んでいただいたのです。元気になられたようで、本当に良かった」


 ふわりと女が綻び、神は初めて向けられたその感情に戸惑いました。自身を産み落としたはずの母神は自身のことを恐れ、父であるはずの神も何故だか憎むように睨むばかり。兄弟神たちもまた己のことを嫌い、隙あらば消すことを目論んでいることを知っていました。だからでしょうか。女が自身へと向けたその笑顔に、屍祀謳神は一目で恋に落ちてしまいました。

 

 それが、悲劇の幕開けだと知らずに。



 女の自宅にて療養を進めている神に、女はあれこれ尋ねることはしませんでした。女は賢く、そして思慮深かったのです。森の中で倒れている神を見つけた時、それはそれはひどく取り乱しましたが、意識を失えど彼の纏う気迫に、もしかしたら人ならざるモノなのではないかと勘づいていました。そして、傷の治りとその生命力を目の当たりにし確信しましたが、それを問い詰めるということは一切しなかったのです。


「君はどうして助けてくれたんだい?」


 神は『神である』ということをあえて公言することはなくひた隠し、他の神であれば行うことはない『神』という誇りを隠しきって女に尋ねました。


 彼はどうしても疑問だったのです。誰かからの優しさを知らない彼にとって、なんの見返りや打算もなく誰かに手を貸すという行為は、到底理解できなかった。だから、何をするでもなくいつまでも自身の世話を焼く女に問いかけました。


「どうして、って……怪我をしている人がいたから。ただそれだけです」


 女はいつものような気の抜ける顔でそう言いました。新しい包帯と鼻につく臭いの薬を持って、いつものように笑いました。


「そうか」


 屍祀謳神は静かにそう返しました。女の答えを聞いた神ですが、結局女の考えは理解できませんでした。ただ、女がとんでもなく清らかで優しい存在だということだけは、理解できました。



 屍祀謳神が人間の世界に落ちてから42日、女の家に拾われてから21日が過ぎました。神はもうすっかり元気になり、女と共に村で穏やかな毎日を過ごしていました。


「カバネ。今日は森へ行くの?」

「あぁ。いい肉を獲って来るから楽しみにしていてくれ」

「ふふっ。えぇ、待っているわ。気を付けて」

「あぁ。行ってくる」

「行ってらっしゃい」


 神は相変わらず素性を隠し、加え偽名まで使ってその村に溶け込んでいました。村の中では腕っぷしの良い狩人として頼りにされ、気候を読む術や効率の良い狩猟の仕方などを村民に教えることもありました。


 屍祀謳神は「神園よりも幸せな人間の世界で暮らしたい」と、ついには心の底から願うようになってしまっていたのです。


 しかし現実はいつだって辛く苦しいものです。

 神園から落とされたはずの彼の元に、ある日、父である天包神から迎えの使者がやって来たのです。


天包神アマツムノカミならび小夜照神サヨテラシノカミのご子息、屍祀謳神。お迎えに上がりました。さぁ、帰りましょう」


 『空の子』と呼ばれる、父である天包神が使役する神鳥が静かで和やかな村に飛来したのです。全長15寸もの大きな神鳥は、太陽と見間違うほどの美しく煌びやかな羽根を揺らし、村に降り立ちました。


「帰らない。私はここで『カバネ』として生きていく」


 屍祀謳神はきっぱりと言いました。ゆらりゆらりと荘厳な羽根を揺らす神鳥は、その返答に一瞬驚いたように羽根を膨らませると、飛び立とうと広げていた羽根を畳みました。


 村の人たちも本当は彼の正体に気づいていました。カバネが人ではない、人ではない高次の存在であると。いつの日か元居た場所に帰る日が来るのだろうということも予測していました。


 しかし。神は、カバネは。


 その場にいた誰もが思いつかなかった答えを口にし、天包神の手を振り払ったのです。『神』としての生よりも『人』として、『カバネ』として生きる道を選んだのです。


 村の人たちは諸手を挙げて喜びました。村の狩猟が助かるとか、生活の支え手が消えなくて済むとか、そういう意味での喜びもあったでしょう。しかし、それ以上に「村の一員として誰もが認め、いなくてはならない存在」である彼が『村に残る』と言ってくれたことが嬉しくて。いつになく村人たちは沸き立ちました。


 しかし困ったことに、神鳥にはどうしても屍祀謳神を連れ戻さねばならない理由がありました。


「屍祀謳神。あなたの処遇はたしかに同情されるべきものです。ですが、あなたが神園にいなくてはならない理由があることも、聡く賢い貴方様ならご存じでしょう。どうかお願いです。私からのお願いです。戻ってきてください」


 神鳥は悲し気に目を伏せながら神に乞いました。


 実は、屍祀謳神が神園からいなくなってしまった後、神園と屍祀謳神が管理している土地にはある変化があったそうで。彼が治めていたはずの土地――……『幽谷ゆうこく』では、彼の眷属たちが暴走しそのまま神園で暴れ始めており、神園においても屍祀謳神の兄弟神はあるはずのない死に怯える毎日を送っているそうです。


 また、屍祀謳神の仕事は、死を贈り、そして命を与えること。生きとし生けるものの命の均衡を保つための重要な役割を担っていました。しかし屍祀謳神のいなくなった今、その近郊は崩壊し始め命の輪が乱れていました。亡くなるはずの命がいつまでも残り続け、新しい生を得るはずの命が昏々と幽谷に留まり続けて。


 彼の眷属たちにそのような力はありません。これは彼のみが持つ彼の権能であり、誰も持つことのできない彼だけの特別です。彼以外にその役割を担うことはできないのです。


「分かっている。それでも、私を捨てたのはそちらだろう」


 屍祀謳神、いやカバネはそれでも神鳥の懇願を断りました。彼は、どうしても神たちが許せなかったのです。都合の良い時だけこちらに擦り寄る、人間よりもはるかに低俗で歪み切った神たちの在り方に。


「……そうですか」


 神鳥は相も変わらず悲し気に顔を伏せています。空を落とし込んだような神鳥の瞳から一粒、雨のように涙が零れ落ちました。村の人々は神鳥の涙に畏れ、そして屍祀謳神は肩を揺らして驚きましたが、次の瞬間にはそれも掻き消えて。


「屍祀謳神。私を、どうか許さないでください」


 涙などなかったかのように神鳥はそう言いました。そして、狩猟でよく使う矢尻のように、それよりももっと鋭利にとがった太陽のように輝く嘴で、神の横に立っていた女の身体を貫いたのです。


 女は瞬く間に倒れ伏し、儚いその命を散らしてしまいました。


 屍祀謳神は怒り狂い、すぐさま神園へと戻りました。そして神鳥の主である天包神に詰め寄り、体が動く限り破壊を尽くして神園を壊しました。


 当然、神の楽園である神園の破壊は大罪です。屍祀謳神は主神の下で裁かれ、幽谷から外に出ることを禁じられ、重い鎖に繋がれてしまいました。彼の眷属である『幽の子』たちも足を折られ、首輪に繋がれてしまいました。



 さて、カバネと女のいなくなってしまった村では、重たい空気が村全体を覆いつくしていました。村の活気を生み出していた軽快な青年と、村の自慢と言っても過言ではない器量の良い娘。2人の行く末を見守ろうとしていた矢先の悲劇なのです。無理もありません。


 しかし、亡くなった娘の身体から小さな声が聞こえてきました。必死に息を吸おうとするその声に気づいた村人たちは、うつ伏せに倒れていた女の身体を起こすと、悲鳴を上げました。なんと女の貫かれた腹から赤ん坊が顔を出していたのです。


 村の人々は、カバネと娘の忘れ形見だと言ってその子を大切に大切に育てました。カバネと同じ色の瞳、女と同じ艶のある髪。まろやかな円を描く輪郭に、柔らかな目元。割れ物を扱うかのように、麻布で包み込むように、大切に大切に育てられました。


 しかし、主神は屍祀謳神の子を父である屍祀謳神と同じく罪に問いました。生まれたこと自体が罪である。そう言って子に対しても罪を与えたのです。


 幸せな村に厄災を振りまいたのです。


 はじめは伝染病。罹患すれば体中の痛みにのたうちながら血を吐き、最期は『死なせてくれ』と叫び回る恐ろしい病を。産まれたばかりの赤ん坊からあらゆる知を詰め込んだ老人まで、だれもが対象になりました。


 次は野の獣による襲撃。獣を支配する神に頼み、村近辺の獣を操って村の人々を苦しめました。皮膚を裂かれて骨を砕かれ、臓腑を引きずり出されて。幾人もの村人が血に伏していきました。


 最後は自然を用いた自然災害を。干ばつを起こし作物の収穫量を減らし飢饉を起こしました。かと思えば村が沈まんばかりの雨を降らし、地を揺らし、山を崩してしまったのです。


 子は最後の生き残りである村人に隣の村へと託されましたが、生き残りであったはずの村人も幾日と経たずになくなってしまいました。子は、独りになってしまったのです。


 しかし、神の罰はこれで終わりではなかったのです。

 子が移り住んだ村、そこでも同じように厄災を振りまいたのです。次の村でも、そのまた次の村でも。子が生きていく場所を変える度に同じように厄災を起こし、子に孤独を与え続けたのです。


 やがて子は、ヒトに『厄災の子』として畏れられ虐げられるようになりました。それもそうです。子が移り住んだ村々はたちまち疫病が広がり、常であれば何の害もないはずの野獣が突如村を襲撃し、挙句の果てには自然の驚異に呑まれてしまうのですから。


 子はやがて己の異常さを自覚しました。自分は誰かと共にいてはいけない存在だと、理解してしまったのです。そこからは子は、独り生きていくことを心の内に誓いました。子が世に生まれ落ちてわずか数年、まだ言葉も上手く扱えないような齢の頃のことでした。



 さて同時刻、神の住む神園ではとある審議が繰り広げられていました。大罪人の血縁者とはいえまだ齢いくつの幼い子供。そんな存在に与えられ続けているあまりにも重い罰に対して、何柱からか苦言を呈されてたのです。


「あなた方は何をしているのか理解していますか?」


 出産と育児の女神である恵慈神サトナリノカミ。彼女にとっての幸せは『生きとし生けるもの全てに、等しく愛が注がれること』。そんな彼女からすれば、神々が子に対して行っている所業は到底許せることではありませんでした。恵慈神はもちろん、屍祀謳神の子も等しく愛される権利があると神々に向かって主張したのです。


 彼女だけではありません。


「いい加減お前さんの怒りも落ち着いてきた頃だろうよ。俺もそろそろ疲れたんだ、ちぃと休ませてくれや」


 獣を司る神――……獣絆神シヅナノカミは、主神に命じられここ数ヶ月の間、野山の獣と共に人々を蹂躙していました。しかしながら彼は、人間に対しての嫌悪感を持ち合わせていませんでした。つまり、日夜繰り返し人々に対して牙を立てることに心を痛めていたのです。獣を司る彼は誰よりも命の尊さを知っていました。だからこそ、無辜の命を削ることに反対したのです。


 それだけではありません。


「罰せられるのは子ではなく、私であるべきです」


 ことの元凶たる童子守神が、そう言って主神の前に膝を折ったのです。彼は兄弟である屍祀謳神こそ嫌ってはいるものの、本来は『子供の成長を守る神』です。自分のしでかしたことが原因で、守るべきはずの子が凄惨な目に遭っていることに対し、引け目と責任を感じていました。それ故の、言葉だったのです。


 やがて主神の行っている所業に対する批判の声が大きくなっていき、ついに神は子に対する罰を取りやめることを決定しました。子が独りで生きていくことを心に決めてから2年、子がヒトとしての生活から隔離され、独りの暮らしにずいぶんと慣れてきたころの話です。



 やがて月日は流れ、子が10になった頃。静かな森の奥で1人暮らしていると、見知らぬ人のようなものが子の元に訪れました。


「謂れのない罪と罰。与えられ続けた余りある苦痛。我々からのお詫びだ、君に祝福を授けよう」


 子が首を傾げて見上げたその人は、木々と同じくらいの背丈を有しており、ともすれば恐怖すら覚えるような格好をしていました。不気味な人、実はその正体は童子守神であり、彼は心の底からの謝罪と償いを持って子の未来を照らそうとしたのです。


「君の進むこれからに光あれ。数多の人に愛されるように、数多の幸せに浸れるように」


 童子守神は子に対して加護を与えました。これまでの神々の行いに対する贖罪だとでも言うように、これ以上ないくらいの加護を。

 神は子に対して加護を与えると「やることは終わった」と言い子の前から姿を消しました。子は、これからを生きていくに十分な加護を得ることができたのです。


 できた、はずでした。


 しかしながら、子は親に似ると言います。

 屍祀謳神は、神々に対してもとより好感を持ち合わせていなかったのですが、件の出来事により完全に信頼をなくし、憎しみを抱くようになっていました。幽谷に隔離されているため他の神の誰も気づいてはいませんが、復讐できる時を虎視眈々と待ち続けているのです。

 子もまた同じく、自身も理解できないような本能的な部分で神々に対して敵対心や憎悪を燻らせていました。この世界は神と切って離せないほど綿密な関係を築いていますが、子は『神』だけはどうしても受け入れられませんでした。人里で暮らしていた際に強要された神に対する信仰も、子にとっては何にも勝る苦痛でもあったのです。


 その結果。


 童子守神の加護は、彼の思いもよらなかったような形へ姿を変え、子に降りかかったのです。


 神と人の間に産まれた子は、しかしながら神と呼ぶにはあまりにひ弱で、けれどもヒトと呼ぶには歪な存在でした。どちらにもなれない子は、神々からもどちらとして扱うか頻繁に議論が行われていました。子はどちらでもなかったのです。どちらとして扱っても不備があったのです。


 しかし、童子守神の祝福により子の在り方は大きく変容してしまいました。加護であるはずの神からの祝福は、子の中に根付く憎悪により呪いへと姿を変え、子を完全にヒトならざるモノへと作り変えてしまったのです。


 それから子は、やはり独りで生きていました。自身でも明らかにヒトではなくなったということに気づいていたのでしょう。


 生きとし生けるものに触れればその命を奪い、冷たくなったはずの命を抱きしめればソレは息を吹き返し。聞こえるはずのない心が見えるようになり、影に溶け込めるようになり。


 どう言い訳しようも、もうヒトとは言い表せない存在になってしまっていました。子は神に対しさらなる嫌悪を募らせながら、人里から離れるように自ら孤独の道を選んで、深い深い山の奥へと身を隠しました。



 この世には、ヒトには立ち入れない未知の場所があります。それは神の子のような望まれぬ者やはみ出し者、異端の者、恐れられる者の集う場所。ヒトではない異形やヒトにはない異能を有した者、けれど神のように清らかで崇められるような存在ではなく、忌み嫌われて虐げられる対象である者たちの憩いの場。


 人々は、そこを神々の住まう神園と比較し『堕園おちぞの』と呼称しました。穢れた者たちの流れ着く場所として、そこに住まうものを嘲笑うようにそう名付けたのです。


 しかし堕園に住まう者にとって、堕園こそが彼らの楽園でした。


 己を虐げる者はいない。

 己を害そうという悪意も無い。

 満足な食糧を得られる。

 同じような仲間がここにいる。

 自分のことを否定されることも無い。

 生きることが許される、唯一の場所。


 屍祀謳神の子も、流れる噂を頼りにそこへとたどり着きました。神の血を引く子に対し、堕園の住人たちは始めこそ渋い顔をしていましたが、彼の生い立ちと心の内を知ればそんな顔をするモノもやがていなくなり。いつの間にか子も住人として受け入れられて、立派に堕園の住人となりました。


 彼は今もそこで幸せに暮らしています。

 

 1000年もの月日を生きてきた千歳狐チトセギツネが美しい毛並みを揺らし、住人を揶揄って遊んで。誰も元の姿を知らない千変万化の無躰無貌ムクムボウは狐の悪戯を手伝い、九つの頭と人格を持つ九蟒蛇クワバミは忙しなく会話を繰り広げ。ヒトの丈ほどの目を輝かせる十束蜘蛛トツカグモは今日も今日とてのんびりと巣作りに励み、誰よりも澄んだ目で過去から未来を見通す斑猫離マダラメウリはいつも通り昼寝に勤しんで。風に乗り空を泳ぐ水風狸ミカゼリは木霊たちと歌い、東西南北に散らばる犬神の王たる総戌主サクヌシは日課の牙研ぎに精を出し。何百といる鬼の中でも唯一の存在である鬼王キノオオワカは日の高い内から酒に溺れ、死の呼び声と名高い優美な声を持つ霊拐鷹ヨカドダカは今日も天空を舞い。原初の非人であり堕園の作り主たる空操カラドリは堕園の暮らしを笑みながら見守り。


 他にも大小さまざまな異形が堕園で暮らしています。個性のあふれるそこでは少しのことで殴り合いの喧嘩が勃発し、けれどすぐにそれも忘れられて皆でどんちゃん騒ぎ。毎日が新鮮で、毎日が誰かの特別な日。迷い子が訪れない日はなく、宴会は日常茶飯事。


 屍祀謳神の子もそこで新たな名を得て、喧騒と饗宴の日々を繰り返しています。


 子が得た名は『生分キクマリ』。


 彼は今も生きています。

 ヒトから遠く離れた堕園で、けれどもヒトのすぐそばで。

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