ライフ・T・リブ

秋倉

プロローグ《入社式のその中で》

「......すいません、一ついいですか」


段上に立つ女性——『世界治安保全機関』通称WSMウズム:第十四-日本国支部の支部長へと、周囲の視線を集めながらも、佐倉賢戸は問いかける。


「先程からの話を聞いていると、僕たちがまるで...」


“消耗品”のようじゃないかと、続けようとしたところに、遮るようにして返答が返ってくる。


「そうだ」


彼女は僕たちを一瞥すると、小さく息を吐き、続ける。


「我々は先程も言った通りに、世界各国の協同によって設立された、治安維持のための組織だ。さて、君たちに断言しておこう。我々は治安維持のためであるのなら、犠牲を厭わないし、手段を選ぶつもりもない」


そして、と彼女は続ける。


「そこにはいかなる例外も存在しない。それはたとえ、君たちの命であってもだ」


その言葉を聞いた内定者から、彼女はバッシングを受けていたが、佐倉は一人、納得していた。


それは、なんの能力も持たない”無能力者“である自分が、WSMのような世界機関にどうして入れたのかという疑問に対しての答えであった。


あぁ、もしかしなくても僕は、この世界で”最も治安の悪いところ”に来てしまったのかもしれない...

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ライフ・T・リブ 秋倉 @Akikura-minamo

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