Sid.2 幼女のうんち処理をする

 風呂と下の世話。

 風呂はまだいい。けどな、下の世話なんてのは、母さんがやりゃいいんだ。


「それも込み」

「なんでだよ」

「慣れだから」


 問答無用だった。なんで俺ばっかり。学校の勉強だって、今後は予備校通いもあるし。


「あんたの成績なら上位校も楽勝でしょ」

「楽勝なわけあるか」

「成績自慢してたじゃない」


 それは勉強に費やせる時間があってこそだ。ガキの世話してて、いつ勉強すりゃいいんだよ。


「週に二回程度なんだから文句言わない」


 男子も子育ての大変さを理解すべきだと。なんでもかんでも奥さんに丸投げで、どうして円満な家庭になるのかだってよ。

 離婚が多いのも多くは旦那側に問題があるとか。核家族化の時代に家事育児を丸投げしてて、不満を持たない妻が居るのかと。生まれてすぐの乳幼児の世話は、僅かでも気を抜けない状態になる。


「あんたも泣き喚くは、ぐずるわ、大変だったんだから」


 夜泣きもあるし静かに寝たと思ったら、いきなり大声で泣きだす。何が不満で何があるとそうなるのか。意思疎通も図れない時期は、ノイローゼになりそうな程だったと。


「乳離れはしてるんだから楽なもんでしょ」


 現在二歳児。

 おむつを穿いてうろうろする年齢になってる。この時期は勝手に歩き回るから、片時も目を離せないのだとか。


「なんかあったら、あんたじゃ責任負えないんだからね」

「だったら母さんが面倒見りゃいいだろ」

「だからね、慣れておけば自分の子どもの面倒見れるでしょ」


 何を言っても無駄だった。

 おむつの交換なんて、臭いし汚いし。ションベンだのうんち塗れだぜ。女の子、なんて言っても幼児の内は垂れ流しだ。これ、将来教えてやろう。散々うんち漏らしてたんだぞとか。

 あとな、一応女の子だってのはあれだ、突起が無いことで理解する。女子ではない。これを見て欲情したら危ない奴だし。


「あんたの場合は小指の先より小さかったけど」


 そう言いながら小指立てて笑ってるし。

 くっそ。恥ずかしいことを平気で言いやがる。

 今は小指どころか親指六本分より太いぞ。長さだって充分あるはずだし。見せる気は無いけどな。


「なんかわがまま放題なんだけど」

「仕方ないでしょ。二歳児はイヤイヤ期でもあるんだから」


 俺の時も大変だったと。あげくおっぱいを欲しがったり、駄々こねまくりで手が掛かったとか。


「わざわざ吸いに来るんだから」

「知らん」

「三歳になっても乳離れできなくて」

「知らんっての」


 今も欲しいのか、とか言われてもな。見るのも触れるのも嫌だ。そんな萎んだ乳なんぞ要らん。

 どうせなら同じクラスの女子。気になる子は居るんだけど、遠目に見てるだけだ。あの子のなら喜んで吸うぞ。


 幼児の世話が無い時は普段通りの生活。

 飯食って勉強して寝るだけ。


 そして世話をする日になると、池原さんが幼児を連れてくる。


「お世話お願いしますね」


 この人、まだ二十一歳だとか。俺とそれほど年齢に違いが無い。なのに子持ち。

 まあ、獣レベルの知能しか持たない男相手だったし。

 あとさあ、今後は結婚しないのか? まあでも、連れ子が居ると相手も嫌がるか。聞けば高校も中退だとかで、中卒。

 これじゃあ、まともな男は寄り付かないよなあ。


「明日の九時までですよね」

「そうです。何かあったら連絡ください」


 そう言って幼児を俺に預ける池原さんだ。年齢は上でも年上って感じが無い。見た目だけは相応に老けてるけど。

 軽く頭を下げて家をあとにする池原さんが居て、見送る俺。

 そして、幼児に目をやると駄々こねそうな。


「今日は大人しくしてろよ」

「やぁぁぁ」

「こら。勝手に歩くな」

「やぁぁぁ」


 くそ。手の掛かる。

 勝手に廊下を突き進み、キッチンへと向かってるし。そっちは母さんが居るんだよ。まあ母さんなら慣れてはいると思うが、俺が怒られるんだよ。ちゃんと見ておけって。

 途中コケそうになったりして、見ていて危なっかしい。

 でだよ、やっぱりそうなる。


「ちゃんと見てなさい」


 このクソガキ。お前のせいで俺が怒られる。

 キッチンに入り込んで、母さんの足元に絡むからだ。

 駄々こねてむずかるガキを引き剥がし、リビングに連れて行くのだが。


「びゃぁぁぁぁぁ」


 くっそうるせえ。


「泣かせてないで、ちゃんとあやしなさい」

「どうしろって言うんだよ」

「何事も経験。自分で考えて最良の方法を見付けなさい」


 勉強だけできても意味が無いんだから、これもいい機会だと思って、しっかり幼児と一緒に学んで行けと。いい経験になるとか言ってるし。

 バカ抜かせってなもんだ。


「さて、幼児。俺が遊んでやるから、少し大人しくしようか」

「びゃぁぁぁぁぁ」

「だから泣いてんじゃねえ」


 すぐにぐずる。言語も通じない。まだ犬猫より知能が低い。豚よりアホかもしれん。クジラとかカラスの方が賢いだろ。

 これがいずれ人間の知能を持つのか。

 マジで持つのか? ずっとこのままってことは無いよな?


「なんかくせえ」

「うんちでしょ」

「マジか」

「さっさと交換してあげなさい。蒸れてかぶれちゃうんだから」


 垂れ流しって犬猫以下じゃねえか。マジで人間なのか、これ。

 おむつを用意し暴れる幼児を転がし、おむつを剥ぐんだが。


「母さん」

「なに?」

「どうすりゃいい? 臭い」

「あんたのウンコより清潔だから」


 なわけねえ。

 清潔なうんちとか不潔なウンコなんてあんのかよ。クソはクソだろ。

 おむつを引っぺがして、ケツ拭いて、汚れたタオルはどうするんだ?


「このタオルは?」

「洗って干しておいて」

「手がクソ塗れになるだろ」

「手くらい洗えばいいでしょ」


 泣きてえ。なんで俺がこんなことを。

 普通の高校生は幼児のお守なんてしねえ。青春時代をこんなガキの相手に。


 夕飯の時間になると、やっぱり世話は俺がやることに。


「ほれ食え」

「にゃぁぁぁぁ」


 スプーンですくって口元に持って行っても、素直に食わねえし。手が掛かりすぎだろ。しかも零すし手で持ってぶん投げるし。

 なんだよこれ。知能あんのか?


「ちゃんと目線を揃えて、しっかり口元に持って行きなさい」


 とにかく目を見ろと。上からの動作だと子どもには、急に手が出てきたとしか見えない。視野が狭い。だから拒絶されるのだとか。知らねえよ、そんなことまで。

 あれか、猫をあやすのと同じってことか?


 夕飯で手を焼き、そして入浴となると最早、溺死させかねない。

 常に支えてないと溺れる。なんだよこれ。とんだ苦行じゃねえか。

 バタバタ暴れる幼児に手を焼いてると、風呂の扉越しに母さんから「ちゃんと抱えなさい」とか言われるし。

 だったら母さんがやりゃいい。俺にできるか、こんなもん。


 こうして二歳児の面倒を見ること週に二回。

 小遣いの増額程度じゃ割に合わない。


「小遣いもっとくれ」

「じゃあ、あたしはあんたの世話代もらわないとね」


 アホか。生んだ責任ってのがあるだろ。俺には何の責任もねえぞ。

 ましてやこの幼児は他人だし。

 こんな事を繰り返して半年も経過すると、多少人間になってきた。


「ぱぱ」

「パパじゃねえ」

「まま」

「ママでもねえ」


 俺を見る目がな。徐々に人間になると同時に、甘えてくることも増えてきた。


「すっかり懐かれたじゃない」

「邪魔なんだが」

「父親代わりなんだから、しっかり面倒見なさいよ」


 勘弁してくれ。子持ちになる年齢じゃない。

 だが、人間になってくると同時に、頭を抱える事態にもなってきた。


「母さん。風呂は俺じゃない方がいい」

「懐いてるじゃないの」

「そうじゃなくて」

「まさか二歳児に欲情してるの?」


 違う。

 こんなクソガキに欲情して堪るか。欲情してるのはこのガキだ。


「風呂で、そのあれだ、俺の」

「ぶらぶらしてると興味持つんでしょ」


 ぶらぶらする程度のサイズになって、良かったじゃないかと。アホかっての。

 小指の先より小さかったのが、すっかり風に吹かれてぶーらぶら、とか言ってるし。

 まともに取り合う気は無いようだ。

 風呂場で弄ばれそうな俺の股間。すでに変態だ。

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