店の状況

強盗が入ったと聞いて急いでオスカーとメィリィは駆けつけた。


店の近くにいたことも幸いし、思ったより早く来ることが出来た。




「ひどい…」

「許せないな」

入り口のガラスが割れている。


ドレスを纏ったトルソーがいくつか倒れているのが見えた。


店長のリザが憲兵に何やら話しているのが見える。


強盗だろうか、捕縛された男数名が見えたがすぐさま馬車に押し込められていた。



青ざめるメィリィをオスカーは支える。


周囲を見れば現場の指揮をしているキールが目に入った。


「キール、どうなってる?」

「んっ?あぁオスカーか、今日は薄化粧だからわからなかった。見ての通り強盗は押さえた、しかし一人逃亡中だ、俺はここを指揮するから捕まえてきてくれ。メィリィ嬢はショックだろうがここのオーナーだと聞いている、色々と話を伺わせてほしい」


淡々としたキールの言葉を、オスカーは苛立ちをぶつける。


「随分な物言いだな、ショックを受けている女の子にはもっと優しくしろよ」

「特別に巡視経路にここを組み込み、俺自ら回っているんだ。被害はこれでも少ない方なんだから文句を言うな」


確かに派手にガラスは割れたが、人的被害は少ない。


そしてキールは本来巡視をするような立ち位置にはいない。


それなのにここにいるのだから、メイリィの店が特別扱いを受けてるのはさすがのオスカーにもわかった。


「…悪かった、気が立っていた」

冷静さを失っていたと気付き、素直に謝る。


「別にいい。俺とて被害を0に出来たわけではないから、その感情は仕方なかろう。だから一人逃した」


キールは逃走した方を促す。


「ここでは人目につきやすい。どこか見つかりにくいところに逃げたのだろうから、オスカーが見つけたら死なない程度に捕縛しててくれ。俺はここで忙しい」


見えないところでボコって来いと言われた。


「わかった、見つけてくるよ」


オスカーはすぐに魔法を発動させた。


周囲の記憶を見る力。

逃げた男の顔、行く先、ゆっくりと辿っていく。


護衛騎士として覚えた秘術。


王家に忠誠を誓ったものしか使えない。

闇雲に使えば魔力を封じられるものだ。


「メィリィ待っててくれ。ちょっと懲らしめてくる」

キールがいれば安心だ、彼はオスカーの数倍強い。


「オスカー様も一緒にいて下さい…」

震える彼女に後ろ髪を引かれる思いだが…


「すぐ戻る、大丈夫だよ」


メィリィの手を取り、甲にキスをした。


オスカーはギッとキールを睨むと、

「彼女に手を出すんじゃないわよ!」

「阿呆な事を言うな。とっとと行け」




「あの、キール様?」

「どうかしましたか?メィリィ嬢」


外では目立つため今は場所を移動し、店の応接室を借りている。


ドレスの損傷はそれ程ないが、店の修復で復帰には暫くかかりそうだ。


「オスカー様はぁ、大丈夫でしょうか?」

オスカーは自分でお飾りの護衛騎士だと言っていた。

そんな彼が一人で強盗の後を追ったのだ。

もしかしたらまだ仲間がいるかもしれない。

心配である。


「大丈夫だ。オスカーは戦いには向かないが、捕縛には向いている」


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