第2話

 それから数日後、この町では誰かが常に消えていることが分かる出来事が山ほど出てきた。僕の家族でも、最近知り合ったりした人が突然いなくなった、という話が後を絶たない。少しずつ、自分たちが引っ越してきたのがとんでもない場所かもしれないと明かになっていった。


 「やっぱり、おかしいぞ? 」


 夕食を食べている最中に、お父さんが大声でこう叫んだ。


 「たしかに私は昨日、新しい会社で仲良くなった後輩と一緒に仕事をしたんだ! なんなら飲みにもいった」


 「でも今日、奴の連絡先もデスクも全部消えていたんだ」


 「また? もう5人めくらいじゃない? 」


 呆れたように答えたのはお母さん。実はこの家族の中では一番最初にこの町の異常さに気づいていたらしい。きっかけは近所であいさつを交わしたことのあるおばさんの失踪。


 「せいじもって言ってるし、ももちゃんも、なのよね? 」 


 「うん」 と幼い妹のもも。


 「まったく、一体どうなっているんだ? 」


 訳のわからない現象が続いて、お父さんたちはだいぶ腹が立ったり、恐怖を感じたりしていた。もうすでに別の地域に移ることを計画したりもしている。


 そう、ただ人が消えるというよりかは、誰の記憶にも残らず消える。これが普通に起きている・・・・・・


 次の日学校に行くと、いつも通りともやが教室で待っていてくれた。この教室で違和感を感じていたのは多分僕だけだった。他の人は日に日に消えていくメンバーを誰も覚えていない。


 「なんだよ、最近元気ないな」


 「ともや、うん、大丈夫」


 僕は間違いなくあきらめの感情も生まれていた。何言ってもダメなんだろうな、とは思う。


 「まあ、転校したばっかりのときってきついよな」


 「うん」


 「そのお前がいつも言ってるかずのりってやつも相当仲良かったんだろ?」


 いや、相当仲良かったのは君だよ。


 「けどさ、せいじだって―」


 すると突然、ともやが口を開くのをやめた。いきなり廊下の方を見入るように凝視し始めて、まるで固まっているよう。さっきまでのエネルギッシュな感じが、瞬く間にきえた。


 「どうしたの? 」


 心配して、僕は小さく声をかけてみた。


 「いや、あれ・・・・・」


 そう言って彼が指さした先には、何か人型の黒いものが立っている。あっちも僕たちのことをみつめていて、不気味だ。ちなみにクラスメイトは誰も気づいていない。


 黒いものはゆっくりとこっちへと迫ってきた。心なしかすこし笑っているように見える。


 だんだん僕たちふたりとの距離が埋まっていく。もう、逃げようにも逃げられない!


 次の瞬間、僕は意識を失っていた。






 

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