熟成された愛しい人

ハナミ

第1話いつの間にか

初めはね

偉そうにしていたご主人様

味付けについても

私はね

気をつけるね

と言いながら

変えなかった

何故?


ご主人様は濃い味付けが好き

油たっぷりの

くどい食事が好き

でもね

私はね

1日も長く

ご主人様といたい

肉は1度下茹でするか

グリルで余分な油を落とす


そして、野菜を煮る種類によって分けて味が染みてから合わせる

健康が1番


だって

ご主人様は優しくて魅力的で

わがままで

とても私を大切にしてくれる


手がカサカサになったら

さりげなく入浴剤を買ってくれて

熟成していると

思いこんで

とても甘い金木犀の

アロマを手に宝物を扱うように

塗ってから

私がね

寝ているか

確認しながら

安心して寝る

世界一可愛いご主人様


ある日結婚して10年

子供が出来なくて

悩んだ

私はね

ご主人様に

別れて

貴方の子供を産んでくれる

素敵な女性と結婚してくださいと

涙ポロポロ

でもね

大好きな

ご主人様に赤ちゃんを抱かせてあげたい

ご主人様は怒った顔をして

ギュッともう若くない私を抱きしめて

耳元で

ごめんね

俺が君を好き過ぎて

神様が

こんなヤキモチ焼きの父親がいる

家には

赤ちゃんを渡せないって

言ってるんだよ

君は

僕だけを愛していればいい

優しく背中を撫ぜて

そして、軽くウィンクして

続きは夜だねと

どこまでも優しいご主人様

暖かい腕の中で

ホッとして眠ってしまった


ねぇ

ご主人様

あれからいくつもの年を重ね

桜を見て

愛し合って

健康に気をつけて

いたけど

ごめんねご主人様

私は

寂しいがり屋だから

ご主人様のいない世界では

生きられないから

先に

お迎えがくるみたい

優しくて

注文が多くて

外食が嫌いになったご主人様

私の体が魂になったら

ご主人様がこちらの世界に来るまで

待ってます

私は

幸せでした

ケンカをした後チラチラ

こちらを見るご主人様

私はね

そんな

やんちゃ坊主みたいなご主人様が大好きで

私から謝って

もち米を前の晩から水に浸して

次の日に

蒸して

おはぎを作り

15個

は食べるご主人様のために

熱さと戦いながら

美味しい顔で

食べてくれるご主人様が大好きです

寝る前に

優しく口付けをして

怖い夢をみたら

起こすようにと

シワシワの手になった私に

今でも言ってくれるご主人様

愛しています

泣き笑いのような顔で私を見つめてくれる

世界一可愛いご主人様

そのシワシワの手の1つ1つが

2人の思い出で

愛の思い出

ご主人様

少し

眠たくなりました

ご主人様を後で独占欲の強い

私が迎えにいきますね

それまでは

しばらく

夢の中の私を愛して下さい

永遠に


桜吹雪の中

ストールがご主人様にぶつかった時が

毎日会う度に

そして

最後は

魂の絆

私は

ご主人様の

八重歯が本当に大好きでした

先に逝くことを許して下さい

ご主人様のいない世界では生きていけない

女なんです

召される直前まで

家族として

親友として

女性として

扱ってくれてありがとうございます

お慕い申してあげます

もう眠くて眠くて

おやすみなさい

ご主人様

頬が冷たい?

おやすみなさい

私だけの

ご主人様

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熟成された愛しい人 ハナミ @muneta

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