第16話  イスルムニア精舎→バイクタクシー初体験

 イスルムニア精舎は岩肌に造られた小寺院である。紀元前3世紀に建てられた僧院の一部といわれ、スリランカではもっとも古い寺院である。ここは200ルピーのチケット代が必要であり、靴も表玄関で預かってもらわなければならない。その際、預かり代として20ルピーを徴収された。

 この当時から石窟に像を祀ることが始まったのか、昨日行ったゴールデンテンプル同様、ここも石窟となっている。本堂の中には涅槃像があり、熱心な信者が、一生懸命祈りを捧げていた。

 この表情はまだ許せる。昨日のゴールデンテンプルの仏像は全てにおいて一様に表情が乏しく、神秘性一つ感じなかった。

 お昼を過ぎると本当に外は暑くて、地面も暑くて歩けたものではないから、この本堂の中でしばらく座り込んでしまった。

 でも現地の人は平気で歩く。幼い頃から裸足で歩き慣れており、また地面の熱さと気候の暑さにも慣れているのだろう。日本人にWの「あつさ」はきつい。

 この施設において一番辛かったのは、小石の痛さと地面の熱さだ。まるで罰ゲームだ。本堂奥にあるメインの建物である岩に上がっているときが一番しんどかった。熱くて熱くて、泣きたくなった。

「もうちょっと、頑張れ!」

すれ違うたび、現地の人が声をかけてくれる。スリランカの人は本当に親切だ。でも、こちらは微笑む余裕もない。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 この岩山の頂上からはアヌラタブラの街が一望できる。ほんと、自然の中にある遺跡の街は魅力的だ。だが、しばし緑に癒されよう、と言う意思は皆無。

 足が熱すぎる。痛みも走る。さっさと撮影して下山することにした。

 ちなみに本堂に据えられている仏像は浅草寺の援助で色が塗り替えられたそうで、その証拠の記念碑も岩の裏側にひっそりと建っていた。ほんと日本はこの国に、いろんな角度から関わっているのだ。

 さて、40分ほどで見学を終え、またオールドバスターミナルへ引き返す。イスルムニア精舎前にたむろしていたトゥクトゥクにドライバーの集団に、来た時と同様の200ルピーでオールドバスターミナルまで行って欲しいとお願いするも、一様に首を縦に振らない。

「その料金にこだわるなら、バイクタクシーにしようよ。」

と近くでバイクにまたがっていた、若い兄ちゃんを紹介される。要はバイクの後ろに乗っかって、バスターミナルまで行け、と言うのだ。これなら200ルピーでOKだと笑う。

 バイクタクシー。初体験。面白そうだな。好奇心には勝てない私は、馬糞のような臭いのする、くっさいヘルメットを借りて、バイクにまたがる。

 あほみたいにスピードを出すバイク。後部座席で叫び声を上げる私を、興奮していると勘違いしている運転手は、さらにスピードを加速させる。生きた心地が持てないまま、あっという間にオールドバスターミナルに到着した。

 ふらふらになりながらも料金を支払う私を見て、親切なドライバーはダンブッラ行きのインターシティバス前まで連れて行ってくれた。

 バス料金は行きと同じ200ルピー。ただ、インターシティバスは地元の方がなかなか利用しないため、馬鹿みたいに待たされた。発展途上国の場合は、ある程度人が集まらないと走り出さないから仕方ないが、待っている間、クーラーをかけてくれないため、さらに辛い。熱中症にさせて、乗客を殺す気なのかと勘ぐってしまうほどだ。

 結局ダンブッラのメインバスターミナルに到着したのは、16時過ぎだった。ただ相当疲れ切っていたようで、走り出してすぐに寝落ちしてしまった私は、アヌラタブラからダンブッラまでワープした感触を抱いた。

 明日はポロンナルワ遺跡観光である。ポロンナルワはもっとレストランや店がないとガイドブックに書いてある。せっかくダンブッラの中心地で降ろされたので、近くのスーパーマーケットに寄って果物と飲み物の調達だけした。

 オレンジ4つとリンゴ4つと水2本。これだけの量で520ルピー。高級スーパーに入ってしまったようで、ちょっと高めな印象を受けた。

 お宿に着いて、シャワーと洗濯を終えたころ、今日はご主人がセイロンティーを入れてノックしてきた。1月1日はボーヤデーだったから、大半がお休みで大変だったでしょう、と言う。ボーヤデーと言うのは満月の日と言うこと。  

 この国は満月の日は祝日になると言う。

 だからトゥクトゥクの数が少なく、休みの店もが多かったのか。

 さて夜19時。夕飯の時間だ。今夜もたくさんの量がふるまわれる。私は1人だと言うことを理解しているのだろうか。もしかしたらご主人は、私の後ろに他の人間が見えているのではないか?と心配になるくらいの量だ。

 なぜこの国はやたら量が多いのか。いろいろ考えながら、食後はすぐに深い眠りについた。


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