第2話

朝子がこの家を出て数日後、俺はやっと本気で彼女を探し始めることにした。


手掛かりはSNSの写真だけだ。

ここ数日間でアップされた写真はほとんど海の写真だった。

青い海に白い砂浜。と言ったらやっぱり沖縄だろうか。


「朝子ちゃん、海、すきだからな…」


口から出た言葉は、静かな室内で思っていたよりも響いて、誰に伝わるでもなく自分に返ってきた。


1日に何枚も上げられた海の写真を眺めていると、ふと、その中に紛れた1枚が目に留まった。

パンダだ。

少し離れた芝生にいるパンダと朝子のツーショット。良い笑顔。楽しそう。


そういえば、日本でパンダを見られる所は限られているのではなかっただろうか。

すぐさま、新しいタブを開いて検索する。


「…やっぱり」


パンダがいて、綺麗な海がある所。ここは、和歌山県の白浜だ!


調べてみると、なんと飛行機の直行便がある。羽田空港から1時間ちょっとで着くではないか。

俺は、気づけば最低限の荷物を持って、家を飛び出していた。



エコノミークラスの座席に落ち着くと、俺はもう一度朝子の写真を見返した。

どこに泊まっているのかが、分かる写真があるかもしれない。


ん?この白い鳥居…これも白浜にあるのか?

確か、映えスポットとかでこないだテレビでやってたやつ。……って福岡県!?

あれ、よく見たらこっちの写真もまた別の海じゃないか!?

ちょっと待てよ、アイツ、この数日間でどんだけ移動してるんだよ。


はあ、落ち着け。直近の写真では、間違いなく朝子は白浜にいるんだ。

とりあえず、着いてから、近辺を探せばきっと見つかるはずだ。


ひとまず一眠りしよう。そう思って俺は、腕を組んで瞼を閉じた。

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