婚約の顔合わせ②
一つ咳払いをし、ディエスは話を続ける。
「ティタン様はわが領地に来るおつもりはあるのでしょうか? 住み慣れた王宮を離れ、いち領主となる覚悟が」
「あります。いずれは臣籍降下する予定でしたし、大好きなミューズ嬢の側なら死ぬ気で頑張るつもりです」
背筋を伸ばし真っ直ぐに言うティタンは、真っ向からディエスの視線を受け止める。
「あまり勉学は得意ではないと聞きますが」
「はい。兄に比べたら俺は不出来なものです。しかしそんな事は言ってられません、彼女のような素敵な人と巡り会えるなど、この生涯でもう二度とはないと思っております。それならば惚れた女性の為に死ぬつもりで頑張ることが、男だと思います」
兄と違い、殊更生真面目に返してくる。
「死なれては困ります、ティタン様。そんな事おっしゃられては悲しいです」
「わかった、死なないくらいに頑張る!」
単純明快な男なのだろうなと、何だか親近感がわく。
「これからの働きに期待したいと思いますが、何よりミューズが良いと言うならば私としてはもう言うことはありません」
ディエスは一応了承した。
ミューズがここに残ってくれるならばとの考えもある。
ティタンであればスフォリア家を乗っ取ろうという事もなさそうだ。
それに数々の噂で疲弊していたミューズがこんなにも嬉しそうなのだから、応援してあげたい。
「シグルド公も俺をミューズの婿として認めて貰えますか?」
ティタンが声をかけたのは護衛の中の一人、シグルドだ。
兜を被って顔を隠していたがティタンにはバレていたようだ。
「久しぶりだな、ティタン王子。しかしよく、わかったな」
「歩き方と気配が似ておりました。ミューズ嬢の祖父ですし、今日はいらっしゃると思ってたのです」
ティタンはシグルドに騎士としての教えを請うた事があり、幾度か鍛錬も行なっていた。
シグルドもティタンを気に入っていて、王宮に出向く際は教えるように時間を作っていた。
「俺を負かせるようになればな」
「わかりました」
ある意味とても大きな難題だ。
シグルドは自ら魔獣狩りをするほどの手練で、バリバリの現役だ。
生半で倒せる相手ではない。
「ディエス、無事に皆の意思確認が出来ただろう。他に質問はあるか?」
領の事や娘達の気持ちは聞いた。
細かい摺合せや決定事項は後になるだろう。
そこにスッとエリックが手をあげる。
「もしディエス殿からなければ、俺から一つ。もしかしたら不快にさせるかもしれませんが……」
ティタンと目配せをした。
ティタンは決意し、こくりと頷く。
「ミューズ嬢の醜聞についてです」
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