姉妹・兄弟トーク

「お姉様は、エリック様とどのような話をしたの?」


寝る前のお茶の時間、姉妹で話をする。


「如何にミューズが可愛いかを話したわ。それはもうたっぷりと」


「もう、そうじゃなくて」


ぷくりと頬を膨らませる。


「エリック様に、その、プロボーズを受けたのでしょ? どんな言葉だったのかなって」


「えっと……何だったかしら?」


婚約者になれとは言われた。


王族になるメリットと妹を守れるメリットは聞いた。


しかし、好きとか愛してるとかは言われたかしら?


「覚えてないわね……」


「余程緊張してたのですね」


「婚約してほしいとは言われたわ」


思い出そうとするが、思い出せない。


「ちなみにミューズはどのような事を?」


少々わんぱくそうなティタンを思い出す。


あの少年王子はどんな事を言ったのだろう。


「いっぱい可愛いと言ってもらえました、私のことを特別と……」


両頬に手を当てて恥ずかしそうに俯く。


「可愛いは大正解ね。わたくしもティタン様と仲良くなれそうだわ」


解釈一致は嬉しい。


そう言えばエリックもミューズを可憐と言っていたし、悪い人ではないだろう。


「エリック様は心無い噂からあなたを守ってくれてたわ。今度リストを貰ってくるから」


「リスト?」


レナンから聞いた出来事に、ミューズは味方してくれたエリックの事も少し好きになった。






ニコラとエリックとティタンは深夜になり、エリックの自室に集まっていた。


「ティタンはこれを見たか」


それは王家の影が持ってきた調書、様々な情報と絵姿が書かれている。


「見ていない。こちらはどこの令嬢だ?」

覚えがないという反応のティタン。


同じ問いをニコラに聞いてみる。


「……ミューズ様では?」


「は?」


ティタンが間の抜けた声を出した。


「いや、顔形がまるで違うだろ? 確かにオッドアイだが、目も鼻も、別人だ」


「他の者から根暗令嬢との噂や容姿が醜いとも言われている。ちなみに俺から見たミューズ嬢は、とても可愛らしい令嬢だった」


調書を見たときは頼んだ者の絵心がなかったか、仕事をサボったのかと考えていた。


悪意ある噂に踊らされたものかとも。


「女性に対して申し訳ないのですが、僕にはエリック様がおっしゃるようには、見えませんでした。ですのでエリック様のリップサービスかと……」


ニコラはもごもごと言葉を濁らす。


咎めるつもりはなかった。


「このどれかじゃないかと考えている」


エリックは普段着けている魔道具の類を机に置いた。


魔法を防ぐもの、無効化するもの、呪いを弾くもの、見抜くもの、防御壁を張るもの、などなど……多くの物を普段から身につけている。


不特定多数に会う場合は特に身に着ける数が多い。


あの場で警戒したのは魅了の魔法や暗殺だが、何かしらが作用した為に、ミューズの見え方に齟齬が生じたのではないかと、考えていた。


「呪いはこの国では馴染みのないものだから……違うか? それに、レナン達家族がきちんと見えてるのも気になる」


ひと通り同じものを着けて再び会ってみるしかないようだ。


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