第38話 答え合わせ 前編

 その後、ラインハルトたちに魔法袋を借りて、遺体を収納し、山を降りた。

 村に戻って報告したあと、冒険者ギルドに戻った。

 そこで謝礼を受け取った後、俺はギルドマスターへ何があったのかすべて話した。

 すると、遺体の埋葬などすべて任せてほしいと言われ、言葉に甘えた。

 ついでに、気絶したままのエールを預ける。


 念の為、ミーアにはエールの傍にいるようお願いした。


 エールが眠る部屋を出たところで、ラインハルトとビクターが話しかけてきた。


「この後が大変ですよ」


「つーか、どこ行くんだよ、お前?」


 俺はそれらに、こう返した。


「デート♡

 まぁ、正確にはこれから誘うんだけど。

 そんなわけだから、着いてくんなよ」


 俺の返答に、さすがに二人の目が点になった。


「は、はぁぁああ?!?!」


「何考えてるんですか!!

 こんな時に!!」


「まぁ、たしかに新聞だとすげぇ騒ぎだよなぁ。

 ディードとの一件。

 でも、だからこそ今しかないと思うし、誘うんだけどさ」


 ビクターが胸ぐらを掴もうとしてきた。

 それを、ヒラリと避ける。

 しかし、そこで何かに気づいたようだった。


「デートに刃物持ってくのかよ?」


 ビクターの視線は、布で包まれている相棒に注がれていた。


「んふふ」


 俺が笑顔で返した時、ギルドマスターがやってきた。

 そして、ラインハルトとビクターを牽制しつつ、


「あとでちゃんと報告に来い」


 そんな言葉を投げてきた。


「もちろん♡」


 そして、俺はデートに誘うため、意中の相手のもとへと向かったのだった。



 デートの誘いは、とても呆気なくOKされた。

 そのまま、夜の街へと繰り出す。

 そして、夜の繁華街特有の喧騒の中を歩きながら、俺はその人へ語り出した。


「誰がなんの依頼を受けていたのか、その情報が漏れていました。

 いいえ、もっと正確に言えば、魔族側へ漏らしていた人物がいた可能性が高いんです」


「…………」


「そうじゃないと、説明できない点がそれなりにありますから」


 俺は指をおって、説明できない点を羅列していく。


「たとえば、先代達が依頼を受け、行く先々で凶暴化した魔物に遭遇していた点。

 それこそ、どこにでも、百発百中で遭遇していた。

 おかしいですよね?

 俺は最初、そんな場所に行く依頼を選ばせていたんだと思いました。

 でも、ふと思ったんです。

 魔物の凶暴化は、本当に二年前がだったのかなって。

 二年前は、王国でも随一のクランが標的になっていた。

 だから、覚えている人もそれなりに居た。

 じゃあ、ほかのクランやパーティはどうだったのか?

 その前は??

 そう、三年前、四年前、五年前。

 なんなら、十年前は??」


 俺の言葉をデートの相手は黙って聞いている。


「そうして調べてみたら、あらびっくり。

 同様の報告が上がっていた。

 すなわち、凶暴化した魔物に高確率で遭遇するパーティや、クランがあったんです。

 でも、彼らは有名ではなかった。

 だから、記録には残っても、誰の記憶にも残ることはなかった。

 さて、ここで一つ疑問が出てきます。

 そんな凶暴化した魔物がいる場所に行かせるため、ピンポイントでそんな依頼を選ばせるなんて出来るんでしょうか?


 まぁ、出来なくはないとおもいますよ。

 何かいい依頼はないか?

 では、こちらはどうでしょう?

 そんな感じで勧めることは出来ます。

 でも百発百中で、行かせることはむずかしいでしょう。

 そして、どこかで勘づかれる可能性が高い。

 でも、もっと効率のいい方法がある。

 なんだとおもいます?」


 相手の反応を待った。

 しかし、とくに何もかえってこなかった。

 なので、俺は言葉を続けた。


「さっきも言ったように、標的であるパーティやクランの目的地を、魔族側に流すんですよ。

 実に単純な話です。

 これなら、情報を得た魔族側はその場所に向かうだけでいい。

 そうしてやってきた生贄を使って、新しく開発した魔物の実験台につかっていた。

 と、まぁこういうわけです。

 さて、ではそんな情報を流すことが出来たのは誰だったんでしょう??」


 俺はデート相手を見た。


「ねぇ、誰だと思います??

 受付さん??」

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