第10話 市長も卒煙、タバコフリー

 「陸前高田 医療で震災復興を」シリーズの第6回(2012年7月19日)では、「タバコフリー・イン・陸前高田」を紹介した。

 このチームは世界禁煙デー(5月31日)に発足したので、今回は、現在までの約5ヶ月間の活動報告をしよう。


     * * *


 第5回岩手県立病院総合学会が、9月1日に盛岡市で開催された。

 高田病院からは、応援医師3名とともに私も出かけ、「クィーンズクリニック」と「禁煙外来」について発表した。

 講演のラストスライドでは、「タバコフリー・イン・陸前高田」のマニフェストを掲げて、「タバコを吸わないことは個人のステイタス!タバコフリーは震災復興のパラダイム!」とアピール。


 マニフェストの発起人として、戸羽太(陸前高田市長)さんの名前がトップにある。

 そのいきさつは、8月7日の「うごく七夕まつり」の際に、マニフェストの原案を持って市長室を訪ねたところから始まる。

 喫煙者であることは知っていたので心配だったのだが、趣旨を説明すると「わかりました。震災からせっかく助かった命をタバコで無駄にしてはいけません。」と、快諾してくださった。


「でも、タバコを吸う人間が何を言っても始まりませんから。。。」と間をおいて、「私がタバコをやめるまで時間をください。」と続けた。


 どれくらい待たされるのかと心配したが、間もなく市長さんのフェィスブック上で卒煙宣言を発見した。

 禁煙外来で卒煙者に渡す表彰状を準備して、さっそく市長室で卒煙式を施行しました。


     * * *


「タバコフリー・イン・陸前高田」の具体的な活動としては、

ニコチン依存症患者に対する禁煙外来のほか、

タバコフリーハイスクール(高田高校)、

タバコフリーキッヅ(小学生・中学生)、

タバコフリーベィビー(妊婦)、

タバコフリー産業(漁業・農業・飲食業・観光・・・)などがあげられる。


 10月17・19・24日には、岩手県立高田高校の一年生5クラスを相手に、タバコフリーの授業をしてきた。

 授業前に「健康に関するアンケート」を実施して、喫煙や飲酒に関する意識調査を行った。

 このアンケートと同じ内容のものを、来年の3月にも同じクラスで実施して、意識の変化を比較する予定だ。


 授業の前に校長室を訪れ、挨拶がてら「タバコフリー・イン・陸前高田」のミッションを行う。

 工藤校長先生は名刺交換の後、「私は震災後にタバコが手に入らずやめていたのですが、友人から入手先を教えられて吸い出しました。」と語り始めた。


 校長室を去るとき、壁に掲げられた20名の生徒の遺影に向かって、「残念な出来事でしたが、この生徒たちの分まで立派に生きて欲しいです。」と黙礼した。



『タバコフリー・イン・陸前高田』のマニフェスト

https://kakuyomu.jp/users/hyakuenbunko/news/16817139558790428424



(陸奥新報 2012・11・15)

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