リオレス山地

 翌日、俺たちは馬車でリオレス山地に向かっていた。


 冒険者ギルドから、ハーピィ討伐の依頼を受けたのだ。

 ちなみに聖都のギルドだ。

 レイザールの街のギルドはこの時期あんまりいい依頼がないからな。


 冒険者ランクを上げて、Sランク冒険者しか入れない高難度ダンジョンに行く。

 そしてファラを治せるアイテムを手に入れる。

 そのためには日々の依頼をこなすことが大切だ。


「ところでパーティの名前はないの?」


 ルルがそんなことを聞いてきた。

 ……そういえば考えてなかった。


「リーダー、任せたわ」

「意義なし。ユークならできる」

「ええ……」


 サリアとルルに丸投げされた。そんなこと言われてもなあ。

 ふーむ。


「じゃあ……『夕暮れのあかり』とかどうだ?」


 冒険者としての活動を終えたあと、家に戻ったみんなで夕飯を囲んでのんびり過ごす。

 俺たちパーティのあるべき形はそういうものである気がする。


「いいんじゃない?」

「ん。ほのぼのする」


 二人とも特に異論はないようなので、俺たちはDランクパーティ『夕暮れの灯』を名乗ることにした。

 数日後、リオレス山地に着いたのでハーピィ狩りを行う。


『『『キェエエエエエエエエエエエッ!』』』

「【フィジカルブースト】【マジックブースト】」


 ルルが俺に身体強化を、サリアに魔力強化を神聖魔術で施す。

 よし、やるか。

 魔剣を起動。

 【見切り】を使ってハーピィが飛ばしてくる鋼鉄のような羽をかわし、【跳躍】で剣の届く距離まで跳ぶ。


 ザシュッ!


『ギィイ!?』


 一体倒した。

 うーむ、空中にいる相手だとやりにくいな。一体倒すのに手数がかかる。


「【フレアボム】!」

『『『ギャアアアアアアア!』』』


 あ、サリアが対空爆撃でハーピィたちを全滅させてしまった。

 近づいてこない相手にはサリアはめっぽう強いな。


「ナイスだ、サリア」

「ふふん」

「サリアかっこいい」


 俺はギルドカードを確認する。

 これは冒険者なら誰でも持っているもので、冒険者のデータが記載されている。

 これにステータスを転写することで、他の人には見えないはずのステータスウインドウの中身を伝えられたりもする。

 またギルドカードには倒した魔物の数を記録できる機能もある。

 ギルドカードを討伐したハーピィに近付けて記録。


 討伐数は……今のところ二十一体か。

 今回のノルマは十体なのですでにクリアしている。

 けれど多く倒せばそのぶんギルドに評価される。


「もう少し続けよう」

「わかったわ」

「ん」


 俺たちはさらに山の上を目指していく。


 山頂付近まで来たところで。


『ギィイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!』

『『『キェエエエエエエエエッ!』』』


 大量の同族を従えた、巨大なハーピィが出現した。


「ハーピィクイーン……どうりでハーピィの数が多すぎると思ったわ。ハーピィを統率する、Bランクパーティ以上にしか討伐依頼が出ない相手よ」


 サリアが解説してくれる。

 ここまで来たからにはこいつも倒して帰ろう。

 俺たちは武器を構える。


「【フィジカルブースト】【マジックブースト】」


 まずはルルの支援魔術が入る。


「【ファイアガトリング】!」


 サリアが炎の弾丸を連射して攻撃。

 サリアって本当に何種類魔術を持ってるんだろうか。

 しかしハーピィクイーンの統率によってハーピィたちが散らばり、なかなか数を減らせない。

 クイーンを倒さないと駄目だな。

 けどクイーンは配下の奥に引っ込んでいるのでなかなか狙えない。


 あ、そうだ。


「サリア、ハーピィたちの群れの上で爆発を起こせるか?」

「構わないけど……あ、そういうことね。いくわよ、【フレアボム】!」

『『『ギャアッ!』』』


 爆発が起き、ハーピィたちが地面に叩き落される。

 よし、こっちに来たな。


 ザシュッ! ズバッ! ジュウッ!


『『『ヒギャアアアアアアアアアアッ!?』』』


 まずは邪魔な通常ハーピィを片付ける。

 同じく落ちてきたクイーンが爪を振り上げてくる。


『キィアアアアアアアアアアアアアアア!!』

「遅い!」


 ザンッ!


 魔剣でハーピィクイーンを両断し、戦闘は終わった。

 群れを統率するハーピィクイーンもいなくなったことだし、これでリオレス山地にも平和が戻るだろう。


 依頼達成だな。

 さて、ここまで登ったのにあっさり降りてしまうのももったいない。


「せっかくだし、山頂で弁当を食べないか?」

「賛成!」

「お弁当……!」


 ギルドカードでハーピィたちの討伐記録を取ってから山頂に行く流れになった。

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