第4話 説得

 駿と由宇は昼食をとると分遣隊事務室で事の顛末を二人に話した。

「私はやりたいな。もちろん無理な作戦じゃなければだけどね」

 ちょっと意外な感じがしたが瑠璃はあっさりと賛成してくれた。

 残る紫苑に視線が集まった。それでも彼女は無言のままだった。

「賞詞とか貰えるかもしれませんよ」

 瑠璃も説得に回ると紫苑はようやく口を開いた。

「別に反対って訳じゃないよ。ただ何となく気に入らないだけ」

「何が気に入らないんだ」

 そう問いただすと紫苑は視線だけ駿に向けた。

「何がって言われてもね。敢えて言えば一番ヘボのあんたが、何勝手なこと言ってるのか、ってことかな」

 駿は吐いたり震えたりしているヘタレよりマシだろと思ったが、口に出すことは控えた。口にしたら話は建設的な方向に行かないことは間違いない。

「ごめんなさい。私がいけないんです」

「いいよ。別にユウのためにやる作戦じゃないだろ」

「二人に相談しなかったことは悪かったと思ってる。だけど有意義な作戦であることは間違いないし、俺たち以外がやるとしたら結構大きな規模の作戦になっちまう」

「別に作戦に反対している訳じゃないって言ってるだろ。ユウの知っている人だって事も関係ない。もういいよ。大体私が反対したところで作戦が中止になる訳でもないだろ」

 紫苑は両手を挙げてもうこの話は終わりにしようとアピールしていた。単に自分が蚊帳の外だったことが気に入らないだけかもしれない。

 由宇はまだ不安げな顔をしていた。自分のわがままに巻き込んだなんて考えているのかもしれないが、中隊長が情にほだされて決断したはずもなかった。

「じゃあ話がまとまったことだし、今出来ることから始めましょう」

 瑠璃はそう言ってキーボードを叩き始めた。

「作戦の概要どころか目的しか知らないのに、何ができるって言うんだ?」

 駿が問いかけると瑠璃は満足げな顔でモニターを回して見せた。

「その王3佐の人事資料です。これを見て後はユウに話を聞くくらいですかね」

 駿は眉根にしわを寄せて言う。

「こんなモン見ていいのか。規則違反じゃないのか?」

「いいんですよ。見えたんだから」

 瑠璃は歯牙にもかけていないという様子だった。

「どの道、後で見せられるだろ」

 紫苑がそう言ってモニターをのぞき込む。

 駿は由宇と顔を見合わせた。

「それもそうだな」

 駿はモニターに映る少し神経質そうな顔写真を脳裏に焼き付けた。

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