うちのばーちゃん、ただのばーちゃんだけどなんかすごいから自慢したい

ゆる先生

第1話 うちのばーちゃん

 うちのばーちゃんは、どこにでもいる農家のばーちゃん。

 代々農家だったじーちゃんと結婚して、農家の嫁として家事をやりつつ畑仕事もして、85歳を過ぎてもまだ頑張っている。直売所に出す野菜を朝早くから収穫して、きれいに整えて包装するのも一人でやっている。


 じーちゃんも昔はトラクターを乗り回して田んぼや畑を耕していたけど、ケガをしてからはもっぱら監督。今では脚の自由がきかなくなってきていて、畑仕事はばーちゃんに任せているし、日常生活でさえ時折ばーちゃんに手伝ってもらっている。


 なんでもかんでも一人でこなすばーちゃん。自分ならご飯作るのもめんどくさいし、掃除も洗濯も最小限にしたいし、ましてや畑仕事は耕すにしろ収穫にしろ、全身運動だし天気で思い通りにいかないし、できることならやりたくないと思うことを、全部一人でやっている。それを文句も言わず60年以上も続けている。今の自分の人生2回分も続けている。


 ばーちゃんの両親は、ばーちゃんが小さい頃に他界してしまったらしい。親戚中をたらい回しにされて大変な思いをしたと聞いている。本人曰く、そのときの辛い経験に比べたら、家事も畑仕事もほとんど一人でやらなきゃいけなかろうが、今の方がよっぽど幸せなんだって。


ばーちゃんは自分が15歳のときに、直売所に原付で野菜を運ぶ最中、トラックと衝突する交通事故にあった。前歯は折れて顔は傷だらけ、膀胱破裂の意識不明で、左足のすねの半分から下を切断した。事故の日から3週間以上も目をさまさなかった。目覚めてからしばらくは記憶がないらしいのだが、頭がはっきりし始めてからは意識不明だったのが嘘のようにリハビリに励み、担当したお医者さんがびっくりするほどの回復を見せた。左足は義足になったが、それでも自分よりもよっぽど畝を作る手際が良いので、やっぱりうちのばーちゃんはすごいと思う。

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