最終話 些細な事

 ——昨晩、モコにプロポーズされた。……起きてから何回も腕を抓ってるけど、夢じゃないみたい。

 

 驚くくらいいつも通り朝ごはんを食べて、お店に出た。

 

 ちょっと違うのはモコも一緒に出ている事。

 

 なんとなく、話す言葉が見つからなくて無駄に色んなものの位置とか角度を整えてたらモコが口を開いた。

 

「店の名前どうする?」

 

「え? えっとー……今まで通りで良いと思うよ」


「でももうほら、その……もうさかきじゃなくなる、し」

 

 そう言って髪を撫でるモコの顔がちょっとだけ赤い。

 

「そうかもしれないけど、でも、ほら……榊 望心さかき もこがここに居たって証になるでしょ」

 

「別にそんなの要らないんだけどな……」

 

「僕達が出会えたのは榊 望心が居たからだよ」

 

「そんなもん……?」

 

「うん」

 

 本当に榊 望心が居た証が要らないんだったら、最初から揺るがないモコ榊 望心が居る証なんて作らないと思うんだ。

 

 無かったことにはしてほしくない。

 

「私自身がここに居るんだし、過去なんてでしょ」

 

「それは確かに……そんな気もする」

 

「ダイヤは意見が揺るぎすぎ」

 

 モコが笑ってる。そっか、今も昔もこれからも、モコはずっと可愛いんだから。名前なんて些細な事か!

 

「モコが好きって事だけは変わらないから!」

 

「変わったら許さないから」

 

「うん!」

 

 こんな幸せがあっていいのかな。

 

 この世界に来るまでは全く想像した事も無かったよ、僕が好きな子と隣で笑い合えるなんて。

 

 好きな子と幸せになるって、誓うよ。

 

 ねぇ、神様……!

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【完結済】異世界転移したら行方不明だった好きな子と暮らすことになっちゃった……!? 雨車 風璃-うるま かざり- @soutomesizuku

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