静かなホールに花咲かせ
鈴音
1年目
皆さんは、合唱をやったことがあるだろうか。多くの人は中学校の音楽の授業や合唱コン、卒業式などにやったことがあるだろう。
しかし、合唱は存外地味と言うか、あまり
しかし、合唱部はそんな事を気にしない。する暇がない。
これからお話するのは、ともすれば最も泥臭く、暑いスポコンの話だ。
私が合唱部の門戸を開いた時、耳に飛び込んできたのは重厚で優しい声だった。部員は総勢24名、それを3でそれぞれ割っているので各パート8人。それなのに、廊下の向こうまで響くほどの声。何より、たった3人しかいないのでは、と思ってしまうほどに揃った歌声に驚かされた。
そして、私はてっきり男がいるものだと思ってたのに、蓋を開ければいるのは女子のみ。入れば、男子は私1人だけだ。
が、部員はみんな優しかった。男の私も受け入れてくれた。そこから、合唱部の過酷で凄まじい洗礼を受けることになる。
まず新入生に求められたのは、良い声ではなく響く声と、周りに合わせる声。合唱をする上で、個性など無駄でしかないのだ。
私は地声が元より高く、低い声が出にくかったので無理を承知でソプラノに行かせてもらった。が、これが破滅の始まりだった。
平日の合唱部の練習は、まず筋トレから始まる。といっても回数は少ない。内容は腹筋、背筋、側筋、プランク、スクワット。男とは言えもやしっ子なのでとても辛い。
その次に発声と体幹練習。独特なリズムや歌詞に合わせて音階が上がっていく。体幹は、中腰の状態や背中に物を載せて行う。全身に力が入り、全然声が出ない。泣く子や、倒れて頭を打った子もいた。
ちなみに休日の練習では、校内をランニングする。肺活量を鍛え、体力をつけるために。
そしてパート練習。少しづつ、わからないところを潰しながら練習していく。ちなみに、進み具合はパートによって変わるので合わせ練習の時に地獄を見るパートや、休んだ人はその分遅れていくので酷い目にあう。
これが、基本的な練習。地味に見えるが、長時間立ちっぱの声を出しっぱなので普通に疲れるし筋肉痛にもなる。喉も傷める。のど飴はもはやエリクサー。
そうして、私たちは夏のコンクールに向けて、どんどん練習をしていく。ではここから、どんな練習があるかと、実際に私が体験した思い出したくない思い出の話をしよう。
まず声変わりだ。私は男なので、もちろん声は…低くならなかった。めっちゃ高いまま。しかもソプラノがとっても余裕。が、声変わりの期間中はとにかく喉が痛いし咳が止まらないので、苦しみながらの練習になった。
次にホール練習。本番を想定し、ホールで通しの練習や入退場の練習をする。が、私たちが1年の時に実際にあった地獄が、せっかくのホール練習を全て歩く練習に費やしたのだ。みんな泣きながら、怒られながらひたすら綺麗な歩き方を求め練習した。辛かった。
また、私たちはコンクール前にも人前で歌う機会が多い。まず部活動壮行会。私たちは何何というコンクールに出て…と、全校生徒に説明し、応援を求める。が、その時期は全く基礎ができておらず、しかも人前に出ると凄まじく緊張する頃だったので、声が出ない。みんな歌えない。あの空気は、本当に辛かった。
他には、課題曲の練習会。コンクールに参加する学校が集まり、課題曲について勉強したりみんなで練習をする。私はただ真面目に話を聞いているだけなのに、私に質問を振って恥をかかせたあの先生は今でも許せない。
夏休みに入れば、部室である音楽室に、アルミ製のひな壇を用意する。卒業式などで体育館のステージに置くような、あれだ。あれを運ぶのだが、音楽室は学校の最上階の左端。に対し、ひな壇のある用具室は1回の右端。拷問か?
また、近所の祭りにも参加する。公園のステージで、歌を披露する。もちろん、学校のクラスメイトなどもいる。公開処刑だ。
そんなこんなを繰り返し、8月にようやくコンクールだ。意気揚々と会場に到着すると、緊張で震え始める。ステージ裏に着くと、寒くなった。そして、ステージに上がると、スポットライトに当てられ、全身が真っ赤になるほど暑くなった。会場の冷房はバッチリなのに。
そこからはもう、記憶が無い。気づけば観客席の、自分の席で次の学校の発表を見ていた。
が、その後は楽しかった。全校の発表が終わると、審査待ちの時間は祭りになった。ピアノを弾ける人がステージにあがり、弾き始める。すると指揮者も現れ、ステージに全校の3年や2年が集まり始める。そして、会場全体で大合唱を始めるのだ。これがとても楽しい。
そして最後に、賞が発表され、写真を撮り長い1日は終わる。ちなみに1年目は銀賞だった。
この後も、秋のコンクールなどもあったが、この年は特筆すべきことがない。2年目で、色々変わったことや、秋のコンクールで大挙を達成したので、またその機会に。
静かなホールに花咲かせ 鈴音 @mesolem
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