第8話ナイスなカレー

(今夜は無性にカレーが食べたい!) 


テレビをつけた時に、無性カレーのCMがやっていて、それを目にした瞬間、私は、カレーがものすごく食べたくなった。


今の私の舌は、カレー以外受け付けない!


早速、冷蔵庫を開けてみる。


「なに!玉ねぎがない!それに、「多分北欧で食べると超絶に美味しいカレーの元!たぶん!」がない!あれは、ほかのカレー粉と違ってスパイシーさが強くて、刺激が強いのに美味しい!あれじゃないと今の私は満足できない!」


マイバックを持って、向かうは。


ブオオオ!!!


私の中で武士が戦前に指揮を高めるために吹く、ほうらがいの笛の音がなる。


味方の指揮は、上々!


いざ!参ろうぞ!スーパー「高木」へ


マンションを出て、勇ましい足取りでスーパー「高木」へと向かう。


ブルっと体が震えた。


「ふっ!これが武者震いというものか。だが、私は何があってもスパイシーカレーを食べる!」


そして、ミッションは筒がなく無事に終了した。


その帰り道、学校帰りのクラスメートにあった。


「長谷川さん」


その人物は上山萌という人物。


私と同じくクラスメート達から悪口を言われたりしている人物。本人が何かをしたわけではなく、上山さんは可愛く、男子から人気がある。


それを妬んだ、村上梅というクラスのボスが妬み、いじめるようになった。


最初は、庇っていた男子達も自分達が遠巻きに悪口を言われるようになると、1人、また1人と上山さんから離れていき、上山さんは1人になった。


そのおとなしい性格も相まって、今では、みんなのストレスの吐口へとなっていた。


(どうしよう。私と同じ扱いを受ける上山さんでもクラスメートはやっぱり苦手。正直、あまり話したりとかしたくない。でも、ここは、当たり障りのないようにしよう)


クラスメートにあった瞬間、それまでは勇ましかった武士(もののふ)も村人Aへとなりを潜めてしまう。


「こんにちは」

「こ、こんにちは」


上山さんも人が苦手なようで、戸惑うように返事をしていた。


「……」

「……」


お互いに挨拶をすると特に話すこともないので無言である。


初めに口火を切ったのは私の方だった。


「じゃあ、晩御飯の支度があるから帰るね」

「あ、はい」


上山さんの横を通り過ぎる。


(あぁ。緊張したぁ。さーて、帰ってカレーを作ろう)


私がマンションへと急いで帰ろうとした時、


「結衣」


と声をかけられた。


「げっ……」


その人物は、中学時代に夜遊びをしていた頃に連んでいた不良連中だった。


「高校に入った途端に、付き合いが悪いじゃねえかよ」

「そうだぜ。何度も呼び出してやったじゃねえかよ」

「人として無視は良くないぜ」

「そうだぜ。お前は、俺たちの大切な財布なんだからよ」



***************



私は、学校が終わり帰宅している途中で珍しい人物と出くわした。


クラスメートの長谷川結衣さん。


本当に珍しい。学校で週に2回見かけるくらいで話したこともない。


唯一の共通点は、商店街の駄菓子屋のお婆ちゃんと仲がいいということくらい……あ、あとは、同じいじめられているということくらいか。


そんな見かけたことはあるが、話しかけたことがない人物を目の前にして、私はどう話しかけたらよいか分からずにいたら、向こうから話しかけてきた。


「こんにちは」


声すら聞いたことがなかったから、予想外の可愛い声に少し驚いた。


「こ、こんにちは」


さらに、人が苦手ということもあり言葉が詰まってしまう。


(「こ」で噛んじゃった!すごく恥ずかしい!)


「……」

「……」


私がもじもじしていると、長谷川さんもどう話したら良いのか分からずお互いに無言が続いた。


(うぅ。話すってどうやるんだっけ。口ってどう動かすんだっけ!)


「じゃあ、夕食の支度があるから帰るね」


(ユウショクノシタクガアルカラカエル?……あっ!夕食の支度があるから帰る!だ。)


「あ、はい」


そう言うと、長谷川さんは私の横を走って通り過ぎていく。


(うわあ。噂で月のお小遣いが1億とか聞いたことあるから外食ばかりなのかと思っていたけど、意外と料理したりとかするんだなぁ。声も可愛かったなぁ〜)


遠ざかっていく長谷川さんの背中を眺める。


すると、買い物袋から何かが落ちた。


だが、長谷川さんは気づかずそのまま走って行ってしまった。


(届けなくちゃ)


私は、長谷川さんが落としたものを拾い、後を追いかけた。


(あれ?確かにこっちに走って行ったはずなのに)


結局、追いつくことはできなかった。


(どうしよう?おばあちゃんに聞けば、住んでいるところ教えてくれるかな?)


私は、カレー粉を届けるために、唯一の共通点であるおばあちゃんに住んでいるところを教えてもらうために、商店街へと向うことにした。


(うわぁ。このカレー!私の大好きなやつだ!長谷川さんも好きなのかな?今日は長谷川さんの意外なところがいっぱい見れたな。声も可愛かったし、近寄りがたかった印象だけど、なんだか親近感を感じたな)


商店街まで半分の距離である目印のミラーを曲がると、長谷川さんが柄の悪そうな男4人組に路地裏で囲まれていた。


夕方の時間帯は、大通りが混むため駅へ抜ける近道として知っている人は通る道だが、利用率は少ない。


特に夕方5時なので、人が通るのはこれからだ。


(どうしよう!警察?でも、間に合うわけないか……そうだ!顔の広いおばあちゃんならすぐに人を集めて助けてくれるかもしれない!)


私は慌てておばあちゃんの元へ走る。


(どうか!間に合って!)


走ること5分。おばあちゃんのお店の前に着いた。


お店の前には、看板を閉まって店じまいをする男性がいた。


(確か、先週からおばあちゃんのお店を手伝っている透さん?だっけ)


私は、とりあえず透さんにおばあちゃんがいるか聞いてみることにした。


「透さん!おばあちゃんはいますか?」


透さんは、最初誰かわからない様子だったが、


「この前、ゲーム制作で意気投合した酔っ払いの女の横にいた妹です!」


と、慌てていたので少し乱暴な言い方になってしまったが、


「ああ!あの時の幸薄そうな娘か!」


(すごい嫌な覚えられ方してる……ってそんなことよりも)


「そうです!それが私です!あの!おばあちゃんはいますか?」

「ばあちゃんは生憎と古馴染みとカフェへと出かけてしまっていないぞ?」


(ばあちゃんがいないなら、どうしたら……)


頼みの綱のばあちゃんがいないと知り、あわあわして混乱してしまう私。


そんな私を見た透さんは、


「そんなに慌ててどうしたのだ?何かあったのか?」


と、聞いてきた。


他に頼る人がいないと思い、


「さっき、長谷川結衣さんという私のクラスメートがこの商店街に来る途中で柄の悪そうな男達に絡まれているのを見たんです。それで、長谷川さんと仲の良くて、顔の広いおばあちゃんに相談したら人を集めて助けに行ってくれると思ったので、慌ててここにきたんです!」


口早に話してしまってうまく伝わったかわからなかったが、私の話を聞いた透さんの顔は歪んでいた。


「どこだ!結衣はどこにいる!案内しろ!」


私の両腕を握り、体を揺さぶり聞いてきた。


「わ、わかりました!こっちです!」


私と透さんは急いで長谷川さんの元へと向かった。



******************



「結衣……」


おのれ!俺の恩人に手を出そうとは!後悔させてやる!生まれてきたことを!


俺は、初めてできた飲み友である萌音の妹に案内してもらい、件の場所へとついた。


だが、すでに結衣はおらず、結衣が持っていたと思われる荷物が散乱するように落ちていた。


「くそ!遅かったか!だが、まだ遠くへは行っていないはずだ!」


俺は、探査魔法を展開する。


「……む!この気配は間違い無いな!やはりそんなに遠くまでは行っていなかったようだ」


現場から200m程離れたところに結衣の気配を感じた。


結衣を見つけた俺は、すぐに転移魔法を使い、気配の近くに飛ぶ。


景色が変わると、柄の悪そうな男達は、結衣の口を塞いで結衣へと一方的に汚い言葉を浴びせていた。


「お前は、親に捨てられて、周りからもウザがられて、なんのために生まれてきたんだろうな?」

「生きてるだけで迷惑とか!ウケるわ!かわいそうwww」

「そんなお前が唯一できるいいことはな、俺たちに金を渡すことだけだ」

「そうだぜ。お前の存在価値なんて他人に金を渡すくらいのものだぞ?それ以外に生きてる価値なんてないんだぞ?」


そんなことを結衣に言っていた。


それを聞いた俺が思ったことはただ一つ


(殺す……)


ここまで何かに殺意を覚えたのは初めてだった。


「おい…」


俺は、結衣の口を塞いでいた太った男に声をかけ、


「へぶっ!」


その顔を1発殴った。


それだけで男の顔は原型を止めないほどにぐちゃぐちゃになった。


「ひゅーひゅー」


かろうじて息はしていた。


それを見た他の男達は、


「「「……」」」


倒れた仲間のことをじっと見つめていた。


「おい」


俺が話しかけると、男達はビクッとして結衣から離れた。


それを確認した俺は、結衣へと駆け寄る。


「大丈夫か?」


俺と声をかけると


「トール……」


俺の胸に抱きつき泣き始めてしまった。


「やっぱり私って生きてるだけで迷惑なのかな?だから、お母さんもでてっちゃったのかな?お父さんもたまにメールはよこすけど、一度も会いにきてくれない!周りからは普通にしてるだけで、財閥の娘ってだけで悪口言われたりする。私って生きてちゃいけないのかな?」


これまで心の奥に抱えてきたのだろうか。


結衣の涙と心の悲鳴は止まることがなかった。


「私死んだほうが良いのかな?」

「そんなことはないぞ。他のやつのことは知らんが、少なくとも俺にとって結衣は、ずっと1人で、空虚だった俺の世界を鮮やかに塗り替えてくれた恩人だ。俺は、生まれて初めて自分のことが好きになれた。やりたいと思うことも見つかった。お前と出会えたことで、神に捨てられたことでさえ今では感謝している。俺は、お前と出会えて本当によかった。お前と過ごす時間は、時の流れが早くあっという間に過ぎてしまうから、もっとこの時間が続けばいいといつも思う。お前は、俺にとってかけがえのない存在だ!結衣のいない日々なんて考えられないぞ?」


俺が結衣に対する想いを伝えると


「うぅ!ありがとう!」


いつもの結衣の笑顔が見れて安心した俺は、


「そこで少し待っていてくれるか?すぐに終わる」


腰を抜かして逃げられなくなっている残りの不良達のところへと向かい、1人1人体に教え込んでいく。


「よし!魔王的3/4殺しだ!安心しろ!全員1/4殺しの状態までは回復魔法をかけてやる」


意識を取り戻した不良達はなんとか仲間同士で支え合い立ち上がる。


「いいか?今度同じことをしようとしたら3/4殺し、回復、3/4殺し、回復と延々に終わらない痛みをお前達に体験させるからな?覚悟しておけよ?特にリーダー格のお前は、まだ反抗的な目をしているな。少し調教してやる。」


俺は男の顔面に致死率65%くらいの威力のファイアアローを突き刺して、回復、また突き刺して、回復を60回続けた。


調教が終わると、俺の言うことをなんでも聞く犬が出来上がった。


「よし!派手髪ポチ!用はないから、そのまま走って帰れ!」

「あん!はっはっはっ!」


男は四足歩行のまま何処かへと消えて行った。


他の奴らは、調教を見ていたら、いきなり倒れるように眠りだしたので、新聞紙をかけて、そのままにしてきた。


「あ、このあと雨の予報だった……まあ、いいか。結衣。立てるか?」

「無理。おんぶして!」

「どうした?さっきからそっぽを向いて。まあ良いがな」


(しょうがないでしょ!トールがドキッとさせることを言うんだから!顔なんてまともに見れる気がしない……)


私は、トールに背負ってもらい絡まれた場所へと戻った。


その間、心臓の鼓動が激しくなっていたので、トールにドキドキしていることが伝わりませんようと切に願った。


(結衣が無事で何よりだ。それより、先ほどから結衣の胸の鼓動が高いような気がする。何か、乱暴でもされたのか?もう一回3/4殺しの刑に処してきた方がいいか?)


「あ!透さん!急に消えるからびっくりしましたよ!」


俺を案内してくれた萌音の妹が袋に散らばっていた荷物を入れてくれていた。


「うむ。すまんな。慌てていたもので忘れていた」

「まあ、長谷川さんが無事で良かったです」

「トール。そういえば、なんで私が連れ去られたことわかったの?」

「その娘が駄菓子屋にきて教えてくれたからだ。娘。結衣が無事だったのは、お前のおかげだ。礼を言う。ありがとう」

「そうだったの……上山さん。本当にありがとう。あなたのおかげで助かったわ」


礼を述べる。


「そ、そ、そんな大したことしてないですよ!」


娘は、顔を赤く染める。


「荷物も拾ってくれて助かる。俺は、このまま結衣をマンションに送ってくるからすまんが、店の方をお願いしても良いか?」

「あ!はい!任せてください!」

「すまんな。では、礼はまた今度する」


娘から荷物を受け取り、マンションへと帰った。

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