第2話 海辺の文学館

 私は文学館へと訪れた。

 そして、菊池寛先生の書いた短編の展示を見た。


「うわぁ……! 凄い!」

 原稿用紙数枚程度の長さの短編小説だった。

 だが、やはり簡潔明瞭、読みやすく理解しやすい内容に、私はやはり感激し、感嘆した。

「……いつになれば、こんなに簡潔明瞭、読みやすく理解しやすくて、内容の濃い小説が書けるようになるのかな?」

 私はしばらく展示の前から動けなくなった。


 他にも、志賀直哉先生のハガキや、菊池寛先生と同じく新思潮の山本有三先生の短編小説なども展示されていた。

 展示に目が釘付けになった。


 山本有三先生の文学館には、一度行ったことがあった。

 山本有三先生の作品……、『路傍の石』や『真実一路』も中々感慨深い作品であったことを思い出す。


 また、志賀直哉先生の『城の崎にて』のリアリティも忘れてはいけない。

 私はきっかけこそ菊池寛先生の本に感化されたような物だが、リアリティのある小説を書きたい、と感じたのは『城の崎にて』もきっかけの一つだからだ。


 まだまだ自分の遠く及ばないという気持ちと未熟さに、ちょっと嬉しく思った。

 なぜ嬉しい?

 遠く及ばないのに?

 未熟なのに?

 そう思われても無理はない。


 未熟さとは、つまり伸び代がある、と私は考えている。

 まだまだ伸びる可能性大、そう思ったからこそ、私は嬉しく思った。


 展示から離れ、目の前の海を眺めた。

 やはり、海は広大だ。

 青緑色の海を眺め、今の私は何を書きたい?

 自分に問いかけた。


 すぐには返事などできない。

 なぜなのか?

 答えは一つ、模索中だからだ。


 私は文学館に戻り、あることをした。


『3年後の自分へ』の課題にしたのである。

 3年後の自分なんてどうなっているかもわからないのに、である。


 しかし、やはり自分だ。

 極めたい、やりきりたい、そう思ったらまっすぐ突っ切ろうとするのである。

 未来の自分に夢を託し、私は今の自分への課題を考えることとした。


 穏やかな日の磯風のように

 私の心は穏やかだが確実に前に進んでいた。



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