第14話 烈火


 少年はこの暗い道標を探っている。


 もう、光がある先には戻れないのだ。


 かつての己を葬ることは絶対的な神といわれた虚ろな死神を己の底につくることなのだ。


 少年にはこの善と悪のもどかしさがわからない。


 もう幼い頃には戻れないのだ。


 なぜ、生まれてきたのか。


 なぜ、この身が朽ち果ててもスクールと名づけられた聖地では何も自分のことをわかってくれないのか。


 



 もうこの身は朽ちて終わったのだ。


 ――闇よ、闇よ、帰れ。


 この身が磔刑となってもこの思いは変わるまい。


 少年がそんな奇妙な手紙を残してから、数ヶ月が経つ。


 彼がこの世のどこかで息を潜めているかは全くもって検討がつかない。


 きっと彼は煉獄を味わっているだろう。


 これは客観的な事実に基づいた報告書である。


 


 


 何かお分かりいただいただろうか。


 この薄気味悪い手紙を残した少年は精神を病んでいた。


 だが、彼は不思議なことに涙ひとつも流さず受け答えをしていた。


 それはともかくその時の少年の様子についてわかりやすく説明しよう。


 


 この奇妙な手紙と冷めた態度から筆者はこう分析する。


 少年には人から呼ばれる名前もなかった。


 仮にあったとしても本人が自らその名前を認める気もなかっただろう。


 究極のところ、こういった闇に常に佇む少年には救いの手はないのだ。


 誰か少年に救いの手を差し伸べる人はいないだろうか。


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