美大の女子大生のアトリエがファンタジーなのは秘密です。

健野屋文乃(たけのやふみの)

黒幕は黒猫Ⅰ

黒猫にじっと見つめられているが、客人のわたしとは慣れ合う気はないようだ。


画商の類君は、ボロアパートの管理人もしている。

わたしは、その管理人室をアトリエとして使わしてもらっている。


ボロアパートで家賃は安いのに、住人は誰も居ないと言う絶望下だ。

高校を卒業した後に画商を始めた類君は、まだ底辺画商だと言うのに。



さて今日は類君の寝室に進入してみよう!


類くんは、わたしの朝食を買いにパン屋にいっているのだ。


寝室に入ろうとすると、黒猫がついてきた。


「うちの類の部屋に勝手に入るなや!」


とでも言いたそうな顔していた。

どうもこの黒猫、わたしをライバル視しているらしい。


「類くんを取りはしないよ」

わたしの声に、黒猫はそっぽを向いた。


類くんの寝室は質素な部屋だった。

十代の男子の部屋らしさは、あまりなかった。


書棚にはイラスト集がたくさん並んでいた。

その中には漫画家のイラスト集もあるのだが、漫画自体はなかった。

漫画家のファンには、原作派やアニメ派があるがイラスト集派もいるらしい。


どんだけ絵がすきやねん。


ギャタ。

ボロアパートの壊れかけの門を開ける音が聞こえた。


もう帰ってきやがった。さて寝たふりをして待つとしよう。



次回『ぼくは底辺画商』へ つづく


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