第7話過去4


 後日――



 多額の慰謝料は王太子領を手放す事で話はまとまった。王太子領を手放す理由はサリーの慰謝料も私が肩代わりしたからだ。「貧乏な男爵家では支払えません」と恋人に泣きつかれたら仕方がない。


 しかし何故「爵位」まで……。

 我が国で女性は爵位を授与する事が出来ない。だが、セーラに渡す慰謝料の中に「爵位」が含まれている。そのために法律を変えて女性でも「爵位授与」が出来るよう改正した。




「何故そこまでするのですか? 過剰すぎます」


 疑問に思った。

 婚約解消の慰謝料だ。法律を改正してまでやる事だろうか? 

 その説明は父上からされた。


 

「そなたの事だから、たかが婚約破棄に大袈裟だと思っている事だろう。だがな、セーラ嬢は妃教育を早々に修了して公務にも度々参加していた。その上、半年前に結納式を終えている状態だ。ああ、何も言うな。そなたはで参加していなかったからな。覚えていないのも無理ない。何にせよ、結納式と婚姻契約の最終確認が済んでいるのだ。通常の婚約解消とは訳が違う。をしているのだ。実質的な夫婦として神殿にも認められている。それを、取り止めるという事は離縁するも同然の行為だ」


「それは……」


「マクシミリアン、そなたは過剰というが、セーラ嬢は8年間王太子の婚約者であった。諸外国でも彼女が次の王妃だと知れ渡っている。歴代の中で最も優秀な王妃になるだろうと絶賛されてきた。セーラ嬢が将来の王妃になる事を見越して条約を交わした国もある位だ。その彼女を廃して別の女性を妃にするという事は諸外国の信頼を裏切る行為に等しい。ここでセーラ嬢に対して何も保証しないとなれば、王家だけでなく国そのものが信頼されなくなるんだ」



 納得出来ない。

 それでも無理やり納得するしかなかった。

 



 

 セーラは王太子妃になる代わりとして「辺境伯爵位」を授与された。


 嘗ての王太子領を領地にして――


 




 

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