第6話過去3

「学園側から抗議文を貰った家の中には、跡取りから外した処もある。領地に蟄居閉門させた家もあれば、家督相続を永久放棄させられた者もいる」


「え……?」


「各家からすれば格上の侯爵家から正式に訴えられる前に処罰したのだろう。その方が傷も浅く済む。何しろ、彼らが中傷していたのはセーラ嬢だけではないからな。早い家では既に告訴した処もある。どうなったと思う? 訴えられて元学生の中には牢屋に入れられた者もいるぞ。牢屋に入れられた者の中に、ソル男爵子息がいるが、彼は『自分は王太子殿下の親友だ。こんな事をしてタダで済むと思っているのか』と言っていたそうだ。心当たりあるか?」


「……学園では幅広く交流していましたが……」


「記憶にないか?」


「……はい」


「虎の威を借りる狐、もしくは、獅子身中の虫といった輩だろう。そういう連中もいるので注意するように言っていたのだが……無駄だったか」


「申し訳ありません」


「これで下位貴族は益々高位貴族に頭が上がらなくなった」


 父上に返す言葉がみつからない。

 これは後から知った事だが、私の本当の友人も何人かが牢屋に入れられていた。友人の実家が多額の慰謝料と謝罪行脚を繰り返して漸く相手側からの告訴を取り下げて貰っていた。知らなかった。 サリーとの結婚に頭が一杯で彼らの身に起きた事を今の今まで知らないでいた。

 

 

「ショックを受けているが、そなたも他人事ではないぞ」


「はっ!?」


「オルヴィス侯爵家から謝料を請求されているだろう」

 

 そうだった。

 私も他人事ではない。


「示談には出来んぞ」


「何故です!」


「当たり前だろう。セーラ嬢には何の落ち度もない。そなたの勝手極まりない理由で婚約が解消されるのだ。オルヴィス侯爵家はそなたから受けた精神的苦痛に対する慰謝料込みで請求してきているのだ」


 私への請求は仕方ない。

 父上にも言われた通り分が悪い。せめてサリーの慰謝料だけ免除してもらおうと話し合いの場を持とうとしたら、父上から待った掛かった。


「恥の上塗りをするな」


 強い口調で言われた。

 



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