第3話王太子妃の癇癪

 

「サリー! いい加減にしてくれ! 茶会を催したいと言ったのは君だ。なのに客を放り出してどうするんだ!」


「だって……こんな……酷いじゃない。招待したのに来てくれないなんて……」


「茶会に主席するしないは各家が決める事だ。欠席理由もちゃんと書いてあったんだろう?」


「ええ! どれも当たり障りない理由だわ! あんなので納得する訳ないでしょう!」


「何が不満なんだ? 正当な理由だったじゃないか」


「正当!? 領地に行くからとか、その日は誕生パーティーだとか、家の祝い日とか、何なの? 当てこすりも良い処よ! が影で示し合わせたんだわ。皆で茶会に出ないようにしたのよ。私とシェリルをバカにして笑っているんだわ!」


「セーラはしないさ……そんな愚かな事は」


「どうしてあの女を庇うの! まるで私なら愚かなマネをするとでも言いたそうね!」


「そうじゃない!!」


「じゃあ何!? 何だと言うの!」


「『ティレーヌ王国の薔薇』と称えられるセーラ・コードウェル公爵夫人を慕う女性は国内外に多いという事だ。彼女に憧れている令嬢も数多いるんだ」


「だから何!」


「そんな彼女を侮辱した僕を嫌悪する高位貴族は多いという事だ」


「~~~~~~っ……」



 妻のサリーは目に涙を溜めて睨みつけてくる。まるで子供のような態度に溜息がでる。

 私と妻、そしてセーラ・コードウェル公爵夫人の確執は学生時代から始まっている。

 いや、確執というのは少し違うな。妻のサリーがセーラに対して一方的にライバル心を抱いているに過ぎない。


 私たち3人は同じ歳。

 そして同じ王立学園に通っていた。



 現在、コードウェル公爵の妻になっているセーラは元々、私の婚約者だった。

 彼女は侯爵家の令嬢で、幼い頃から王太子である私と婚約をしていた。高名な外交官である侯爵夫妻の幅広い人脈を王家に取り込みたいという狙いがあったらしい。

 私とセーラの相性も悪くなかった。お互いに読書好きでクラシックを好み、諸外国の文化に興味を持つといった接点があった。


 しかし、私は王立学園で一人の少女と恋に落ちた。


 サリー・レリーク男爵令嬢。


 今の妻と恋仲になり、セーラとの婚約を解消した。



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