第2話侍女長side
「これは一体……どういう事なの!? 」
王太子妃の王族らしからぬ下品極まりない大声が響き渡っております。王家が誇る庭園に相応しくない雑音を発するのは、見た目だけは可憐な美女である王太子妃。男爵令嬢から王太子妃に成り上がった女性。究極の下剋上をした女は、自分にそっくりな王女を宝物を扱うように優しく手を引き、期待に満ち溢れた顔で「お茶会」へと姿を見せた直後の絶叫は、会場の空気をより一層悪くしております。
「何故!? どうして高位貴族の子息が誰も参加していないの!!」
王太子妃が困惑するのも無理ない出来事ではあります。王女のお披露目といってもいい初のお茶会にミソをつけられたのですから。
高位貴族から下位貴族へと幅広く招待状を送りつけた王太子妃。特に王女と年の近い高位貴族の子息のいる家には王太子妃が自ら筆を取った程です。そう、これは「お茶会」という名の「お見合い」。招待客に貴族令嬢が少ないのもそれが理由でしょう。となれば、会場では子息達とその母親、そして少数の
実際は王太子妃が思っていたものと大きく違い、参加者は多いものの、その全てが下位貴族のみという有り様。無理もありませんけれど……。
「王太子妃様、高位の方々からは欠席の連絡を頂いております」
「何ですって! いつ!?」
「五日前には全員からご丁寧な断りの手紙が届いております」
「知らないわよ!?」
「
「どうして王女の元に送るの!? 普通は親である私宛てに送るものでしょう!」
「王家主催ではなく王女様主催となさったからでございます」
「そ、それでも普通は母親が確認するものよ!」
「はい。高位貴族の御令嬢の場合は、令嬢がその都度、母君である女主人に報告をして確認してもらう事が普通でございます」
「なっ!? 侍女の分際で私に意見する気ね!」
「意見ではなく、知っていて当然の事をお知らせしたまででございます」
「もういいわ!」
怒り狂った王太子妃は踵を返し、そのまま会場を立ち去りました。勿論、手を繋いでいた王女も一緒に……。
主役の居ない「お茶会」。
王太子妃と王女を待っていた子供達とその親はこの後どうすればいいのか分からずにざわついております。それもそうでしょう。主役が不在という前代未聞の事態。始めようにも始められない。かといって勝手に帰ることも出来ない。あれが我が国の王太子妃とは嘆かわしい。
侍従から詳細を聞きつけた王太子が来るまでの数分間は恐ろしく重たい空気が漂っていたのは言うまでもありません。
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