第5話 切り拓く新たな世界

 

 みなさんおはようございます。ヒナタです。


 え、なぜ「おはよう」なのかって? そりゃ、今起きたからだよ。

 大蛇強すぎるでしょ。鱗が硬すぎるんだもん。もう二度と見たくない。

 初めてだよ。爬虫類でこんな気持ちになったのは。

 とりあえず強奪スキルによって、スキルを取得したからステータスを確認するか。


名前:ヒナタ

種族:人族

年齢:15歳

職業:魔法使い

HP:78/78(+14)

MP:112/151(+24)

スキル:水魔法LV3

    風魔法LV3(+1)

    火魔法LV4

    無限収納

    威圧LV2

    毒霧LV1

    毒耐性LV2

ユニークスキル:強奪


「おお! HPもMPも増えてる!」


 多分、大蛇の討伐で増えたんだろうな。

 それよりも気になるのは新スキルだ。

 威圧、毒霧、毒耐性か。威圧はなんとなくわかる。

 大蛇との戦闘中に睨まれて、身体が畏怖したからね。

 これは人とか魔物にも使えると思うから便利なスキルだね。

 人間相手だったら脅しにも使えそうだし、魔物だったら戦わずして勝つ! みたいなことも出来そうじゃない?


 それと次は毒霧か……。うん、使う機会は少なそうだな。

 こんな空気の循環もできてないような洞窟でこんなスキルを使ったら、別の誰かが来たときに魔物じゃなくて毒で死んじゃうかもしれないもんね。

 というより、ここじゃなくても周りに被害が出そうだから私が使うことはないかな……。

 ってか、大蛇はこのスキル使わなかったとかバカなんか。

 これ使えば確実に私は死んでいたよ。大蛇がバカでよかった。


 最後に毒耐性か。これは今後も使える機会がありそうだな。

 この世界のことが分からないから、知らない間に毒入りの食材を食べるかもしれないしね。

 それにもしかしたら誰かに毒を盛られる可能性もある。

 念の為、毒耐性スキルは常時発動状態にしておいた方がいいかな。

 魔法スキルだとMPが減るけど、それ以外のスキルはMPが減らないから特に影響はないよね。


 よし! 危機は去ったから出口を目指して出発進行!

 私は大蛇を無限収納に入れ、出口を目指し再度歩き始めた。


 


 半日程度……いや、正確には分からないけれど、洞窟の中を彷徨っていると厄介なことに道が二手に別れている箇所に辿り着いた。

 右と左……どっちに進むべきか……。

 どっちが出口に繋がっているか全く分からない。そもそもどちらを選んでも出口に辿り着かない可能性もある……。

 でも進まないことには出口には辿り着かないしな……。

 こういう時は……。


「運任せでしょ!」


 ということで、洞窟の隅にあった木の棒を取ってくる。

 なるべく真っ直ぐなものを選別して、手で支えながら取ってきた木の棒を立てる。


「どっちだ!」


 木の棒から手を離して倒れた方向に進むことにした。

 完全に運任せ。


 ……そして木の棒が倒れた先は右方向。


「右か……でも……」


 なんか不自然に右方向に倒れたな。

 気になったので木の棒の根元を確認してみる。


「小石か……」


 どうやら偶然小石の上に木の棒を立ててしまっていたようだ。

 そのせいで、右方向に引っ張られるように木の棒が倒れた訳か。

 ……これは無効か?


「これも運だよね」


 そうに違いない。これも運だ。これは女神様のお導きだ。

 ……まあ適当なのは間違いないけど。

 だって手掛かりがないんだもん。それにもし間違っていてもまた戻ってくれば良いだけだし。

 そして運が良ければこの道が出口に繋がっていることもある。

 兎に角、運に任せて先に進めばいいのだ!




 あれからどのくらいの時間が経ったのだろう……。

 長い間洞窟を彷徨っているせいで、足も疲れてきたし、何よりお腹も空いてきた。

 この洞窟には食料なんてあるわけがない。そして水も無いため、私の魔法で出した水を飲むしかない。

 でも水だけだとお腹は膨れない。

 確か人間は水だけの生活だと2〜3週間くらいしか生きられないはず……。

 そう考えると、水魔法を使えるだけ有難いとも思えてくる。


 身体が悲鳴を上げているため、早くこの地獄から脱出したいと思っていると、目の前に光が差しているのが見えた。


「やっと……出口……みつけた」


 やっと、やっと外に出られる。

 私は光が差している方向へと走り出した。


「ひゃっほー!」


 先程までの疲労感も忘れてはしゃぎまくっていた。

 この洞窟にいたのは体感的に2日程度だったが、ここから全てが始まった。

 大蛇に出会いすぐに終わりかけるハプニングもあったけど。

 異世界転生していきなりあんな魔物と戦うとか本当に運が悪い。

 でも結果的には新スキルの取得にHPとMPが上がったから良かったかな。


 それにしても、久しぶりに日光を浴びながら空気を吸うと、すごく空気が美味しく感じる。

 洞窟と違って空気が澄んでいて、日本の都会と違い環境が汚れているわけでもないからかな。


「はあ〜、幸せ……」


 おっといけない。

 すごく気が緩んでしまったが、この世界は魔物がいるんだから多少なりとも警戒していないといけないな。

 また大蛇が出てきても困る。


 とりあえず周囲を確認してみるとたくさんの木々が生い茂っている。

 ……うん、森だね。あたり一面に広がる緑一色。そりゃそうだよね。

 どこかに街道とかあれば嬉しいんだけど、あたり一面木々に囲まれていてどっちに進むのかすら分からない。


 兎に角、最初にすべきことはこの空腹を満たすこと。

 森の中にキノコとか木の実とかないかな。

 毒耐性を持っているから怖いもの知らずだし。

 まぁ、出来れば肉が食べたい。猪とか鹿とか兎とかいないかな。


 とりあえず食料を探す旅に出よう。じゃないと空腹で倒れる。

 というわけで森の中へと入ろう。

 でも森の中は道があるわけでもないから、草木を避けながら少しずつ進んで行くしかない。


 ……しばらく歩いてみたが、アニメとか漫画みたいに都合よく木の実や動物はいなかった。

 お腹が空いた。そろそろやばい。空腹に限界を感じていた。

 今すぐにでも倒れそうな状態でしばらく森の奥へと進んで行くと、目の前の茂みから可愛らしい頭を覗かせた鹿がいた。


「……肉だ」


 目の前にいるのは間違いなく鹿なのだが、私には肉にしか見えない。

 極限まで空腹になるとこうなってしまうのだろうか。

 すぐさま目の前の鹿目掛けて魔法を放った。


「エアショット!」


 鹿に向けて放った空気弾エアショットは見事に頭に命中し、今度こそただの肉の塊になった。


「肉……ニク……にく……」


 すでに狂気じみた感じになっていたが、誰も見ていないから気にしない。

 すぐさま駆け寄り、風刃ウインドカッターで鹿を細かく裁断し、火魔法で炙ってかぶりついた。

 お腹が空きすぎていたため、無我夢中で食べ続け、満腹になるまで食べ続けて叫んだ。




「……まずい!!!!!」


 血抜き忘れてた……。

 バカか、私は。あまりの空腹に思考が回っていなかった。


 とりあえず空腹はなんとか解消したから、街道でも探そうかな。

 せめてどこかの街には行きたい。魔物の肉とかじゃなくてしっかり味付けされた料理が食べたい。


 更に森の奥に進んでいくと綺麗な湖を見つけた。

 そして湖の中央には石碑みたいなものがあり、神秘的な場所のように感じた。


 私は気づいた。この2日間水浴びすらしていない。かなり臭うはずだ。

 周囲を見渡し、誰もいないことを確認して服を脱いだ。


「あ〜、気持ちぃ〜」


 でも、やっぱり冷たいな。日本の風呂という文化は素晴らしいものだと実感する。

 魔法とかで風呂とか作れないかな。

 風呂のことで頭がいっぱいになっていたが、ふと、中央の石碑が気になり近づいてみる。


 1.5メートルくらいの大きさかな。

 なんでこんなところに石碑があるんだろう。

 この湖は何かの神様をまつっているような場所なのかな。

 それにしては手入れは全くされていない。

 何十年も放置されているような石碑だ。

 ふと、石碑の下を見るとビー玉のような小さな水晶があった。


「綺麗……、なにこれ?」


 私と同じ髪色の銀色に輝く水晶を見つめ、なぜかこれは私に与えられたものだと感じた。

 なぜそう感じたかはわからない。

 なんとなくだ。

 水晶を無限収納にしまい、私は服を着て森の探索を開始する。





 私がこの水晶の役割を知るのはまだ先のことであった───。

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