第9話 違和感の正体

 二年生になり、あるとき同期だけ集まる機会がありました。

ミーティングのあと「餃子の王将」でご飯を食べました。


 それぞれ定食などを頼み、ビールも注文しました。

「お疲れ…」


 瓶ビールでお互いにお酌をして乾杯をしました。


 ちょっと違和感がありました。

 なんだろう…


「ねえ、あのさ…変な事言っていいかな…」

 ケンタが少しだけコップに残ったビールを眺めながら言いました。

「俺さ…今ふと思ったんだ…」

 そう言って残ったビールを喉に流し込みました。

 

「どうしたの…」

 まだ違和感の正体がつかめない僕は、ケンタの言葉を待ちました。

 なにか気づいたのかな…ケンタは。


「あのさ…強制されないお酒って…」

「うん…」


「おいしいんだね…」

 大きいからだに似合わず屈託のない笑顔でケンタは言いました。


「そうなんだよな…」

「うん、俺もそう思った、おいしいな…」


 ケイスケもオサムも続きました。


 ああ…そういえば確かにおいしい…。

 お酒がおいしいよ…!

 

 お酒がおいしい

 それが違和感だったのかな…

 この正体はきっと…


「さっきから変な感じがしたんだ…

 何だろうって思っていたんだよね…

 ケンタの言葉でわかったよ…

 今日はどうしてビールがおいしいんだろうって思ったら、そうか…そうだね、強制されていないからだね…」


 きっと先輩たちは後輩の僕らにこんなことを教えたかったからいろいろと飲ませてくれたのかな…。


 たぶん違うだろうけれど。


 でもお酒のおいしさがあらためてわかりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る