第11話 下部構造と上部構造

 史的唯物論の重要な概念の一つに「下部構造」と「上部構造」あります。「下部構造」とは、経済的構造としての土台であり、これが社会的・政治的・精神生活などの上部構造を規定するとの学説です。そして「社会の経済的土台」の上に形成される政治・法律・精神生活との間に能動的反作用や両者の弁証法的相互作用も主張されるが、土台の規定的役割とする学説です。

 簡単に書きますと、経済活動が根底にあり、経済活動が経済活動以外の社会制度や政治、思想、芸術などを制約するとの考え方です。しかし、経済活動は、全ての出発点であるとの考えには疑問を持ちます。経済活動は重要であり、お金がなければ生活を維持することは困難ではありますが、お金が全てではありません。

 実は、この考え方はマックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(プロ論)で否定されています。この本の中では、経済活動の多くは、「宗教」に大きく依存しているということを解明しています。マックス・ウェーバは、1864年〜1920年まで活躍されたとありますので、比較的早い時期にマルクス主義は批判されています。どちらの考え方が正しいかと言えば、マックス・ウェーバーとなりますが、全面的に賛同する気持ちはありません。経済活動よりも精神性を重視した分だけ、マックス・ウェーバーの主張が正しいと思います。


上部構造   社会制度・思想・芸術    経済活動・社会制度・芸術


下部構造   社会の経済的土台      宗  教   


       唯 物 論         プ ロ 論


 個人的には、何が人生を規定するかは、各個人によって異なると考えています。例えば、芸術家は経済活動よりも創作活動を重視する人が少なくありません。これが極端になると創作活動を維持するために経済活動をすることになります。これに似た例は数多くあります。夢を実現するために生活を犠牲にする人は少なくなく、趣味に生きることを何よりも重視する人もいれば、菩薩行の実践に生涯を捧げる人もいます。

 そのため、何がその人の人生を規定するかは、人によって異なると考えるべきとなります。その意味では、マルクス主義の経済活動が全てを規定するとの考えがあっても良く、マックス・ウェーバーの宗教が全てを規定するとの考えがあっても良いことにはなりますが、マルクス主義には、大きな問題があります。資本主義という経済活動の形態を考え直さなければ社会は変わらないとする考えとなり、これが革命を起こして資本主義体制を打倒しなければならないとの考え方になります。これがマルクス主義の本質であり、非常に根の深い問題です。



参考サイト 独学ノート

マルクス主義をわかりやすく解説 – 思想や問題点を10分で簡単に説明 –

5分でわかるウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(プロ倫)」要約

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