第14話 負の想念

 マルクス主義の成立した時代背景には、当時の人々の強い不満と怒り、絶望感などが渦巻いていたと思われます。そのため、資本家が労働者を搾取して富を形成しているとのマルクスの主張は、多くの人の心をとらえたのではないかと思われます。この考えは、自分たちが貧しいのは社会制度が原因であり、自分たちは被害者であるとの立場となります。

 これらの考えは、前提となる「労働価値説」が間違っていることから成り立たない理論なのですが、この世の中から貧困や不正をなくしたいとの高い志を持つ人やこの世の中を公平な社会にしたいと願っている人の心をとらえることが多いようです。そのため、マルクス主義に傾倒する人の多くは、強い正義感を持っていたり、社会的な弱者を救済したいとの志を持っていたりすることが多く、動機としては正義感や善意からマルクス主義に傾倒していると思われます。

 しかし、マルクス主義に傾倒する人が正義感や社会の不正をなくしたいとの強い使命感を持っているならば、このテーマを取り上げた動機であるマルクス主義を擁護する文章を読んだ際に強烈な悪想念は何かとの疑問が残ります。考えられる可能性は幾つかありますが、一つ目の可能性としてはマルクス主義を擁護する文章を執筆した方に問題がある可能性があります。二つ目の可能性としては、マルクス主義が持つ闇の力である可能性があります。三つめの可能性としては、マルクス主義の間違いから起こる負の想念の問題があります。この他にも可能性は考えられますが、どれか一つの理由だけでなく、複数の理由が隠れているのではないかと思います。

 さて、問題は動機が正義感や使命感であるとしても前提となる「労働価値説」が間違っていることから間違った相手を批判することになります。また、マルクス主義に間違いがあることに気付かないことも不思議です。マルクス主義に傾倒している大学教授やマスコミ関係者は多いだけでなく、高い教養を身に着けているはずなのにどうして初歩的な間違いに気付かないのかを考えるべきではないかと思います。

 常識的に考えるならば、色々な理由を並べることは可能ですが、個人的にはマルクス主義が産業革命の当時にヨーロッパを覆っていたと思われる膨大な量の負の想念を背景にした思想であることが原因ではないかと推察します。一般的に霊障は個人生活の影響として語られることが多いのですが、一つの国を覆うような巨大な負の想念は、個人の生活だけではなく、国政に影響を与えるだけでなく、国民を暴走させるなど数多くの悲劇を生み出します。それがヨーロッパの一国ではなく、ヨーロッパの全土を覆う程の負の想念となれば、誰にも止められないと思います。

 ここまで考察してきましたマルクス主義が成立した時代背景を考えますと、その巨大な負の想念の集大成がマルクス主義ではないかと考えるようになりました。勿論、これは個人的な仮説であり、何の確証もない話ではありますが、多くの人をここまで引き付ける思想には何らかの力の裏付けがあるのではないかと思います。そうでも考えませんと、高い教養を持つ人々が労働価値説の間違いや余剰価値の間違いに気が付かないとは考えられません。

 また、マルクス主義は自説の理想を実現するためには、暴力革命を肯定する思想ですが、自分たちは正義の立場であることから暴力を正当化していると言えます。これがマルクス主義の危険性ではないかと考えます。個人的には、この自分たちは正義の立場であるとの考えは、一種の麻薬のような考え方であり、この考え方が身に付きますと、麻薬患者が麻薬を止めるのと同程度の苦痛を味わうことになるのではないかと思います。それほど自分たちは正義の立場であるとの考えの害毒は大きいだけでなく、人間の精神を蝕むのではないかと考えています。

 人間にとって自分は正義であるとの考えは、自分が何をしても許されるとの考えと同じであり、水戸黄門の印籠を持ったのと同じ心境であると考えるならば、分かり易いのではないでしょうか。このような心境になると自分の過失を認めることや自分の言動を反省することが困難となります。そのため、自分の意見を聞き入れない者や自分の意見を否定する者に対しては激しく非難することに何の疑問を持たなくなります。これは自分が正しく、相手は間違いであるとの考えの弊害ではありますが、相手の気持ちや相手の考え方を認めることができないことから話し合いが困難となります。

 その原因は、ヨーロッパの全土を覆う程の負の想念であり、当時の人々の激しい不満や怒りがマルクス思想の中に内在しているのではないかと考えます。その激しい怒りがマルクスやマルクスの後継者であるエンゲルスなどの著書を通して人々の心を麻痺させてしまうのではないかと考えるようになりました。これは俗に言う憑依とも違うと思われますが、心霊世界は心の世界であることから思想を学ぶことを縁として負の想念が学んでいる人に流入することは充分に考えられます。

 55年体制であったころ、約3分の2の議席数を占め政権を握る自由民主党と,憲法改正阻止に必要な3分の1の議席数を保持する野党の日本社会党の2大政党が議会で対立していた野党の社会党と共産党は重要法案に悉(ことごと)く反対していた理由もここにあるのではないかと思われます。そして旧社会党の流れを組む立件民主党が政府を批判することだけに熱心であり、建設的な提案ができない理由も同じ理由ではないかと思われます。

 個人的には、資本主義は問題が多い制度であり、改善すべき点は多いと考えていますが、マルクス主義は明らかに破綻していることは歴史が証明していると言えます。それでもマルクス主義を信奉し続けるのには、現実的な問題ではなく、心霊世界の影響があるのではないかと考えるべきではないかと言うのが、今回の考察の結論です。

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