第14話
闘牛暴力女から全力でダッシュした僕は、直ぐに自宅に到着した。
「タイム! タイム! 着いたから! 痛い痛い! やめて!」
両手を挙げ完全降伏を宣言しても彼女は僕にローキックを2発決めた。
クリーンヒットしたローキックで僕は膝から崩れ落ちた。
「マジで、すみませんでした」
彼女はヤンキーのように僕を見下ろしていた。
「二度と私を妙な名前で呼ぶんじゃないわよ」
「はい。ホントにすみませんでした」
僕は彼女をおちょくるのはもうやめようと心に誓った。
「ごめん、少し片付けるからちょっと待ってて」
僕はリビングを軽く片付けてテーブルの写真たてを伏せた。
「お待たせ。どうぞ」
僕は玄関のドアを開けて家の中へと導く。
「おじゃまします」
彼女は脱いだ靴をきちんと反対にして揃えた。僕の靴まで同じように並べるのを見て、僕は彼女の意外な一面を見た気がした。
「何よ?」
じっと見ていると彼女から睨まれてしまった。
「いや、ちゃんとしてるなと思ってさ」
「別に普通でしょ」
女子にしてみたらたしかに普通なのかも知れないなと思った。
「こっち、リビングなんだ。ここで座ってて。お茶持ってくるよ」
リビングへのドアを開けてテーブルを指差した。冷蔵庫からお茶を取り棚からコップを2つ用意する間に、彼女が部屋を見回しているのが気にかかった。
「はい、どーぞ」
「ありがとう。いただきます」
先ほど僕を蹴ってきた人物と本当に同じなのかと疑うほどにおとなしく素直な彼女に僕は戸惑う。
「君という人間が僕には良くわからないよ」
僕は素直な感想をこぼし表情を緩めた。
「皆、それぞれ色んな過去があるんだから当然じゃないの。わかったような顔される方が腹立つでしょ」
彼女の言葉がスッと心に浸透していく。
「それは、僕もすごくわかる。
「なんかバカにしてる?」
僕は慌てて訂正する。
「違う違う。僕も色々あったからさ、君の言葉が刺さったんだよ。あのさ、橘さんの話の前に、君のことをまず教えてくれない?」
僕は真剣な表情を作りお願いをした。
「だったらあんたの話も聞かせなさいよ。まぁ玲の話をするのに私のことも少し話さないといけなかったしね。じゃあ私の小さい頃の話からするわね」
そう言って彼女はため息をついた。僕には彼女がなにか小さな覚悟をしたように見えた。
砂糖とミルクはお付けしますか? 詩章 @ks2142
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