第31話 飛ばねぇ鶏は、ただの鶏だ。

「よいせっと」


 地面に下ろされた私。ああ……、もうちょっと抱かれていたかった……。だが、やる事がある。


「テイオスさん」


「ん? どうした、ココちゃん」


「ちょっと後ろのクソ……、エンウーに説教してきますね」


「お、おう」


 後ろへ投げ飛ばされた巨大鶏に近づくと、


「いたた、テイオスはもっと優しく投げてほしいコケー」


 羽でお尻を摩りながら、助けてくれたのに、推しに文句を言っていた。


 ……イラッ。


「……エンウーくん?」


「コケ?」


「君は、運営の化身だよね?」


「コケ」


「あの先に、穴があるのわかっていたはずだよね?」


「忘れていたコケー。コケペロッ」


「…………」


 てへぺろみたいにすな! 可愛くないんじゃ!


「まぁ、百歩、いや、万歩譲って、忘れていたとしよう。でも、君は鶏だよね?」


「コケ」


「羽があるよね?」


「飛べや! 羽ばたけや!」


「……ココさん」


「あん!?」


 何じゃこの巨大鶏、ふっと笑って目を閉じよって。



「飛ばねぇ鶏は、ただの鶏だ」


「うん、だから、お前はただの鶏な」


「コケー……」


「むしろ、それ以下な」


「コケー……」


「ただの、でかい、黒い、羽毛の、塊な」


「コ、コケー……」


「まぁまぁ、ココちゃん。それぐらいで勘弁してやれって」


 推しが私の右肩にぽんと手を置いた。


「エンウーも反省しているみたいだからよ」


「コケコケ」


 ぶんぶんっと頷く巨大鶏。


「——今回は、推……、テイオスさんに免じて許してやるが、いいか!? ヲタクの顔も一度だ! わかったか!?」


「一度って……、ココさん仏より器ちっさ」


「うっさいわ! 私はヲタクじゃ! ホトケじゃないんじゃ!」


「ココちゃん、ヲタクって何だ?」


「ヲッ、タク、は、ですねー……。ヲー、ヲー、ヲッ、たまげるほど、逞しい、ク、ク、クー……んれんを積んだ人のことです!」


「なるほどなー」


 我ながら、毎度の事だが、咄嗟の誤魔化しが素晴らしすぎると思う! そして、一切疑わないピュアな推しに感謝!


「ヲタクはココちゃんのためにあるような言葉なんだな!」


「……まぁ、そうですね」


 実際の意味は違いますが。


「だってよ、おったまげるほど、訓練した、逞しいココちゃんだから、咄嗟にエンウーを掴むことができたんだろ?」


「……まぁ、そうですね」


 エンウーは、運営の化身だから、ここで見殺しにしたら、本当の意味でサ終になる。だから、体が勝手に動いてました。……なんて、言えねー。


「可愛いのに、逞しいって、ココちゃん最強だな!」


 ピュアッピュアな眩しい笑顔をくれた推し。


「——……」


 すこすこスコティッシュホールド。



−−−−−−


 あとがき。


 ヲタ語解説。


 ・すこすこスコティッシュホールド。

  「好き」の「すこ」に、猫のスコッティシュホールドとかけたもの。




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NPC婚します〜Npc(推し)のために、Profitable(有益な)イベを生産せよと、Compulsion(強制)させられたので、推しに求婚します〜 冥沈導 @michishirube

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