第23話 私もう癒されたのに

「でも、あんだけダメージ与えたのに、まだいるよデカ蝙蝠こうもり


「ギィー!」


「キャー! だから鳴くなー! でかいから怖いんじゃー!」


 早くこいつを倒して、ここからとんずらしたい!

 でも次は私のターンだ。どうする? またおしかつを使って、テイオスさんの攻撃の力を上げて、決めてもらう?


「……いや、待てよ」


 エンウーは新しい特技を覚えたけど、私もだった。そう、『おしあい』。


 文字からすれば、推しを見る。推しを見る? 私の目の保養? あっ! つまり、私の攻撃の力が上がるのか!


「ダメじゃーん!」


 頭を抱えて叫んだ。


 だって武器を買い忘れたんだよ!? また『ミス!』とかになるに決まってるよー!

 じゃあ、やっぱりおしかつか!?


「……いや」


 私はヌルゲーマーだが、ゲームとは、RPGとは、大胆と臆病の駆け引きだと思っている。

 時には臆病になり慎重に。時には思いっきって大胆に。今は。


「大胆に行く時だー! ラスボスじゃないし!」



 コマンド選択。


 ココ


 とくぎ


 おしあい:おしを見る


『ココの おしあい!』


 体が勝手に推しの方を向き、勝手に目が推しをガン見する。


「テイオスさん。テイオスさんの一撃はかなりでかいです。でも奴はかなり大きい。一発で決められなきゃ、狙われるのは私たちの中で攻撃力の高いテイオスさんです。ここは防御して様子を見ましょう」


 口がペラペラ勝手に動いた。


「なるほどな! ココちゃんの言う通りだ! いっちょ様子を見るか!」


『テイオスは みをまもっている』


「…………」


 なるほどね! 推しeyeアイこと、おしあいは、推しを見て、今の推しの状態を確認して、次にする行動を指示することね!

 プチ作戦変更みたいなもんだね!


 それはそれとして、デカ蝙蝠は何をしてくる!? 人喰いだから噛みつきか!? 超音波か!?


『人喰いこうもりの たいぐん!』


「大群?」


 後ろからバサバサと聞こえてくる。振り向いちゃダメだ振り向いちゃダメだ。でも、好奇心には勝てなーい。

 そろりそろりと振り向いた。


「いっ……」


「キィキィ!」


「キィー!」


「やっー!」


 小さいけど蝙蝠の大群がこっちに向かって来る! 小さいけどたくさん集まると、申し訳ないが怖くて気持ち悪いんだよー!

 

 え? それに何それ。たくさん集まって、それぞれちゃんと位置決めて、ドラキュラのような形を作ってるの? わー、お上手ー。


「へびばべぶぼば!」


 関心している間に、蝙蝠の大群に襲われ、小さく噛まれたり、翼であちこち擦られたりした。


『エンウーは 21のダメージをうけた!


 ココは 16のダメージをうけた!


 テイオスは 34のダメージをうけた!』


「……ボロボロだよ、ひりひりするよ」


「うわー、痛そうだなココちゃん」


「ほにゃ!?」


 推しハンドに顔を挟まれた。


「あーあー、傷だらけになっちまってー。女の子の顔に傷をつけるとは許せねーなー」


「ほにゃひ!?」


 頬を両手でさすられた。ゴツゴツ大きなあったか推しハンド。……今なら頬が溶けると思う。


「女の子の肌は髪と同じくらい大切だから、それを傷つける奴はー」


 推しが拳をパキパキと鳴らし、デカ蝙蝠を見た。


「一発、お見舞いしてやらねーとなー」


「……」


 え? 今のハンドサンドで充分癒されたけど、私のためにおこなの? トドメ刺してくれれるの? どんだけ男前なの?


 ……それでは聞いてください。『私もう癒されたのに』。


−−−−−−


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