門松

 もう時期を逸してしまった気がしますが、正月の話題を一つ。

 今回は、門松かどまつの話です。

 

 門松といえば、正月に門前などに立てる竹や松を用いた飾りであり、年賀状のイラストなどにもよく登場しますね。

 しかし、なぜ正月に門松を飾るのか。なぜ門松という名でありながら、松ではなく、中央の三本の竹が本体であるかのようなデザインになっているのか。

 その理由を、皆さんはご存じでしょうか。いや、知るまい。


 門松が誕生するきっかけとなったのは、鎌倉時代に生きた、猛壮竹 松剛もうそうちく まつたけという一人の男でした。

 松剛は、並ぶ者の無い竹槍の名手。

 圧倒的な速度とパワーを誇るその竹槍さばきで、悪人や害獣のみならず、鬼や妖怪をもバッサバッサと薙ぎ倒したと伝えられています。

 竹槍より刀などのほうが武器として強いように思われますが、松剛は、その重量感や「折れたとき、すぐ予備に持ち替えられるところ」が良いと考え、竹槍を愛用していたとか。

 竹槍が折れるたび、次々に新しい竹槍を取り出し、持ち替え戦い続けたということから、彼の剛腕ぶりが窺えます。


 鬼もが恐れる松剛の名は、町々に広く轟きました。

 そして彼の死後もなお、その存在は、鬼除けすなわち厄除けのシンボルとして残り続けたのです。


 特に、この一年を良い年にしようと様々な物で縁起を担ぐ正月の時期、人々は門前に、「門松」と呼ばれるそれを飾ります。

 門松には、「松剛が門を守っているぞ」「こちらには竹槍の用意がある。敷居をまたいでみろ。松剛が貴様らを薙ぎ倒すぞ」という、いわば鬼に対する脅しの意味があるのです。そうして、家などに災いが入るのを防いでくれるのです。

 パワー系の厄除けですね。

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