【エイルの挑戦状11】エキストラ!!突破してるよね?

 大学院を卒業して、就職を考えたけれど俺は同い年の天才な彼女バカを見捨てられなかった。

 

 彼女は良くも悪くも研究者なのだ。注ぎ込む資金も世の中に必要とされてるとか考えない。ただ自分の知的欲求に、素直なんだ。


 幼稚園からずっと一緒な進学をしてきた俺は三つ子の魂百までというこれ程まで実行してる人間を知らない。それくらい知的好奇心が強いのだ。

 

 気がついたら徹夜は当たり前、食事も忘れることによくあり、在学中は3回ほど栄養失調で倒れた。もちろん寝不足でぶっ倒れて寝るのはよくある事だ。

 

 ここまでバカなブラック研究者だと、企業は雇わない。だって勝手に法令違反して罰則を受けるのは会社だからだ。

 

 そして命令も聞かないというかそもそも面接に来ないし履歴書も出さない。

 

 これでは彼女は露頭に迷ってしまう。彼女の両親もこれ以上学費は払えないし、大学側も成果を出さない研究というか、そもそも講義すらすっぽかすであろうし、誰かに教える気などない彼女を雇えるはずがない。

 

 つまり教授という、道もないのだ。

 

 そんな天才ばかをどうにかしてあげたい。そこで労働者だからダメなのだ。つまり会社の役員に、すれば使用者で経営者なので万事解決する。勝手に自分の裁量で研究してればいい。

 

 過労死とかしないように無理やり止めるのは社長である俺の仕事である。

 

 つまり俺は彼女が研究するために会社を作り、天才を役員として迎い入れたのだ。

 

 ばか研究中毒者にしたら場所が変わったくらいの事でしかないだろう。

 

 俺は理系の才能は足りないし手伝う知識も技能もないから、不動産業で頑張って研究費を念珠した。少しづつ貯めた資金とたまたま取得した土地で農業して最近では、生産から加工販売する企業になった。


 社員にそれなりの給料と待遇を出して残った利益の大半は研究費として消えるからほぼ黒字は出ないけど、大手企業一歩手前くらいまで成長している。

 

 そんな社長の俺も彼女も38才だ。そろそろ結婚してやらないとダメだろうが問題はデートすら、遅刻よりも酷く記憶から忘却されてしまうことだ。

 

 どうやってプロポーズしろと言うのか?なのに社員も取引先も親達も結婚しないのか?と聞いてくる。

 

 だからどうしろと?それが俺の直近の悩みである。


 そんな俺の気も知らないであろう彼女というか彼氏と認定されてない気もするが、とにかくばか研究中毒者が何故か小綺麗にして社長室へ乗り込んで来た。

 

「どうした!?まさか世界が反物質と衝突して消滅する前兆か?」

 

 本来は秘書室を通さないとここへは入れない。役員なのでスルーでもいいのだがおそらくは秘書室も驚愕してそのまま通したのだろう。

 

「いや、そこはせめて槍が降るくらいにしてくれない?」

 

「だって社長室の場所を知ってる事から驚きでな」

 

「ここで寝泊まりしてるし社員なんだから、社長室くらい知ってるわ」

 

「お前役員だからな」

 

「そんな事はどうでもいいわ。これなんか改造したけど売れる?」

 

「もやしか?そりゃ農業してるし売れなくはないけど?改造の、やり方によっては難しいな」

 

 彼女が商売に気があるのも驚きだけど改造ってどうやったのか?

 

「あぁ、普通に豆を色々と掛け合わせてなんかもやしにしたら、完全栄養食になっただけよ」

 

「は?」

 

 誰がどう見ても普通のごくごくありふれたもやしなんだが?


「普通に古来よりの方法で品種改良して、もやしの栄養価をめっちゃよくしたのわかる?」

 

「いやまともな研究すぎてな。心臓が止まるほど驚いただけだ」

 

 だって普段は量子力学とか、洞窟中の蜘蛛の生態とか、人間意識とは?とか意味不明な研究を次々としてるのだぞ。

 

「これ、もやしの栄養価の資料ね。こっちが原料の豆の効率的な育て方の資料よ」

 

「あっうん、なるほど、これなら高くても売れるかもなぁ」


 味は普通のもやし。でももやしにしないと豆は激マズらしく、アスファルトのが美味しく、死ぬ方がましと報告されている。天才な彼女ばかはアスファルト食ったことあるのか?

 

「あっそう。そういうのは任せるからじゃあね。研究に戻るわ」

 

 天才な彼女ばかは颯爽と踵を返すとたぶんアホな事を研究しに戻ったのだろう。

 

「倍の一袋40円で役員会で審議してみるか」

 

 そして役員会で資料を提出すると、豆の生産の土地取得や追加人員にもやしの製造工場の新設などなど投資があれよあれよと決まった。

 

 資金回収とか、考えると販売価格は一袋1000円である。二百本入りなので1本5円だ誰が買うだよ?という俺の意見は、逆ですよ。高いからこそ価値があり希少で効果があるように人は思うのです。だから最低でも2500円は超えるべきです!!

 

 そんな営業本部長に押し切られて3000円で販売された。

 

 ちなみに現在世界の常識として人間とって完全栄養食はまだ確認されていないはずだった。その歴史を塗り替えたのが、このパーフェクト萌やしである。

 

 本来は芽が出る時に使う萌えるから萌やしという漢字なのだがちょっとだけサブカルチャーよりにしてみたのだ。

 

 そんな名前よりも完全栄養食なのか?という検証がなされ、ユーチューバーとか学者とか研究したり人体実験したりされて、このパーフェクト萌やしさえ食べれば人間は健康長寿になることが次々と証明された。


 1日の摂取量は30本くらいから、食べ過ぎは問題なく、煮ても焼いても粉々にしてもフリーズドライしてもペーストでも栄養価に問題はないらしい。挙げ句に消し炭にしても栄養素は減らないという謎仕様である。

 

 こうなるとパーフェクト萌やしはもやしでありながら付加価値によって高値で売れた。そして一袋2000円の儲けである。そして作れば作るだけ売れる。


 

 なので強気に5000円に値上げしても売れる。その莫大な利益でさらに土地を取得し、さらに工場を新設する。大量生産によりコストは下がり普通のもやしと変わらなくなってるのに売値は5000円である。ボロ儲けだ。

 

 ついには海外の、土地まで取得し新種の豆を育てた。取得した土地面積はもう最大領土が、世界4位のスペイン帝国を超えた。まぁそこらの国よりも圧倒的に広いといえば分かるだろうか?いやもうわけわからん。

 

 食生活は小麦や米、トウモロコシを駆逐して世界の最大生産農作物とまでなった。ついでに穀物メジャーとかも駆逐してしまった。貧困な国家は高値で売れるもやしの原料豆の販売で潤い世界の貧富格差は少し是正された。

 

「いや、やりすぎたな」

 

 ここまで2年である。40歳にして世界一の大企業というか世界を操る立場になってしまった。何しろ元貧富層の人々からの熱狂的な支持がある。だから俺の意見は世界の人口半分以上が同意する。


 俺に逆らえない国家は掃いて捨てるほどある。賄賂?そんなのよりも、もやしを売る方が遥かに儲かる。


 人類はもやしで出来ていると言っても過言ではないのだ。そのもやしの支配者は俺である。

 

 でも社長室は今も変わってない。豪華すぎても落ち着かないし、やっぱり彼女研究中毒者の近くで寝不足は大丈夫か?食事してるか?それを心配して世話するのが楽しみだから。

 

 そんな事を考えて1人天井を見上げる。

 

「あら?夢叶ったでしょ?」

 

 またしても唐突に社長室へやってくる彼女である。今の優秀すぎる秘書が素通りさせるなどありえないのだが?世界から選抜したんだ。

 

「よく通れたな?」

 

「優秀な秘書だったわよ。急にお仕掛けたのにこんな物まで、用意してあるもの」

 

 そこには大切にラミネート加工されれ、丁寧に保管されていたであろう。たくさんの資料?イヤイヤ違う!!俺が中学校時代まで夢を書いた紙が大量である。

 

 夢の内容は世界征服。うん。凄く痛い。心が痛い。そしておっさんになってこれをやったしまった。そんな俺がめっちゃ痛い。

 

「それは私の私物だから。秘書が用意してたのはこっち」

 

 そこには婚姻届に俺と彼女印鑑そして、ボールペン。丁寧な書き方の説明用紙に世界的な大国の現役大統領とか首相とかすげぇ人達が証明者として先にサインしてる。

 

 しかも書き損じて良いように大量である。やべぇしかもこれ、よく見るとミュージシャンとか有名人もいる。どうやら全部サインは違うらしい。こんなの用意させられのは、世界征服した我が社だけだろうな。

 

「こんな世界征服する変人と結婚する女は私だけよ

 ?だから結婚しましょ?あっ式とかやる暇あったら研究したいからね」

 

「それこそ研究に浮気する変人と結婚する男は俺だけだろうさ」

 

 全く俺のためにもやしの研究するとか、これは断われんだろうよ。最高のプロポーズじゃないか。それにこんな軽口を言うのはもう彼女くらいである。だって俺もう世界一偉い人だし。

 

「なぁなんでもやしだったんだ?」

 

「あら?私の初めての手料理はもやしで美味しそうに食べてたからよ?好きなんでしょ?もやし」

 

「断じてあれは手料理じゃない、メイラード反応を調べるために使われた実験の残骸だし、食べたのもデートちょっと待ってで13時間待って腹が減ったからだが?」

 

「そうだけ?よく覚えてるわね?」

 

「初めてだったからな」

 

「えへへ~」

 

 その後も、パーフェクト萌やしを食べて育った人食い熊が戦車砲でも殺せなくて大騒ぎになったり、敵に盗まれて製造されたパーフェクト萌やしを謎の怪電波で全滅させたり、火星に適応さる品種改良により火星がパーフェクト萌やし豆に占領されたりもした。

 

 気がついたら世界どころか太陽系をもやしで征服士てしまったのである。

 



 ちょっと解説(≧∇≦)bどうでもいいけど、ちょっと豆知識。

 

 その1 歴史上世界領土広さランキング

 

 1位 大英帝国

 産業革命により、世界の工業製品の半分がイギリス製で莫大な富を得た。その財力と工業力で、世界の海を支配した覇権国家。国際問題や人種差別貧富の格差などなど色々な元凶で世界中で無茶苦茶していたりする。

 三角貿易によりさらなる富を蓄積したが二度の世界大戦により国力を消耗し覇権国家の座をアメリカに奪われたが最盛期はマジのチートである。

 

 2位 モンゴル帝国

 遊牧民であり騎馬民族であるモンゴル人の国家。遠征も生活一部なので旅で疲れない。そして当時最強の弓によるヒットアンドアウェイで無双した。ユーラシア大陸の半分を支配した最強の陸軍国家。

 

 3位 ロシア帝国 悲しいかな領土の大半は冷凍庫そして大英帝国と同時期に存在したために影が薄い。でも今もロシアの誇りだがやっぱり存在感が薄い。名実ともに西洋列強のナンバー2で陸軍国家である。それでも列強最強の大英帝国はチートで逆らえなかった。

 

 4位 スペイン帝国 大航海時代の覇権国家であり初めて太陽の沈まない国となった。元植民地では今でもスペイン語が使われていたりする。没落の落差ナンバーワン候補である。

 

 その2 メイラード反応

 

 食べ物を加熱した時の化学反応である。糖やタンパク質など複数の物質が加熱で分解と化合を複雑に行うためを今でも詳細は不明。分かりやすく言うとパンをトーストした時の色が変わる時の反応こと。身近だが未だに解明されていない。でも、美味しいから詳細不明でも誰も困らない。

 

 その3 品種改良

 

 遺伝子組換えではなく、既存の植物や動物からより好ましい性質の物を同士を交配させたり、違う種類を交配させて、より良い品種を生み出すこと。ほぼすべての野菜や家畜は品種改良により、美味しくなったり、収穫量が増えたりしている。

 

 その4 完全栄養食

 

 その食品のみで必要な栄養素が全て摂取可能な食べ物。卵や栄養素を添加したり複数の食材を使用したバーなどが開発せれているが、完璧な食品はまだない。食事はバランス良く食べるこれ大事。

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エイルの挑戦状シリーズ エイル @eilu

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