高校生

 時は流れ高校一年生の五月。ゴールデンウィーク明け特有の気だるさを引っ張りながら今日も登校する。


「おはよう、悠翔」

「おぉ空真、おはよう」


 相変わらず同じ学校に進学し、相変わらずの関係が保たれるかと思いきや違った。空真は風紀委員に所属した事や、新しいコミュニティを作っている事から、学校の中ではあまり話さなくなっていった。対して自分の方は、音楽好きな新しい友達も出来たりと、これまた話さなくなる原因となった。


「今日は委員会あるのか?」

「いや、ないよ。珍しくお休みさ」


 なので話すのはこの登校の時間のみだ、それすらも空真が忙しいとのとこで早くに家を出るため合わない日すらある。


「あ、そういえば……」

「どうした?」

「いや、中間テストがそろそろだろ? 勉強しないと……」

「あー……そうだな……」


 まだ卒業さえできればいい悠翔とは違い、空真は今後の成績が重要になってくる。先が見えてるからこそ、勉強しなければ、いい成績を取らねばと焦っているようにも見えた。



「おはようございまーす」「おはようございます」

「おはよう」


 校門前で立っている先生に挨拶をする。風紀委員の仕事だが、休みの代わりに先生がやっていたのだろう。


「そういえばなんで委員会が休みなんだ?」

「それが大井おおい先生がお休みらしく……」


 風紀委員を担当している大井先生、外見はしっかり筋肉の付いた見た目で、中身もしっかり肉体派、担当科目は体育だったはずだ。


「そっか……風邪でも引いたのかな」

「風邪引くようには見えないけどね……」

「うん……」


 下駄箱を開け、上履きに履き替えようとしたその時、隣で同じく下駄箱を開けていた空真の足元に何かが落ちた。


「おい空真、それって……」

「なんか入って……手紙?」


 その場で封を外し、中身を読みだす。部外者が中身を見るのは野暮だと思い、ひとまず読み終わるのを待った。


「放課後、中庭にある木の下にこの手紙を持ってきて欲しい……」

「ラブレターか? 差出人は?」

「いや、書いてない……」


 差出人不明のラブレター、空真にもついに春が…と思っていたのもつかの間、急にあっ! と声を上げだした。


「この字どこかで見たような……」

「……ほんとか?」


 そもそも人の字なんてものは、それなりに関わりのある人間のものじゃないと覚えることなんて無い。


「普段仲良くしてるの……誰だ?」

「基本的にクラスの男子くらい……女子とも話すことはあるけどそんなにだよ」


 相手が男子の可能性も捨てきれない、それにただのイタズラという線だってある。とはいえそれで片付けてしまっては、もし本当だった時に大変な事になる。


「とりあえず、行ってみるよ」

「おう、頑張れよ!」

「頑張れってなんか違くないか……?」



◇◇◇



 翌日、通学路を歩いていると、空真らしき人影を見つけた。


「おーい、空真ー!」

「悠翔、おはよう」


 その隣には、知らない女子。何となく察した悠翔は空真に問いかける。


「その女子は……」

「し、新城しんじょうありすです……空真君と同じ風紀委員所属です……」


 詳しい話を聞いたところやはり彼女との事だった。付き合って早々朝から家に迎えに来たらしい。


「空真君はいつも優しくて、風紀委員でドジやってる私を助けてくれるんです」

「そうだよなぁ! 昔からお人好しなんだよ空真は!」

「そうなんですか? もっと聞かせてください……!」


 なお、当の本人はあまりの恥ずかしさに終始顔を覆っていた。



◇◇◇



 七月、比較的順調だった。期末テストの結果も上々、彼女との中も良好。クラスの面々とも仲良くやっているし、近所のファミレスで集まって勉強会などをしていた。


 十月、点数自体は変わらなかったが、順位は20位ほど落ちていた。周りが勉強をした事で落ちたのだろう。テストの結果を見た両親に……特に母に怒られた。


 実は、自分定義プログラムの結果が事務仕事という事を伝えて以降、母からの扱いが冷たくなっていた。もっと頑張らないと、そう思い勉強の量を増やした。


 そして十一月、学園祭を控えたある日、僕の意識は暗転した。

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