第18話 ろーらー牛




 夢を見た。

 夢だとはっきりわかる。

 死んだじいちゃんが出て来たからだ。

 じいちゃんは竹職人を目指していたそうだ。

 だけど、自分の手には負えないからって、あっさり運送業に転職してろーらー牛に乗ってあちらこちらへと荷物や人や動物や植物を運んだ。

 運んでいるじいちゃんはキラキラ輝いていてかっこいいと思っていたけど、ろーらー牛には二度と乗りたくないと心底思った。

 めっちゃ怖かった。

 よかった。ろーらー牛の夢じゃなくて。

 よかった。平和な絵本読みの夢で。


 じいちゃんは俺に絵本を読んでくれた。

 内容は覚えないない。

 どうしてだっけ。

 何か、こう。確か。

 竹林が出て来た事だけは覚えている。

 この地上には存在しない竹林。

 竹職人しか行けない秘密の場所にある竹林。

 じいちゃんに尋ねたっけ。

 どうして地上には存在しないのか。

 じいちゃんは答えてくれたっけ。

 めちゃくちゃ笑っていたような気がする。

 えーと、えーと、確か。

 確か。

 あんなものが地上にあったらほにゃららとか何とか言っていたような。


 そうだ。

 じいちゃんは酒を飲むと俺に絵本を読む癖があったんだ。

 弱いくせに酒は大好きで、でもばあちゃんに禁止されて拝み倒して一週間に一回だけ飲めるようになったんだっけ。

 ばあちゃんは迷惑だから止めろってよく叱ってたけど、俺はそこまで迷惑じゃなかったな。

 酒くせえと思ったけど、酒とじいちゃんの匂いが好きだったし、じいちゃんが声を弾ませながら読んでくれるのも嬉しかったし。


 懐かしいな、じいちゃん。


「会いたい?会いたくなっちゃった?」

「そうだね。会いたいよん?」

 

 何やら酒臭いなと思い、うっすらと目を開くと。


「久しぶりだなあ。竹葉」


 ふよふよ宙に浮いているじいちゃんが、いた。


「いいいいいやあああああぁぁぁ!!!」











(2022.10.5)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る