第44話 大陸の動乱、その4


 案内された所は、王城が崩れてわずかに残っている建物の中だった。


建物の周りには大勢の武装した獣人族がトムたちを無遠慮に見て、その中の獰猛そうな豹獣人が。


「ザガード様、ひ弱そうな人族を連れて来たが戦場に紛れ込んだのですか」


 トムたちは獣人族から見ればまだ子供と女なのでひ弱な人族と見られたのですがザガード国王が慌てて。


「馬鹿者―! この方たちは先程ワイバーンを倒してくれたフォーク国の国王トム様とドラゴンが人化したライザー様だ。失礼な事を申すな」


 ザガード国王の言う事が信じられないのか豹獣人が。


「本当ですか?そんなひ弱な人族の子供がわしらでも倒せないワイバーンを倒したなど信じられないが・・・・・・」


 側にいた鳥人族が。


「本当だ! 俺がワイバーンから逃げようとした時にドラゴンの背中に乗っていたその方がワイバーンの10匹をアッと言う間に切り殺したのを見たぞ」


 鳥人言葉を聞いた豹獣人が顔を青くして土下座をし。


「ほ、本当なのか、すみませんでしたー!」


 ナナリーナが人形のような可愛い顔で。


「見た目で判断しない方が良いわよ。私はナナリーナと言います。創造の魔法で全魔法が使えますのよ。ワイバーンのブレスより強力な火の魔法で貴方たちを焼き殺す事も出来るわ」


「私はジエルよ。本当は人族では無く魔物の女王よ、毒液で全ての物を溶かせるわ、出来たら私を怒らせないでね


「私はライガー王国の王女のローランよ。治癒魔法と氷結の魔法が使えるわ。宜しくね」


「わしは君たちと同じ獣人のバースだ、獣人は魔法を使えないがトム様のお蔭で何でも凍らす、氷結ブレスが使える」


「言うまでも無いが我は、此の世界最強のドラゴンのライザーだ」


 皆が勝手に自己紹介をしたのでトムも。


「フォーク国の国王トム・バンドウだ。此処にいるのは俺の配下と婚約者たちだ。此れから帝国を相手に戦う味方だから仲良くやろう」


 獣人族は力が第一で弱い者は見下し強い者には服従する種族なのだ。


 皆の自己紹介を聞いた獣人族は、見た目とは違い人間離れした実力の持ち主なのに驚き、この世界で最強のドラゴン従者にしているトムがあのワイバーン10匹を簡単に倒したと知って服従する事にしたのです。


 帝国軍を指揮していた第三将軍は、主席将軍のバンダイから渡されたワイバーン部隊が自分たちの苦戦していた獣人族を簡単に倒して、もう少しで獣人国を征服出来ると思って喜んでいたのだ。


 だが、思いがけないドラゴンが現れてワイバーンを簡単に倒されてしまい、このまま戦うか撤退するか判断を迫られ、撤退して帝国に帰れば自分は将軍職を解かれるだけでなく最悪の場合は処刑されるだろうと思った。


  結局、第三将軍は、帝国軍は1万で獣人族はワイバーンに半分くらいを倒されて残っているのは2千くらいだと判断して総攻撃を命じたのだ。


 一方トムたちも丘の上に陣取っている帝国軍をどうしようか相談していた所で、その帝国軍が総攻撃をして来たのでバースが呆れて。


「あいつら馬鹿か! ワイバーン部隊が簡単に全滅したのを見ていなかったのか」


 ローランも。


「バースの言うとおりね。ライザーのブレスなら一瞬で全滅してしまうから、トム様とライザーは戦わないで見ていて下さい、私たちの実力がどのくらいか試してみたいので・・・・・・」



ライザーが豪快に笑い。


「ガッハハ! ハッハハー、面白い。危ない時は手伝うから思う存分試してくれば良い」


 トムもいざとなったら助ければ良いと判断して。


「無茶はするなよ、少しでも危ない時は退却しなさい」


 ナナリーナも初めての戦いに興奮したのか。


「どの魔法で戦おうかな、うーん ・・・・」


 帝国軍が近づくとバースが空から氷結ブレスのブレスで敵を凍らせて倒し、地上からローランも氷結の魔法で敵を凍らせたかと思うと反対の火の魔法で火の玉を降らせて帝国軍を倒していた。


 ナナリーナは風魔法でジエルと一緒に空を飛び回り、ジエルが毒液を撒いて敵を溶かし、ナナリーナは竜巻で帝国軍を空に舞い上げていたのです。



 戦いの様子を見ていた獣人国の国王虎獣人

ザガード・ガリバーを始め獣人族は自己紹介で言っていた以上の実力者だと思い、特に魔物女王ジエルの毒液で悲鳴を上げながら溶けていく帝国軍を見て彼女には絶対に逆らうまいと心に誓ったのである。


 たった4人に蹂躙された帝国軍は、司令官の第三将軍も倒されて残った兵士たちは逃げ出してジエルが。


「ナナちゃん逃げる兵士たちはどうする?」


「逃げる兵士はそのまま逃がしたほうが良いよ、帝国に帰って戦いの模様を伝えた方が侵略を諦めると思うから」


「そうね、じゃー、帰ろうか」





 4人が戻るとトムが。


「良くやった! 安心してみていられたよ」


 ナナリーナが。


「初めて戦ったけれど、やっぱり魔法は凄いね。でも帝国軍には魔法使いはいないのかしら」


 此の世界に詳しいローランが。


「此の世界の人たちは魔法を使える人は多いけれど、飲み水を出したり料理をするときに火を起こしたりする生活魔法が殆どで、魔獣と戦っかたりする強力な攻撃魔法を使える人はほんの一握の人たちよ。エルフ族は魔法を使えるけど獣人族は魔法を使えないわ」


「そうなの知らなかったわ」


 情報通のバースが。


「わしもトム様やナナリーナ様のような魔法使いは初めてです。ローラン様は王族なので強力な魔法を使えるのは分かっていましたが・・・・」


 ザガード国王が。


「トム様、帝国をどうしますか?帝国を攻めて倒すなら協力したいのですが、わが国がこのような状態なので・・・・・・・・」


「分かるよ、獣人国の復興を優先してくれ、帝国をどうするかは様子を見て決めるよ。俺たちは国に帰るが何かあったら知らせてくれ」


「助けて頂いたのに真面な接待やお礼も出来ずの申し訳ありません、落ち着いたならフォーク国にお礼に伺います」


「気にするな、それより復興を頑張ってくれ」


  エルフ族と獣人国を救ったトムたちはフォーク国に戻ったのです。

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