第42話 大陸の動乱、その2


 エルフ国の上空について、空から見るエルフ国は、ワイバーンのブレスでエルフ国のあった森林は焼かれて焼野原だった。


 そのエルフ国を焼き払ったワイバーンの姿はなく目的を達したので後を帝国軍に後始末を任せて引き上げたみたいなのだ。


 ライザーがその焼け野原の見える森の中に降り、ライザーの背中から降りたトムたちが見たのは、建物の残骸が残って、焼け殺されたエルフ族の多くの焼死体だったのです。


 余りの酷さにナナリーナが。


「酷い! 酷過ぎるわ! 同じ人間がしたとは思えないわ」


 ローランが涙を拭きながら。


「どうして?・・・・なぜなの?・・・・何故こんな惨い事が出来るの?・・・・まるで悪魔の仕業だわ・・・・・・・」


 その時、


「悪魔でもこんな酷い事はしないわ。人間の方が酷いわ」


 上空に浮かんで顔を歪めて涙を流して叫んでいるのは、真っ黒い短いドレスのような服を着て背中から黒い羽根を出して短い1本の角を持った美少女魔人のサリーだったのです。


 魔人のサリーが現れるのはいつも突然なのでトムは慣れていたが、住民の移動の時に助けて貰った時以来なので。


「サリー、久しぶりだな、元気にしていたか?あの時はありがとう、助かったよ」


 何故かいつもの憎まれ口を言わずに。


「うん、久しぶりね。それにしても帝国軍は酷過ぎるわね。お父様にトム様を助けて、帝国を操っている邪心王のバンダイ・バイオスを倒してこいと言われて来たのよ」


 トムは初めて聞く邪心王のバンダイ・バイオスの名に驚き。


「邪心王?・・・・初めて聞くが邪心王とは何者なのだ?」


「簡単に言えば悪霊や死霊を操る化け物の事よ」


  トムは悪霊や死霊を操ると言われて自分の称号【死霊王】を思い出して。


「死霊王とは違うのか?」


「違うわ! 死霊王は確かに死霊を操る事が出来るけれど、死霊を懲らしめて霊界に送るのが役目で根本的に違うわ」


 死霊王の役目を知ったトムは、自分は死霊王を悪と考えていたのは間違いだと知らされて喜び。


「そうなのか。サリーは物知りなのだな」


「エッヘヘ、もっと褒めても良いのよ」


 いつものサリーに戻りナナリーナが。


「サリーちゃんは、本当は優しいのね。お友達になりましょう」


「えっ? 本気なの? 私は魔族なのよ」


 ジエルが本来の植物王の姿の上半身人族、下半身植物で腰の周りに花を咲かせた姿になり。


「あら! それを言うなら、ほら、私も魔物なのよ。でも、今度トム様と結婚するのよ」


 ジエルの言葉にサリーが口を開けてポカーンとしてから我に戻り。


「・・・・・・うっそー! ジエルさんが魔物でトム様と結婚するの~?・・・・・・それなら私にも・・・・・・・・チャンスが・・・・」


 サリーの最後の言葉は誰にも聞こえなかったです。


 サリーが仲間に加わり、エルフ族の焼死体の転がる焼け野原を歩いると、大きな鉄格子の檻が並んでいるのが見えて。その檻の中100に人くらいに鮨詰めにされたエルフ族が閉じ込められていたのだ。


 それを見たトムは怒りが沸いて来て、遠くから捕まえたエルフ族の手を縛って数珠つなぎにして歩いてくる帝国軍の兵士を見た時に、思わず腰の聖魔法刀を抜き、刀を振り怒りの為か真っ赤な光線で帝国軍の兵士を切り殺していたのです。


 バースが数珠つなぎにされていたエルフ族を助けていると、大勢の帝国軍の兵士がバースを殺そうとして取り囲んだが、少し遅れてバースの所に来たジエルが取り囲んだ兵士たちに毒液を吹きかけて溶かして、驚いた残りの兵士が逃げ出してしまったのだ。


 沢山の檻を守っていた帝国軍がトムたちに向かって来たが、怒ったトムが千人位の兵士を真っ赤な流星を降らせて全滅させたのです。


 トムの怒った姿を見たライガーが。


「馬鹿なやつらだ、トム様を本気で怒らすとは・・・・・・・・・・」


 魔族のサリーも。


「本当ねー! これで帝国も終わりね」


 王都で死霊を全滅させたトムを知っているローランが、ウットリとしてここが戦場なのを忘れて頼りになるトムを見ていたのは内緒なのです。


 ライザーが空から帝国軍の数千の兵士に守られている司令官の場所をブレスで灰にして帝国軍を全滅させて檻に入れられていた全員のエルフ族を助け出したのである




 その日は夜も更けて来たのでナナリーナが鉄の檻を使って創造の魔法で大きな講堂みたい家を建てて疲れ切っているエルフ族は、その家で一晩すごしたのです。


 翌朝からエルフ族が住んでいた国と言うか大きな村みたいな場所の綺麗だった森は、帝国のワイバーンのブレスで焼かれて綺麗な森の面影は無く。


 エルフ族たちは泣きながら顔さえ分からない焼死体を一か所に集めて、エルフ族は火葬をしないので土魔法で大きな穴を作りその穴に遺体を埋めて、墓を作り木の魔法を使えるエルフが残っている木を墓の周りに植えたのです。


 墓が完成すると死者に祈りを捧げ墓の周りで踊りを奉納して普段は2晩かけてする死者を送る儀式を短時間で終えたのだ。


 儀式が済むとエルフ族たちは今後の事を話し合い、此の焼け野原を整理して国を再建する派と移住して新しく住まいを作る派に分かれて意見がまとまらずその晩も講堂に泊まり夜遅くまで話し合いを続けていたのです。


 トムは待ち疲れてローランと残っている森の中で果物を探しているとローランが。


「待って! 呻き声が聞こえるわ」


 呻き声は大きな岩の陰から聞こえ、岩の陰に行くとエルフ族の少女が岩に足を挟まれて骨が折れ痛さで呻き声をあげていたのです。



 トムが魔法で大きな岩を動かして少女を助けたが少女は意識を失っていたのだ。

少女を抱き上げて瞬間移動で講堂とは別に建てたトムたちの簡素な家に連れて帰ったのです。

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