第29話 国作り、その7


 砂鉄の河の場所を離れて再び深淵の森を1番奥の北側を目指して野営をしながら進み、魔獣を倒しながら4日目に山脈の麓に着いたのだ。


 休憩していると、見た事も無い魔獣が現れてその魔獣は、身体は4本足で牛の身体みたいで、何と上半身は20メータくらいの大蛇だった。


 トムが話か掛けても反応が無く鑑定してみると、氷結ブレス(全ての物を凍らす)スキルを持っていたのだ。


 その化け物みたいな魔獣が大きな口を開けたので、氷結ブレスで凍らせられてはたまらないので、トムは移し獲りのスキルで魔獣の氷結ブレスを奪い取ったのだ。


 魔獣が氷結ブレスを吐けなくなり不思議がっている間に魔法聖剣を抜き魔力を流して切りつけると、50メータ先にいた魔獣に赤い光線の光が伸びて、魔獣の身体を縦に真っ二つに切り裂いたのです。


 見ていた皆が驚きドガが思わず。


「スゲー! あの光は何なんだ。光が魔獣を切り裂いたぞ・・・・・・・・」


 ジエルも地面を見て。


「見て! 地面が割れているわ」


 地面を見ると本当に光の通った場所が幅1メータ深さ2メータくらいに地面が裂けていた。


 バースが興奮して。


「トム様は多分この世界で最強ですよ。S級冒険者でもトム様と戦ったら手も足も出ないでしょう」


 トムは移し獲った氷結ブレスを試して刀を振ると、倒した魔獣が凍り付き、珍しい魔獣なのでマジックバックに入れて置いたのだ。


 昼の食事をする為に休憩していると、バースが。


「トム様が羨ましい、私には攻撃のスキルが無く偵察、以外役に立たないので・・・・・・」


 

 トムは考えて、移し獲れるなら移し渡す事も出来るのではないかと思い試す事にして。


「バース、君にスキルを移し渡す事が出来るか試したいが、良いか?」


「えっ?そんな事出来るのですか?やってみて下さい」


 トムが。


【移し獲り、反転】


 バースが。


「熱いー! 身体が熱いー! あれ?熱く無くなった」


 トムがバースを鑑定してみると、成功してバースに氷結ブレスのスキルが移っていたのだ。


「おい、バース鷲の姿になって空から【氷結ブレス】と叫んで息を吹いてごらん」。


 バースが鷲の姿でトムに言われた通りにすると、バースの口ら冷気が吹きだし冷気が吹きかけられた場所が凍り付いたのです。


 バースが空から降りて来て。


「トム様! ありがとうございます。これで魔獣と戦えます」


 ナナリーナとジエルが。


「バースだけズルいわ」


「えっ?だってナナリーナは創造の魔法のスキルがあるからどんな攻撃魔法を使えるし、ジエルは毒液のスキルがあるから、それ以上は要らないだろう」


ジエルが。


「そうですけれど、羨ましかったから言ってみただけです。ウッフフ」


ナナリーナも。


「エッヘヘ、私もジエルさんと同じです」


「もうー、子供みたいなことは止めなさい。今回の調査は此処までにして移転して帰ろうか」


帰る用意をしていると急に空が暗くなり見上げると、何と空にはドラゴンがいたのだ。


ドラゴンは体長が30メータ位あり、ゆっくり羽を動かしてトムたちを見下ろし。


「人間たちよ、何の用で我の縄張りに侵入したのだ? 我の縄張りに来たのはお前たちが初めてだが、もう一度言うが何用なのだ。事と次第によっては我の最強のブレスをお見舞いするぞ」


 トムが落ち着いて対応して。


「俺たちは、深淵の森を調査しているだけで貴方の縄張りを荒らすつもりは無い。ましてや戦うつもりは無い」


「嘘を付け! 人間はずる賢い生き物で騙すのが得意だろう。我の住処を知ったからには死んでもらおう、ブレスで灰になるが良い」


「やっぱり、戦わなと駄目か、ドラゴンは知能が高いと思ったのに・・・・・・・・」


「知能が高いからお前たちに騙されないのだ。ブレスを食らえ」


 トムは仕方ないのでブレスのスキルを移し獲る事にして。


【移し獲り】


 ドラゴンが大きな口を開いてブレスを吐いたがブレスは出ず、ドラゴンは何回もしたがブレスが出ないので慌てていたのだ。


 トムが。


「悪いがあんたのブレススキルは俺が奪い取ったよ」


「馬鹿な、そんな事を出来るはずが無いだろう」


「そうか、じゃー、証拠にあんたから奪ったブレスをお見舞いするよ」


 トムが口からブレスを吐くとドラゴンは慌てて避けて。


「な、何と! 本当に我からブレスのスキルを奪ったのか?」


「だから言っただろう。今はブレスを弱く放ったが次は本気で放つが良いか、降参するなら今のうちだぞ」


「こ、降参だー! 本気でブレスを放たれたら、我でも避ける事が出来ずに灰になるだろう」


「降参するなら、降りてこい」


「分かったが、危害を与えない約束してくれ」


「約束する。俺は嘘をつかないよ」


 ドラゴンが地上に降りて来て人化すると、いかにも武人と言った感じで30代くらいの筋肉質な男性の姿で身長は2メータくらいで肌には所々に鱗が残っていた。


 トムには考えがあったドラゴンに名前を付けて従者にすれば国を守る最強の守り手になると思ったのだ。だからトムはドラゴンに取引を持ち掛けた。


「ブレスのスキルを返して欲しいか?」


「えっ? 返せるのか」


「返せるが条件がある」


「どんな条件だ」


「簡単だ、此の深淵の森に中に俺は国を立ち上げたが君に国の守り主になって欲しいだけだ」


「何と! 深淵の森の中に国を立ちあげたのか?面白い。深淵の森は我の縄張りだからその国を守ろう


「それでは名前を付けても良いか?」


「名前を付けられると我はお主の従者になるが、どうせお主に勝てないのだから良いわ、名前を付けてくれ」


「君の名前は【ライザー】だ」


「ライザーか響きの良い名だ、気にいった。これからは、我の事をライザーと呼んでくれ」


 流石に最強のSS級魔獣のドラゴンだ。

トムは魔力をごっそり持っていかれて気を失いかけたのだ。


 ジエルが心配してトムの身体を支えて。


「トム様、大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫だ、少し休ませてくれ」


 近くの岩に腰かけて少し休むと今までに比べて回復が早く、普通の状態に戻ったので。


「ライザー、約束通りスキルを戻してあげるよ」


 そう言ってブレスのスキルを戻してあげたのだ。


 ライザーが空に向かってブレスを吐いてみて。


「主よ、約束を守って、スキルを返してくれてありがとう、主様は約束を守る人間だと分かった。我の力は主様に捧げよう」


「ありがとう、助かるよ。その主様と呼ぶのは止めてトムと呼んでくれないか」


「流石に主を呼び捨てに出来ないからトム様で勘弁してくれ」


「うん、わかった、それで良いよ」


 思わぬ成り行きでドラゴンを従者にしてキョウト街に帰ったのである。

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