第19話 ロラタ王都で、その3


 その晩にジエルと相談してフォーク村を出てから余りにも色々あり、一旦フォーク村に帰る事にしたのです。


 翌朝の食事の後にアイオイ国王にフォーク村に帰る事を告げるとローラン王女が。


「ええー! もう帰るのですか?・・・・・・

私も一緒に行ってトムさんの村を見て見たいな。お父様駄目ですか?」


「今は、王都の復興に全力で取り組まないといけないだろう、ローランにも手伝って欲しいから行くなら復興が済んでからにしなさい」


「そうでしたわね、トムさん王都の復興が済んだら又王都に来てくださいね。その帰りに私をフォーク村の見学に連れて行ってくれませんか」


「俺の住んでいる村は何も無いし、人間も少なく住人は、獣人族、魔物、魔獣、その他色んな種族ばかりで面白く無いよ」


 キーソン王太子が驚いて。


「ええー! 魔物、魔獣も一緒に暮らしているの? 魔物、魔獣は凶悪なのに弱い他の種族を襲って食い殺したりしないのか?」


「最初は俺も、ダンジョンにオーガキングのエサとして置き去りにされて食われそうになったからそう思ったよ。でも人間にも良い人と悪い人がいるように、魔物、魔獣は凶悪だと決めつけているが良い魔物、魔獣もいる事が分かって、フォーク村に住んでいるオーガキングは凶悪な魔獣や魔物から弱い住民を守っているし、村長はゴブリン・キング・オブ・キングスだよ」


 シャルル王妃が疑問に思ったのか。


「でも、善人か悪人かどうして見分けるのかしら」


「俺は善悪を見分ける鑑定の目を持っているからそれで見分けている」


 今度は国王が驚いて。


「何と! トム君は鑑定の目を持っているのか?」


「はい、ダンジョンの管理人だった魔法使いから頂きました」


「そのダンジョンの管理人の魔法使いは余程トム君を信頼していたみたいだな」


「信頼していたかどうかは分かりませんが俺にとっては恩人です」


 話の途中で使いが来て復興の為の会議が始まると言われて、トムとジエルは王族に別れを告げて王城を出たのです。




 王城の門にいる近衛騎士たちに見送られて王城の前の広場に行くと、トムを見て小さな男の子が。


「あっー! 死霊を成敗してくれた英雄様だー」


 子供の声で住民たちが騒ぎ出して。


「本当だ! トム様だー」「死霊を聖の魔法で全滅させた英雄様だ」「空を飛べる英雄だー」


 まさか自分の名前まで知っているとは思わなかったトムは魔法団長キングイが言った。


「トムは英雄で今では有名人だから街に出たら大変だぞ、覚悟しておけよ」


 言葉が本当だったと思い知らされて慌てて瞬間移動して崩れかけた建物の中に逃げてジエルと移動すると。

逃げ込んだ建物の中に10人位の子供がいて、急に現れたトムとジエルを見て驚いていたのだ。


 ジエルが驚かせた子供たちに。


「驚かせてごめんね。私たちは・・・・・・」


ジエルが最後まで言う前に1人の子供が。


「空で死霊を全滅させたお兄さんとお姉さんだ」


「あら! 知っていたの?」


「うん、見ていたから知っているよ」


「所で、あなた達は此処で何をしているの?」


一番年上と思われる少女が。


「此処は孤児院だったのですが死霊に襲われて半分以上の園長や子供は殺されて、残った私たちは行くところが無いので・・・・・・」


 トムが自分も孤児院育ちなので子供たちの境遇が分かり、国王に孤児たちの面倒を見て貰おうと思ったが、今は王都の復興と家を無くした住民たちの対応が精一杯で難しいと思い。


「そうだったのか。君たちは俺の住んでいる森の中にある村に俺たちと一緒に住む気はあるかな? 住む所と食べるものは保証するが、どうだろう」


「皆と相談するので少し待ってもらえますか」


「うん、良いよ。ゆっくり話し合いなさい」


 子供たちが話し合っている間にジエルが心配して。


「トム様、あの子たちがフォーク村になじめるでしょうか」


「子供は適応力があるので大丈夫だと思うよ。それに村人は善人ばかりだから、最初は戸惑うだろうがすぐ皆と仲良くなるだろう」


 子供たちが話し合いを終わり年上の少女がトムに。


「たしかトム様でしたよね、此処にいても食べ物も無く生きて行けないのでトム様について行きます。宜しくお願いします」


「分かった。俺が責任をもって君たちの面倒を見る約束をするから安心してくれ」


 ジエルが。


「トム様、子供たちをフォーク村まで歩かせるのは無理ではないですか」


 トムは空間魔法を使ってフォーク村に移転しようと考えたが1度に何人移転出来るか調べる為にスキルを見ようとしてステータスを開くと。


  名前 トム

人族 男 18歳

称号 聖剣の使い手、

   死霊王(死霊を操る事が出来る)

レベル・・10(最大10)

生命力・・100(最大100)

魔力量・・限界突破(最大1,000)

スキル

移し獲る、(相手のスキルを奪い取り自分のものにする)

創造の魔法(全ての魔法が使えて、新しい魔法を作れる)

鑑定の目(物の特性、善悪、ステータスを見れる)

空間魔法、(瞬間移動、空間移転〈最大100人まで可能〉、無限収納、他)

言語翻訳

(全ての言語、理解、話す事が出来る)

聖魔法、防御魔法、隠蔽魔法


 ステータスを見て驚きの余り無言でいたが、トムの様子がおかしいのでジエルが。


「トム様、どうかしました?」

 ジエルに言われて正気に戻ったトムは、動揺を隠して冷静を装い。


「ん? 何でもないよ、移転魔法で何人まで移転出来るかスキルを見ていただけで、この子たち全員を移転させられる事が分かったかよ」


「良かった。じゃぁ、今から帰りますか?」


「うん、又、住民たちに騒がれると面倒なので

帰ろうか」


 1番年上の少女が。


「急に私たちがいなくなったら心配されるので知り合いの人に知らせて来るので少しだけ待って下さい」


 と言い出て行き、少しして戻り、トムは孤児10人を連れてフォーク村に移転して帰ったのです。

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