第1話 家族以外と話すのは1年ぶりかな

『無職な僕はいつも元気さ』 1話

ボサボサの髪の毛のまま彼は携帯を操作して初めてのツイートをした。

『ハロー、僕の名前はウォーター、僕は今25歳で無職1年目、僕の話をするから僕のツイートを見ていて』

そのツイートに反応したのはシンガーソングライターのユナカだった。

彼女は彼の投稿にイイねした。

そしてコメントを残した。

『どんな内容か気になるからフォローしとく、私があなたの1番目のフォロワーだからよろしく』

それを見たウォーターはぐっとボタンを押した。

そして続けざまにツイートした。

『僕が無職になる1年前ある会社で仕事をしていた。僕はそこで2度パワハラに遭った。1度目は男の先輩に2度目は女の先輩にだ。多分これは訴えてもイイぐらいの案件だと思う。ただ証拠がないからなんとも言えない。僕はそのパワハラによって、トラウマから抜け出せなくなった。今でも鮮明にその記録が頭を巡る。それは、日常の中でも同じだった。あの時の記録が頭を巡り日常を壊すんだ』

こんな内容を2度に渡り、ツイートした。

ツイートした反響は特にない。

いいねの嵐にリツイートする人なんていない。

だけどフォローしてくれたユナカだけは違かった。

彼女は僕にDMをくれた。

『私はウォーターくんみたいな経験はしていない。けれど、ウォーターくんには幸せになって欲しい。今は働いていなくて働くことが大事だとさえ思う人はいるかもだけど、働いていなくても幸せだったらそれでイイと思うよ。今はとにかく療養第一だから、体も心も大事にしてね』

僕は彼女の文章にいいねをつけた。

見えない相手だからこそ余計にメッセージをくれたことにウォーターは嬉しかった。

誰かとTwitterで繋がれた嬉しさから、ウォーターは死ぬことを諦めた。

そう、彼は自室で首を吊る前にTwitterで話を聞いてもらうために初めてツイートしたのである。

ユナカは知らない間にウォーターを救っていたのだった。

ウォーターはツイートをした。今度は決意表明の意味も込めてだった。

『ハロー、僕は死ぬのを辞めた、生きる、生きてやる』

彼のツイートに今度はユナカだけでなく他の人が反応した。

ウォーターは天井上に吊るされた紐を片付けて、下に積まれていた本もしまった。

机の上にある遺書を机の中へとしまい込んだ。

そして、母の声がするリビングへと階段を降りていった。

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無職な僕はいつも元気さ ソノハナルーナ(お休み中) @eaglet

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