第43話 爆発
私は全速力でニトロスライムから逃げる。
爆発するまでに数秒あってくれたのが不幸中の幸いだ。
次の瞬間、キングゴブリンの咆哮と同じくらいの音が洞窟内に鳴り響いたと同時に、私は爆風で前に吹き飛ばされた。
その勢いで私は壁に叩きつけられた。
普通の人なら間違いなく死んでいる。
けど、私は身体強化のスキルを取っていたおかげでなんとか助かった。
「うっ……、いった……いっ……」
身体強化があっても重傷なことには変わりない。
打ち付けられたせいで体に力が入らない。
足には爆風で飛んできた石の欠片が刺さって、おまけに頭からは血が流れてきている。
「とりあえず回復を……」
朦朧とする意識の中で私はリュックから【治癒のポーション(小)】を取りだしてすぐに飲み干す。
「ふぅ、なんとか助かったよ……」
ポーションを飲んだおかげで残り2割くらいだったHPは半分まで回復し、頭から流れてきている血は止まった。
体の痛みはマシになってきたけど、力はまだ少ししか入らない。
負傷した部分が多すぎたせいか、ポーションがちゃんと効くまでに時間がかかるみたいだ。
でもそれを待っている時間はない。
自爆の効果に書いていた危険を感じた時というのがどういう時か分からないけど、さっきの音で他のニトロスライムたちがもし危険を感じていたらどうなるかある程度予想がつく。
1体の爆発であの威力、それが30体以上いる。
30体以上いるニトロスライムが同時に爆発したら間違えなくこの道の天井が崩れる。
それだけで済んだらまだマシかもしれない。
床が崩れて下に落ちたりする可能性だってある。
まあどっちにしろ生き埋めになることに変わりはないけどね……
私は足に刺さっている石の欠片を取り除いた後、すぐに立ち上がる。
「うぅっ、いたっっ……!」
立ち上がったと同時に足に激痛が走るけど気合いで耐えるしかない!
私は壁に手をつきながら少しずつ前に進む。
「もう少し、もう少しすればポーションが効き始める。それまでの我慢だ……!」
その時、後ろからまた爆発音が聞こえた。
1体や2体どころじゃない。
何十体も爆発したような音だ。
さらにその音に続けてまた別の音が聞こえた。
2階層来てすぐに聞いた音――天井が崩れる音だ。
「急がなきゃ……!」
私は速度を上げる。
たとえ足が壊れようとも止まるわけにはいかない。
「生き埋めになんてなってたまるか、だよ!」
だんだんと足の痛みが少しだけマシになっててきた。
足の感覚が麻痺して痛みを感じなくなったのか、それともポーションが効き始めたのかは分からないけど、これなら走れる。
「早く、早く出口来て、よ……!」
私は無我夢中で走った。
気づいた時には周りの景色が変わっていた。
周りには前に見た鍾乳洞っぽいものがいっぱいある。
でも前の場所とは違うことはすぐに分かった。
鍾乳洞っぽいものの色が違うからだ。
前のは白色だったのに対して、ここにあるのはオーロラのような色だ。
「前のよりこっちの方が映そうだよ………………」
そんなことを思ったからか気が抜けて私はその場にへたり込んでしまった。
ポーションの効果で体に痛みはないけど、もう1歩も動けない。
このままここで寝てしまいたい気分だよ。
私は少し休憩した後、思い出したかのように後ろを振り返った。
後ろには天井が崩れた横穴が見える。
さっきまで私が走っていた道だ。
崩れた天井の中に綺麗な石が見える。
「なんだろうあれ……」
気になった私は疲れた体を動かして石のところまで近づいた。
「なーんだ、ただの魔石かぁー」
鍾乳洞っぽいものの光を反射して綺麗に見えていただけの魔石だった。
ニトロスライムの魔石が爆風で飛んできたのかな。
放置していてもスライムが吸収してニトロスライムになるだけだから拾っておく。
ニトロスライムはもう見たくない。
魔石を拾った後、少し休憩して私は進み始めた。
鍾乳洞っぽいものがある所は天井も高いし、道幅もめちゃくちゃ広い。
この道の先に階段があったらいいなーなんて思いながら進む。
ポイズンスライムとかゴブリンスライムとかいろいろ出てくるけど、今の私に戦う体力も気力も残っていないから全部無視だよ。
そのまま道なりに進んでいると何か見えてきた。
「嘘だと言ってほしい、な……」
私の目の前に見えるのは少し前に見た縦穴。
その縦穴の先には私がさっきまでいた場所が見える。
つまり今私がいる場所は縦穴を渡ったところというわけだよ。
「もしかして詰んだ……?」
引き返そうにも天井が崩れたせいで引き返せない。
前には縦穴、他の道はないことも無いけど……
その時に後ろでまた爆発音が聞こえた。
ニトロスライムが勝手に爆発したんだろう。
私には関係ないから別に……!?
振り返ってみると地面に亀裂が入っている。
私はすぐに状況を理解したけど、その時にはもう遅かった。
「嘘……!?」
私が立っている場所は爆発によって切り離され、私は暗い縦穴の底に落ちていった。
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