第41話 無駄な争いはしたくない

 鍾乳洞っぽいものがある場所をあとにした私はほふく前進しないと通れないくらい狭い道を通って分かれ道のところまで戻ってきた。

 気をつけていたのに服が壁に引っかかってお腹の横あたりの部分が破けちゃった。

 まあまあお気に入りの服だったから少し悲しい……


 でも今は破けた服のことを悲しむよりも先に進む道を選ばないといけない。


 こういうのは悩むよりも直感で選んだ方がいいって涼っちが前言ってた。


「さっきは1番右だったから今度は1番左の道にしよー!」


 というわけで1番左の道を進んでいく。

 道幅は1人でギリギリだから前とか後ろからモンスターが来たらかなりやばい状況だよ。

 フラグとかじゃないからね!


 あとね、この道キノコが生えていないから暗い。

 鍾乳洞っぽいものが折れたやつを持ってきていて良かったよ。



 進むこと約10分。

 前からモンスターが


「どうしてこのダンジョンにゴブリン? でもこのゴブリン、いつもゴブリンの硬そうな皮膚と違ってなんか潤ってる気がする。こういう分からない時はまず鑑定だ!」


 ――――――――――――――――――――――――

 ゴブリンスライム(オリジナル)

 状態:正常

 HP:500

 攻撃力:650

 防御力:400

 スキル:なし

 装備:【朽ちた棍棒】

――――――――――――――――――――――――


 ゴブリンスライムってたしかゴブリンダンジョンにたまーに出る緑色のスライムだよね?

 オリジナルになったらゴブリンみたいになるとかそういう感じなのかな。

 それと相変わらずの高ステータス。

 キラー頼みになりそう――ってかゴブリンスライムにキラー発動するよね?


「おねがいっ!」


 キラーが発動してくれることに願ってゴブリンスライムの腹を切り裂く。

 切られたゴブリンスライムは一瞬怯んだけど、すぐに棍棒で反撃してきた。


 反撃といってもただ棍棒を振り回すだけだけどね。

 私に気づいたというより、何かに攻撃されたからとりあえず反撃したという感じに見える。


 でも私はそんな攻撃に当たってあげるほど優しくない。

 ていうか当たったらたぶん死ぬよ。


 私は棍棒をバックステップで避けて、ゴブリンスライムから距離をとる。


 そしてすぐに鑑定してHPの減りを確認してみると半分以下になっていた。

 キラーはちゃんと発動しているみたいで一安心だ。


 とどめを刺すために棍棒を振り回しているゴブリンスライムに野球ボールくらいの大きさの石を投げる。

 もちろんこれがとどめなんてことはないよ。


 石が顔に直撃したゴブリンスライムはほんの一瞬怯み、棍棒を振る手が止まった。

 そのタイミングを狙って私は短剣で首元を一突き。

 ゴブリンスライムは持っている棍棒を落として魔石に変わった。


「ここはふ〜、いい戦いだったよ。みたいなことを言ったりする場面かな? でもはたから見たら一方的な虐殺にも見えるような……ていうか私のこと誰も見えないんだった……」


 なんか締りがいまいちだけどまあいいや。

 魔石とドロップした棍棒をさっさと拾おう――と思ったけど、新しいスライムが出てきた。

 今度は普通のスライムだよ。

 魔石とかの回収よりもこっちを倒すのが先だ。



 倒すために近づこうとしたらスライムがなぜかもうスピードこっちに突っ込んできた。


「わぁっ!? いったたたたたたぁ!!」


 とっさにジャンプしてスライムを避けたら、洞窟の天井に頭をぶつけた。

 ここ道は狭いんだったよ……いてて……


 頭を抑えながら避けたスライムを見てみるとゴブリンスライムの魔石を吸収していた。

 吸収ってどういうことって思った?

 私も思った。

 でもどう見ても吸収しているようにしか見えない。

 スライムって身体のどこからでも吸収できるようになっているみたいだね。


 そんなことを考えているうちにスライムは魔石を吸収し終えた。

 次の瞬間、スライムが光って前が見えなくなった。


「――ッッ!?」









 少し経って、チカチカして前が見えない状態がマシになってきた。

 スライムはどうなったんだろう。

 爆発でもしたのかな?


 目が見えるようになってスライムを探してみたけど、いるのはゴブリンスライムだけ。

 てかさっきまでこいついたっけ?

 もしかして魔石吸収してゴブリンスライムになったの?


「ダンジョンって不思議がいっぱいだよ……」


 とりあえず目の前にいるゴブリンスライムを倒す……なんてことはしない。


 さっきジャンプした時にスライムの位置が私の後ろにいった。

 つまり私の進んでいる方向にはいない。


「私は無駄な争いはしないのさっ! ばいば〜い!」


 そう言って私はその場から離れた。

 少し離れてから後ろを確認したけど追いかけてきたりはしてないみたい。

 気づかれてないから、追いかけられるわけもないか。


 それから少し進むとだんだんと道の先が明るくなってきた。

 ということはそろそろ別の道と繋がるということだ。


「階段があったらいいなっ!」

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