第40話 ここはどこ、私は……

 ここはどこ私は…………私だよ。

 かれこれ30分くらいダンジョンの2階層だと思う場所をさまよっているけど、階段が全然見つからない。

 スライムは1分に1体くらいの頻度で出てくるけどスライムキラーのおかげで今のところなんとかなっているよ。


 2階層を探索していて思ったことが1つある。


「ここってほんとにダンジョンなの?」


 転移してきた時もそう思ったけど、2階層に来てさらにそう思うことが増えた。

 ダンジョンっ言うより洞窟っぽい。

 そう思った理由もちゃんとあるよ。


 まず1つ目の理由。

 歩いている途中に見かけた光る鍾乳洞っぽいもの。

 私がこれまで行ったダンジョンにはそんなもの無かったし、これまで見たアプリの情報にもそんなこと書いていなかった。

 私が見落としてるだけの可能性もあるけどね。


 鍾乳洞っぽいものが折れているのが落ちていたから拾って明かりの代わりにしているよ。

 キノコの明かりだけじゃ暗い場所もあるし、キノコが生えていない階層もあるかもしれないし、明かりは大切だ。

 

 次に2つ目の理由。

 ダンジョンの形って言ったらいいのかな。

 いつものダンジョンの道は一直線で曲がり角は十字やL字、T字といったようにかくかくしていた。

 テト○スができそうな感じ。


 けど、このダンジョンは道幅もバラバラ、天井の高さもバラバラ、狭くてほふく前進でしか進めないような道もあった。

 壁のでっぱりに引っかかって服が破れかけた時は危なかった。

 1人とはいえダンジョンで下着姿は恥ずかしいよ。


 他にも4方向に分かれている分かれ道やくねくねした道なんかもあった。

 おまけに目の前で天井が崩れてきたりもした。

 あの時は死ぬかと思ったよ。


 そして最後の理由。

 これが1番洞窟っぽいと思った理由だ。

 それは今私の目の前にある巨大な縦穴。

 穴の直径30mはありそう。

 いつものダンジョンにこんなのあったらニュースになってるよ。


 縦穴には3mくらいの蜂が飛んでいたり、穴の底に龍がいたりなんてことのないただの縦穴。

 底が見えないからほんとに龍がいないかは分からないけど、一応スライムダンジョンだからスライム以外はいないと思う。

 ドラゴンスライムなんてスライムがいたりする可能性がないとも言えないけど……


 でもこの穴の底に何かありそうな予感がする。

 ボス部屋があったりして。


 底が見えない時点で降りれる高さじゃないことは分かるけど、こういうのはちゃんと調べてみるべきだ。


 ということで私は近くに転がっているハンドボールくらいのサイズの石を拾う。


「えいっ!」


 掛け声とともに穴に石を投げ込む。







 数秒経っても何も聞こえない。

 あのサイズの石が落ちても音がしない深さって降りれるわけがない。

 自殺したい人はどうぞって感じだね。


「はぁ……諦めて別の道を探すしかないか……」


 穴を越えた先にも道があるけど、今の私には越えるための手段がない。

 だから来た道を戻って、別の分かれ道を進むしかできない。


「とりあえず鍾乳洞っぽいものがあるところまで戻って少し休憩しよう。足がそろそろ限界だよ……」


 私はもう動きたくないと言っている足を無理やり動かして鍾乳洞っぽいものがあるところまで戻ってきた。

 慣れないでこぼこ道を歩いたからいつもより体力の消耗が激しい。


 地面に座ったら汚れそうだからいい感じの形をした鍾乳洞に座る。

 ひんやりしていてなかなか気持ちいい。

 それと思ったけど、この鍾乳洞っぽいのすごい映そう。

 SNSとかに投稿したらすごい伸びそうな予感がする。投稿しないけど。


「休憩している間暇だし、写真でも撮って帰ったら涼っちたちにも見せてあーげよっ!」


 というわけでスマホを取り出してカメラを起動。

 自撮りは嫌だけど、そうしないと涼っちに怒られそうだからインカメにする。

 それが嫌なら初めから撮らなかったいいじゃんって言われそうだけどそんなこと気にしない。


 スマホを持っている腕を限界まで伸ばしてパシャリ。

 自撮り棒みたいなものでもあったら良かったのになんてことを思いながら撮った写真を確認する。


「目もつぶってないし、結構いい感じ……あれ? 端っこになんか写ってる……」


 紫色の謎の物体が映り込んでいる。

 まさか心霊写し……


 私はすぐに振り返って鍾乳洞っぽいものの方を見る。


「あっ、なんかいるっ! とりあえず鑑定!」


 ――――――――――――――――――――――――

 ポイズンスライム(オリジナル)

 状態:正常

 HP:300

 攻撃力:300

 防御力:300

 スキル:「毒合成」

 装備:なし

――――――――――――――――――――――――


 やっぱりステータス異常に高い。

 隠密がなかったら軽く10回くらいは殺されてるよ。


 ポイズンだろうがなんだろうがスライムはスライム。

 スライムキラーでたぶん一撃だ。


 私は立ち上がって短剣を一振。

 真っ二つに切れたポイズンスライムは魔石に変わる直前、その場に謎の液体を撒き散らした。


 幸い私にはかからなかったけど、鍾乳洞っぽいのはドロドロに溶けている。

 もしかしなくても毒だ。

 それもたぶん1発食らったらアウトな猛毒。

 かかっていたら私も鍾乳洞っぽいのと同じようになっていたと考えると背筋がゾッとした。


「経験値が多いわけでもないし、ポイズンは倒さず無視した方がいいかもね」


 私はポイズンスライムの魔石を回収しようとしたけど、毒液まみれだったので諦めた。

 ていうか毒液で溶けてない魔石って何でできてるの?


「ダンジョンって不思議だ」


 そんなことを呟いて私はまた探索を再開した。

 あんな毒液まみれのところに長居したくないからね!

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