第33話 隠し事

 新スキル新スキル……


「何かいいスキルないかな〜♪」


 私はスキルの一覧を見ながらそう呟く。


「ほかりん1人で何ブツブツ言ってるの?」


「スキルポイントがたまったから新しいスキルでも取ろうかなって」


「スキルポイントって?」


「説明するのめんどくさいから自分で調べて」


「このめんどくさがりめ! ことりんに聞くからいいもーんだ。ことりん教えて〜♪」


 人にめんどくさがりって言うくせに自分は調べないんだね……


 ことりさんは急に話を振られてテンパっていたけど、すぐに落ち着いて丁寧に説明してあげていた。

 ことりさんはやっぱり真面目だ。


 そんな2人のことはほっといて私はよさげなスキルを探す。


「スキル〜スキル〜っと――おお!! このスキルは結構いいかも!」


 ――――――――――――――――――――――――


 身体強化(必要スキルポイント500)


――――――――――――――――――――――――


 必要スキルポイントは500とちょっと多めだけど、それくらいの価値がありそうなスキルだよ。


 スキルの効果は名前の通りで身体が強化される。

 例えば足が少し早くなったり、ジャンプ力が上がったり、力が強くなったりするよ。

 骨とかも強くなるから骨折とかも減るんじゃないかなー。


「よし、これに決めた。このスキルをください!」


 私がそう言うと画面が切り替わった。


 ――――――――――――――――――――――――

 穂刈 琴音ほかり ことね 16歳 レベル50 スキルポイント 150

 状態:隠密

 HP:135

 攻撃力:160

 防御力:131

 固有スキル:「隠密」

 スキル:「初級氷属性魔法」「鑑定」「念話」「身体強化」

 装備:【スライムの短剣】【成長の指輪】【力の指輪】

――――――――――――――――――――――――


 スキルのところに身体強化が増えている。

 ステータスが上がったりはしていないけど、スキルが発動していないとかそう言うことではないよ。

 ステータスの攻撃力は与えられるダメージの話で、実際の力とは別物だからね。

 だから攻撃力が500あっても、私みたいに力が弱い人はことりさんが持っていたような剣を持ったりはできない。

 まあそれくらい攻撃力が高い人は短剣で普通の剣くらいの威力を出すことはできるけどね。


 早速試したいけど、家の中でしない方が良さそうな気がする。

 また今度ダンジョンに行った時にでも試そう。


「確認も済んだし、どんどんアイスを食べるぞ〜!」


 私はあらかじめ【アイテムポーチ】に入れておいたアイスを取り出して食べ始める。


「1日で食べ切ったりしたら今度から買ってあげないからね?」


「らいじょうぶらいじょうぶ……たぶん……」


「飲み込んでから話しなよ……」


 そう言われた私はアイスを飲み込む。


「そういえばことりさんってレベルどれくらい上がったの?」


「えーっと、確認してみますね」


 ことりさんはそう言ってステータス画面を開く。


「確かダンジョンに入る前がレベル20だったので、ちょうど20上がって今はレベル40です」


 経験値が2倍になっていなくてこれってゴブリンキングやばすぎない?

 1人でゴブリンキングを狙ってゴブリンダンジョンを周回したら経験値の効率がやばいことになりそう。

 私ならそんな命を捨てるようなことはしないけどね。


「スキルポイントは何に使うの? 私は身体強化を取ったよ。ことりさん重たい武器ばっかりだから身体強化を取ってもいいんじゃない?」


「身体強化はちょっと……」


「ちょっと……?」


「いや、な、なんでもないです……スキルポイントはためておきますね……」


 何を言おうとしたんだろう。

 言いたくなさそうだからわざわざ聞いたりしないけど、少し気になるよ。


「ことりん朗報。ついさっき電車復旧したっぽいよ」


「ほんとですか!? な、なら私帰りますね……お邪魔しましたぁ……」


 そう言ってことりさんは逃げるように家を出ていった。


「ことりさん服忘れてる。それに私の服も持って帰ってるよ……」


 また今度会った時に交換すればいっか。

 それにしてもどうしてあんなに慌てていたんだろう?


「私もそろそろ帰ろうかな」


 涼っちはそう言って席を立った。


「今雨降ってるよ」


 ことりさん傘持ってなかったけど大丈夫なのかな。


「私いいこと思いついた!」


 にやつきながら言っている時点でいいことではないなと思った。


「このままほかりんの家に泊まろう! 我ながら名案だ!」


 想像の10倍以上ひどかった。


「今すぐ帰って!」


「せっかくの夏休みなんだし、別にいいじゃんかー!」


「しょうがないなぁ……雨がやまなかったら泊まっていいよ」


「ほんとに? さすがほかりん! 約束だよっ!」


 涼っちが部屋の中でくるくる回り出した。


「分かったから少し落ち着きなよ」


「ほかりんの家に泊まれるなんて落ち着いていられるわけないじゃんか!」


 泊まったら1日中こんな感じに騒がれるんだろうなと思ったら急に頭が痛くなってきた。

 それに気持ち悪くて吐きそうだよ……


「ちょっと気分悪いから寝てくるね。また後で起こして……」


「りょ!」


 もしかしなくてもこれがポーションを飲みすぎた副作用だ。

 それしか考えられない。


「最悪な気分だ…………」

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