第32話 みんな来た

 その後、私はことりさんの必死の説得のおかげでなんとか助かった。

 もちろんアイスは買って貰えなかったけど、それで済んだだけでも十分マシだよ。


『ところで涼っちはどこに向かってたの?』


『さっきゴブリンダンジョンが震源地の地震があったから見に行こうかなって。あとなんでLEINでの会話なの? 電話でした方が早い気が』


『えっとね、今日ダンジョンで色々あって耳が聞こえなくなったんだよ。だから電話は無理だよ』


 目の前で涼っちはスマホの画面を二度見していた。


『……はい? 耳が聞こえなくなったの? よくそんな状況で呑気にアイスなんか食べていられるね……』


『アイスはおいしいから耳も治るんじゃないかな』


『ほかりんは耳より先に頭を治してもらった方がいいかもしれないよ』


『それってどういう意味かな?』


『自分で考えて♪』


 涼っちがにやにやしながらこっちを見ている。


『喧嘩売ってるの?』


『まぁそんなことは置いといて早くほかりんの家行こうよ。こんなの道の真ん中にずっといたら変なやつって思われそうで嫌だし』


 話を変えるな!


『ゴブリンダンジョンに行くんじゃなかったの? あと私の家には来ないでください』


『だってどうせ地震の原因ってほかりんたちでしょ。だからわざわざ行かなくてもいいかなって。そんなわけで早く行こ』


 私なんも言ってないのにどうして私たちが原因て分かったの?

 やっぱり涼っち心を読むスキルとか持ってるないよね?

 あと自分の家に帰るノリで人の家に来ないでもらいたい。


『来ないでください!』


『あいす』


『早く行くよ』


『ちょろ……』


『ん?』


『くないです』


 やっぱり涼っちだけ置いて行こうかな。


「あのー、盛り上がっているところで悪いんですけど、早く帰らないとポーションの効果が切れちゃいますよ」


「あ! 忘れてたー! ありがとことりさん!」


 というわけで私とことりさんは急いで家に向かった。

 涼っち?

 涼っちは今コンビニでアイスを買ってくれているよ。


『覚えてろ!』


『ありがと涼っち。だいすきだよー!』


 ★


 私は家に着いてすぐ【治癒のポーション(大)】を飲んだ。

 これで骨折は治ったはずだ。

 耳も治ってたらいいけどどうだろう。

 ことりさんか涼っちが来たらその時にでも確認しよう。


 涼っちが家に着くのが先かことりさんが風呂から上がるのが先か。


「シャワーを貸していただきありがとうございました。あと服もです」


 先に来たのは私の服が私よりも似合っていることりさん。

 水色の髪がいい感じになっていてずるい。

 あと耳が聞こえるようになってる!

 ポーションって思ってたよりもチートだったんだね。


「全然いいよー! 私もお風呂入ってくるからのんびりしててね! あと涼っちが来ても鍵空けなくていいからね!」


 私がそう言うとことりさんは笑みを浮かべながら頷いた。


 ★


 風呂を出た私はリビングに向かった。


「ほかりんアイス代よこせー!」


 リビングに着いてすぐそんなことを言われてびっくりした。

 もう電話繋いでいるし、準備万端すぎない?


「涼花さん嘘はよくないですよ。本当はそんなこと思ってなんか……」


 ことりさんナイス!


「ことりん……?」


「なんでもないです……」


 ……ん?

 今の状況に理解が追いつかない……


「ことりん? まずことりんって何? あと涼っちことりさんに何やってるの?」


「ことりんはことりんだよ。ほかりんみたいな感じ」


「それは分かるけど、仲良くなるの早すぎない?」


 涼っちはコミュ力の塊か!


「ほかりんの話をしていたら盛り上がっちゃっただけだよー」


「私の話で勝手に盛り上がらないでほしいな……」


「涼花さんがダンジョンでのことねさんについていっぱい聞いてきて……涼花ことねさんのこと好きすぎですね」


「犯人はやっぱり涼っちか!」


「これは、その、私のせいじゃない……」


 涼っちの顔が真っ赤になっている。


「ふふふ。2人ともほんと仲良しですね!」


「「仲良くないから!!」」


 私と涼っちがそう言ってからしばらく沈黙が続いた。


「アイス食べよ」


「あ、私のも取って」


「私のもお願いします」


 ここって私の家だった気がするんだけど、気のせいかな。

 そんことを考えながら冷凍庫からハゲンダーツを3つ取り出す。

 これって結構高いのに、涼っち太っ腹だー。


「私ストロベリー!」


「私はなんでもいいですよ」


「私はバニラでいいかな」


 ことりさんのは余りのチョコになった。


 溶ける前に食べ始める。

 おいしい。

 とにかくおいしい。

 食レポみたいなことは私はできないよ。


 私は食べながら、色々あって確認できていなかったレベルの確認をしていた。


 ――――――――――――――――――――――――

 穂刈 琴音ほかり ことね 16歳 レベル50 スキルポイント 650

 状態:隠密

 HP:135

 攻撃力:160

 防御力:131

 固有スキル:「隠密」

 スキル:「初級氷属性魔法」「鑑定」「念話」

 装備:【スライムの短剣】【成長の指輪】【力の指輪】

――――――――――――――――――――――――


 ゴブリンキングを倒したおかげでレベルが13も上がっていてかなりびびった。

 2度見どころか3度見したよ。

 いつの間にかスキルポイントも結構たまっていたから何か新スキルでも取りたいね。

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