第24話 新スキル

「あっ、忘れてたー!!」


 危ない危ない。

 このままダンジョンに入ってたら大変なことになっていたよ。


「どうしたんですか?」


「えっーと、小鳥さんってスキルポイント余ってたりしませんか?」


 余ってなかったら私のスキルポイントを使えばいいだけだから大丈夫だけど、一応聞いておく。


「あのー……スキルポイントってなんですか? ステータス画面に書いてあることは知ってはいるんですが、使い方が未だによく分からなくて……」


 使い方を知らないってことはまだ使っていないってことでいいよね?


「ほんとですか?」


「ほんとのほんとです!!」


 そう言うと小鳥さんはステータス画面を開いて見せてくれた。


  ――――――――――――――――――――――――

 宮倉 小鳥みやくら ことり 17歳 レベル20 スキルポイント 280

 状態:隠密

 HP:37

 攻撃力:43

 防御力:48

 固有スキル:「正直」

 スキル:なし

 装備:【氷結の剣】

――――――――――――――――――――――――


 ステータス画面は自分だけしか見れないように表示することも、誰でも見れるように表示することもできるようになっている。

 だからステータス画面を開いただけで周りにいる人に自分の名前が公開されてしまう、なんてことにはならないから安心だよ。


 まあとりあえず、スキルポイントの使い方を教えてあげよう。

 ――って言ってもそんな難しいことをするわけじゃない。

 スキルポイントの表示をタップしていくだけだ。


「琴音さん、これであってますか……?」


「あってますよ!」


 小鳥さんにはスキルポイントを200使ってもらって、念話というスキルを獲得してもらった。

 念話は声に出さなくても頭の中で会話ができるようになるスキルだよ。

 普通の人はこんなスキルがなくても会話できるから取る人なんていないけどね。

 このスキルを獲得してもらった理由はダンジョン内での会話をするためだ。

 ダンジョン内だと圏外になっちゃうから電話を通しての会話ができなくなるからね。


「と、とりあえず1回スキルを試してみます!」


 小鳥さんはそう言って目を閉じた。

 別に閉じなくてもいいはずなんだけど……


 まあなんでもいっか。


「小鳥さん? まだですか?」


「あれ、聞こえませんでしたか?」


 え? もしかしてこれもハズレスキル?

 さすがにそんなことないよね……


「聞こえませんでした。どうしてなんだろう?」


 それからいろいろな方法を試した結果、発動しなかった原因が分かった。

 原因は小鳥さんだけしか念話スキルを持っていなかったからだった。


「まさか2人ともスキルを持ってないダメだったなんて……」


「琴音さんのスキルポイントを無駄に使わせてしまってごめんなさい!!」


 小鳥さん悪いことしてないのに、さっきから謝りすぎだよ。


「元はと言えば私の隠密スキルのせいだから小鳥さんのせいじゃありませんよ!」


 私が小鳥さんのスキルポイントを無駄に使わせてしまったの方が正しい気が……


「それなら良かったです!」


「それじゃあ改めてダンジョンの攻略を始めましょう!」


「はい! 足を引っばらないように頑張ります!!」


 私たちは手を繋いだままダンジョンの入口を通り、ダンジョン内に移動する。

 手を繋いで入口を通るのは隠密のせいであって、そうしないとパーティでダンジョンに入れないというわけではないよ。


 ダンジョン内に移動した私たちは手を繋いだまま探索を始めた。

 手さえ繋いでいれば気づかれることはないから安全だけど、私は少し恥ずかしい……

 小鳥さんは全く気にしてない様子だけどね。


「琴音さんに一つだけお願いがありまして……」


 小鳥さんからお願いって珍しいような気がする。

 ――って言ってもまだ会ってから1時間も経ってないけどね。


「私にできることならなんなりと!」


「えっーと、その、タメ口にしませんか? パーティを組んでもらった分際ですが……」


 タメ口かぁ……

 私の方が歳下なのにタメ口って変な感じがする……

 あと私がパーティを募集していたから組んでもらったのは私の方だ。


「あ、嫌なら全然このまんまでも……」


「そうしましょう……じゃなかった。そうしよう! よろしくね!」


 そう言うとことりさんが嬉しそうな顔をした。


「はい! よろしくおねが……よろしく! ことねちゃん!」


 私も小鳥さんも慣れるまで時間がかかりそうだ。

 そんなこと話してながら歩いていると3体のゴブリンが出てきた。


「琴音さん、ゴブリンがいるので気をつけてって、あれ……? 襲ってこない?」


 そういえばこれも普通じゃないんだった。


「ふっふっふ〜! これが隠密の効果だよ〜! すごいでしょ〜!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る